ニュー・シネマパラダイス

いつも店の話や商品の話では胸灼けしてしまうかも知れませんね。
今回は箸休め的にいきましょう。

先日英国の映画配給会社の代表の方が今の邦画のレベルの低さに苦言を呈し、それに邦画関係者が異論を唱えた、という一件がありました。

邦画関係者「邦画をクソというな!がんばってるんだぞ!」という意見がまさかの大炎上(togetter)

これは映画だけでなく服や雑誌、音楽や文化的なもの全般に通じることだなと思い当店twitterアカウントで色々私見を述べさせていただきましたが、本稿はその話ではありません。

映画について考えていたら無性に何か観たくなりまして、その勢いで店主が愛する5本の名作映画を挙げ、頼まれもしないのに読者の方にお勧めでもしてみようかという次第です。

店主はそれほど多くの映画を観ているわけではなく映画館にも滅多に足を運ばないという程度ですので、マニアとしてでなく素人の趣味レベルであることを予めご理解ください。

1.『太陽を盗んだ男』
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ジュリーが一番輝いていた時代に撮られた、奇跡の破天荒映画です。
ある無気力な中学教師が原爆を作って日本国家を脅してみたものの、別に成し遂げたい目的はなく…
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なんて筋書き云々を語る映画でなし、映画自体から溢れる強烈なエネルギーを堪能するという感覚的な楽しみ方が一番ですね。
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ジュリーがいちいち無駄に格好良すぎて笑えます。

2.『ワイルドバンチ』
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暴力の巨匠サム・ペキンパーの最高傑作として名高い西部劇です。
20世紀という時代に取り残された前時代的強盗団が悪事を重ねつつも頑なに生き方を曲げぬまま滅びに向かっていく様を描いた作品となっています。
“死のバレエ”とも称される終盤の凄まじい銃撃戦が有名ですが、
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派手なアクションシーンだけでなく些細な一コマ一コマが実に絵になる、まさに男の映画です。
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3.『おわらない物語 アビバの場合』
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怪作です。
可憐なイメージ画像に騙されてはなりません。
親になって子供に愛情を注ぐことが夢であった少女アビバが念願かなって妊娠するものの母親によって無理やり中絶させられ、手術の失敗によって子宮を失ったことを知らぬまま家出し、ただ愛する対象を求め旅に出る…
という筋書きを8部構成で描いた作品ですが、このすべての部でアビバのみを人種、性別、年齢も異なる8人の役者が演じています。
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ジャケット画像の女の子が、別のシーンではこの太った黒人のおばさんです。
年をとった設定等でもなく、周りの登場人物はアビバを変化していないものとして扱います。
これは「その人の本質は決して変わらない」というテーマに基づく仕掛けです。
本編途中でアビバが訪れる施設の描写など随所で監督の淀んだ人間性が冷徹な観察眼を通してほとばしり、観ていて何ともいえない気分になります。
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このシーン、最高でした。

4.『ドッグヴィル』
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閉鎖的な辺境の村ドッグヴィルに辿り着いた主人公と村の住民たちとの心温まる交流を通して、啓蒙の独善性、観念的な道徳の無力さ、他者を哀れみ赦すことの傲慢さを丹念に綴った作品です。
床に白い枠線と場所の説明の文字を記し、記号的に建物の一部を配しただけの演劇舞台に近い実験的なセットで全編演じられています。
これにより鑑賞者は作品世界と明確に線引きされ、全体を俯瞰できる傍観者としての立場で進行を追っていくことになるわけです。
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徹底して人間を弱く浅ましく醜いものとして扱いつつも、戦慄するほど美しい。
ネタバレになるので詳細は伏せますが、人形のくだりは何度観ても痺れますね。
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5.『伝説巨神イデオン 接触篇/ 発動篇』
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二本立てですが、一本として扱います。
ロボットアニメの劇場版と侮るなかれ。
ある星の遺跡の発掘現場で偶然遭遇した異星人同士がちょっとした好奇心と誤解と自己都合をきっかけに争いはじめ、次第に私怨と私怨、エゴとエゴのぶつかりあいとしてもはや後戻りできないところまで進んでいくというハードな代物です。
本来の企画は子供向けテレビアニメでしたが、
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地味な上に夢も希望もない硬質な内容がお茶の間に受け入れられず、
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さらに肝心の登場メカのデザインも不評でグッズ(放送当時は玩具以外に塗り絵や文房具などが中心だったようです)が売れなかったことでスポンサーの意向で番組が打ち切られ、
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スタッフの執念と『ガンダム』の利益をつぎ込み、語りきれなかった部分を映画として補完しました。
『接触篇』は『発動篇』に繋げるためにまとめられたテレビ本編のダイジェストのため展開が駆け足すぎて独立した映画作品としては崩壊しています(『発動篇』もそうではないとは言えません…予備知識なく観るとちんぷんかんぷんです)。
『発動篇』が劇場版の本編と呼ぶべき作品となっており、争いの中で意思を持った無限エネルギー体”イデ”が発動し、文字通りすべての愚行を終わらせて次の始まりへと導くまでを描かれるのですが、破滅に精一杯抗い、全力で生きようとするそれぞれの登場人物の悔しみに溢れた足掻きが胸を打ちます。
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そしてすぎやまこういち氏の手掛ける音楽の圧倒的素晴らしさも特筆すべき点です。

語りどころが多すぎてこのコーナーでは収まり切れません。
すべての政治家や軍人、テロリストがこの作品を観れば、世界はもう少し平和になるかも知れないのに…
そんなことを考えてしまうような、反戦モノでないのに厭戦気分になれる映画です。
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いずれも甲乙つけ難い作品ばかりですが、強いてマイベストを挙げれば『イデオン』ですかね。

もしどれかご興味いただけたなら、是非ともご覧ください。

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