オリジナルという欺瞞

お客様から「オリジナルは作らないの?」と尋ねられることが
しばしばあります。

期待も込めてのご質問だと思いますので有難いのですが、
今のところ「Euphonica」レーベル商品を展開する予定はありません。

ところで巷では服が売れていないと言われていますね。
実際他人事ではなくシビアな状況だとは思います。
大企業ですら苦しいニュースしか出てきていません。

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要因は複合的です。
ファストファッションの普及による服のデフレ化
(やはりその中でもユニクロのコストパフォーマンスの影響は大きいです)、
不況や価値観の変化によりそもそもファッションの優先順序が下がった、
ショッピングモール全盛期に拡大しすぎて供給過多に陥った、などなど…

それらは敢えてここ書かずともメディアでさんざん言われていることですが、
個人的には大手セレクトショップのオリジナル商品も一因ではと考えています。

もちろんそれ自体が駄目だというのではありません。
元来は買付商材でカバーしきれない提案を補うために
企画され、それらは店の世界観を体現するものとして
独自の魅力を持っていました。
今でもそういうスタンスのハイレベルなオリジナル商材は
少ないながらも存在していますし、今後も続いていって欲しいと願っています。

ただ、今一般的にセレオリと呼ばれるセレクトショップオリジナル商品の多くは
アリモノに店名タグを縫い付けただけの代物や
他ブランドの偽作(いずれも昔からなかったわけではありませんが…)です。
けだし現在セレクトショップと呼ばれる業態の店舗の多くでは
その「オリジナル」が店頭の大半を占め、セレクトされた品などはほぼありません。
セレクト商品ですらリスクを極端に回避したチョイスで、
バイヤーの感覚が見えづらくなっています。
これはマス向け店舗であればあるほど顕著な傾向です。

そんな店頭で、服って面白いなと思えるでしょうか?

現在大手と云われるセレクトショップ群が
この20~30年で日本人の装いの水準を引き上げたことは疑いない事実です。
店主も若いころお世話になりました。

服に興味を持ち出した若い人にとって、
身近な存在の大手セレクトショップさんが
入口として最も相応しいことは今も変わっていません。
ショッピングセンター内のメーカー系ブランドも身近ではありますが、
スタッフの服好き度合を考えるとセレクトショップから入ったほうが
基礎固めとしていいと思います
(特に重衣料に関しては歴然とした差があります)。

それでもその入口たるセレクトショップが怪しくなってきているわけです。

単純に考えて自社ブランド商品を売れば仕入れ商品の倍の利益が出ます。
会社として利益を追求することは当然ですので、
そこに力を入れるのは仕方ないのかも知れません。
ただしそれもある水準をクリアするのが前提であったはずです。

マーケティング先行で短期的な利潤を追求していったことで
結果程度の低い品揃えになり(失礼を承知で書きます)、
長期的に見れば若い人が服に強く惹かれる機会を奪い
将来の顧客を失っていったのではないでしょうか。

結婚など生活の変化のなかで
必ず衣食住の「衣」の優先順序は下がります。
ましてや若いうちに心から服が面白いと思えなければ、なおのこと。
そうなればある程度の価格帯以上の服が売れなくなるのは当たり前です。

当店の規模で自社レーベル商品を作る手っ取り早い方法は
アリモノにタグやロゴワッペンなどをつけることです。
生産ロットを考えると、他に手段が思いつきません。
あとは今お取引のあるブランドさんに別注をお願いするくらいですかね。

正直別注は面白そうですが、
もしそうでなくオリジナル商材を作るとしたら、
糸から生地を作り、型紙を引き、ボタン等の副資材にいたるまで吟味を重ねて
世界のどこに出しても認められるものにすべきであり、
そうでなければ「オリジナル」とは名乗れません。

店主はゼロから創れるクリエイターではなく、
編集によって世界観を構築するDJ気質です。
そんな人間が気軽にタグだけつけたものをオリジナルですと
平気な顔で売ってしまっては
当店で扱っているブランドの真面目なつくり手さんたちに
顔向けできません。
そして同時に、当店をご支持いただいているお客様に対しても
背信行為であると考えています。


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