在原業平などと並び六歌仙としても知られる小野小町は、美女の代名詞的存在として語り継がれ、且つその作品も極めて高い評価を受けながら、自身の伝記的事実が今ひとつはっきりしない人物のようです。
作者不詳の書『玉造小町子壮衰書』で彼女をモデルにした(とされる)女性が零落して無残な姿に老いさらばえた様子が描かれているのですが、空海の著作を纏めた『御作目録』の中にも『玉造小町形衰記一巻』が存在し、だとすると小野小町がその美貌と才能で宮中のスターだったと伝えられる時期よりも前の時代に書かれたことになってしまいます。
…なんて知ったようなことを書いてしまいました。
以上は『徒然草』(第173段)からの受け売りです。
『玉造』は今も岩波文庫から出ているものの、読んだことはありません。
さて。
この小野小町が転じて、我が国では美しい女性を小町と称します。
私なんぞが今さら書かずとも、それは皆さまご存知でしょう。
当店初登場のcomm. arch.(コムアーチ)は職人との連携(Communication)から生まれた構造物(Architecture)の略称をブランド名としているのですが、同時に日本発のニットブランドとしての矜持から、小町→コマチ→コムアーチという意味も秘めています。
名前ひとつとってもそこまでの意気が込められるニットウェア、これがどうして悪いはずがありましょうか。
ブランドディレクションから営業まで独りでこなす高橋さんはひとことで言えば心優しきニット狂の紳士です。
英国セントマーチンズにてニットを学び首席で卒業、パリを拠点として名立たるメゾンのニットを手掛けるなどキャリアを重ね、帰国後日本のハイレベルな工場の持つ技術に着目し、培ったセンスとスキルを発揮して自らのブランドを立ち上げました。
華麗な経歴ながらそれを人にまったく感じさせないほど実に穏やかな好青年である彼の創り出すニットは、どれもその人間性の滲み出た温かな雰囲気が漂います。
例によって延々と書き散らかした前置きになってしまいました。
まずは名刺代わりとしてその代表作”Saddle B.B.”をご覧ください。
デザインとしては特に変わったところはありません。
ただただまっとうに普通な服、そのお手本のような仕上がりです。
素材はウール100%と思いきやレーヨンとウール、それにアンゴラ、カシミアを絶妙にブレンドしており、柔らかくふわりとしたきめ細かな触感が嬉しくなります。
「小町」由来ですがメンズサイズでご用意しました。
いつまでも飽きず長くそっと寄り添ってくれるであろうこのニット、是非一度その実力を直接その肌でお確かめください。
オンラインストアはこちらです→ ブリットフォレスト/ ネイビージャック