雨に濡れて歩いてる ここはアジア ~ moncao/ wool cashmere band collar shirt jacket

梅雨時によく出る言葉であるゆえか、同名のカフェの影響なのか、モンスーンはアジアの温暖湿潤な地域特有の現象といった印象を持たれがちですが、実際のところもっと広範囲にわたり発生します。
和訳の季節風と聞けば、あまり熱帯感は出ないのではないでしょうか。

その語源はアラビア語で「季節」を意味するموسم(mawsim)と伝えられています。

かつてアラビア海を行き来した船乗りたちは、一年が大まかに二種類の時期、すなわち海上に南西からの風が吹く季節と北西からの季節が吹く季節に分けられると理解し、航海に役立てていました。

この現象は、比熱が小さい(暖まりやすく冷めやすい)大陸と、比熱が大きい(暖まりにくく冷えにくい)海洋、この特性の違いに起因します。
夏季には比熱の小さい大陸側の空気の方が暖かくなって上昇気流を生じるため、その空気を補うために海洋から大陸へ風が吹きますが、逆に陸の温度が下がり相対的に海洋の方が暖かくなる冬季には、大陸から海洋へ風が吹きます。
大雑把ながら、これがモンスーンの原理です。

モンスーン気候のグローバル分布を示したKhromovの論文(1957)では、モンスーン域の定義としてふたつの条件が提示されています。

1) 1月と7月の地表面卓越風向の差が120度以上あること
2) 1月と7月の地表面卓越風の出現頻度が40%を越えていること

爾来これが長らく定説とされていましたが、気象衛星の発達とともに研究もより深化し、近年では概ね下記の3通りの解釈がなされているようです。

1) 海陸間の熱的コントラストに起因する、陸域の雨季と乾季をもたらすラージスケールの大気循環系、あるいは夏季と冬季で風向が反転するラージスケールの大気循環系
2)海陸間の熱的コントラストや海面水温の東西非一様性に起因する、雨季と乾季をもたらすラージスケールの大気循環系、あるいは夏季と冬季で風向が反転するラージスケールの大気循環系
3)低緯度域あるいは中高緯度域において、海陸間の熱的コントラスト等に起因する、夏季と冬季で規則的に風向が変化するラージスケールの大気循環系

実は日本に限らずこのモンスーンという言葉自体の定義ははっきりとしておらず、インドでは「モンスーンというと小学生でも知っているが、気象台ではこれについて何も知らない」とまで云われているとか。

さて。

話は一転し、当店で初のお取り扱いとなる気鋭の新星をご紹介致します。

moncao(monção)。
モンサオと読んでください
ポルトガル語でモンスーンを意味します。

その名の通り、風に吹かれるような軽やかな感覚を季節ごとに愉しませてくれる服を作る、ポルトガル発のブランドです。

お会いしたことはありませんが、デザイナーの二人はかつてミラノの某有名メゾンで研鑽を積んだ方々だとか。
そんなキャリアもあってか、どちらかといえば素朴な温かみのある服の印象が強い同国にしては比較的珍しい、落ち着いた上質な品を提案してくれます。

今回披露致しますのは、こちら。

一見するに、ごくごくシンプルなバンドカラーシャツ。

しかし生地に触れてみると、そのたっぷりとした瑞々しい肉感、潤いのあるなめらかな肌触りに驚かされます。

素材はカシミア混のウール。
シャツというよりむしろジャケットのような、豊かな厚みのある、そしてとても柔らかな生地です。

この直線的な裾もまた、羽織ものとして活用できそうな雰囲気に満ちています。

形状やボタンなどのディテールは完全にシャツながら、なかなか定義の難しい、そんなところもまたモンスーンの如しではありませんか。

ともあれ、身に纏っていただければその圧倒的な実力に、ジャンルだとかカテゴリーだとかの些末な疑念など吹き飛ぶはず。

さあ、生活の中に、新しい風を吹かせましょう。

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参考文献
村上勝人『アジアモンスーン-その気象と人象風景-』日本気象学会『天気』39.7(1992)
川村隆一『モンスーン循環の形成とその変動プロセス-大気海洋相互作用と大気陸面相互作用から謎を解く-』日本気象学会『天気』54.3(2007)


魔神転生 ~ THE CIRCA BRAND/ S103B & S201A

すべてはOlde Homesteaderの萌芽から始まりました。

やがてそれはOLDE THINGSという幹へと育ち、Olde H&Daughterへ枝分かれしていくことに。

この一本の力強い大樹から、また野太い何かが生まれたようです。

それが、THE CIRCA BRAND(ザ サーカ ブランド)。
今まで常に前提として肌着を基軸としていたOLDE THINGSのラインナップのなかで初となる、非肌着ブランドです。

とはいえ、手掛けるのは変わらず”下着の魔人”の異名を持つ福原夫妻、その怨念とも呼ぶべき服作りへの姿勢はしっかりと、むしろ一層色濃く反映されています。

挨拶に代えて入荷してきた2型、ともにご覧いただくことにしましょう。

まずは男性用ブラウス、S103B(THE CIRCA BRANDの服にはすべてこのような品番が授けられています)。

2020年に出たばかりの新品にして、幾年月を重ねたヴィンテージさながらの威厳を放射していますが、その迫力の一因が生地です。

経糸にウール混のコットン、緯糸にレーヨンを配し織り上げたサテンを裏面使いにしました。

それにより、表にはざらっとした質感の表情豊かなコットン/ウールの面が、

裏にはしっとりとした肌触りの艶めいたレーヨン面が当たります。

素材ごとの糸の染まり方の違いもあって生まれたこの奥行きに富んだ色調、風合いは、着用と洗濯を繰り返すことでさらに変化し、表面、裏面それぞれ固有の特色が際立っていきます。

当然魅力は生地のみに非ず、デザインもユニークです。

肩幅、身幅をたっぷりととり、裾を直線的に切ることで、胴部分はスクエアな構造となっています。

そして脇にガセットを当てがって(ここがOlde Homesteaderっぽいですね)

すとんと落ちた肩から

ふんわりとした袖に繋がります。

この曲線の美しいこと!

袖口のボタンを外したときの拡がりには驚かされます。

このボリュームを袖口で絞ることで、先のまろやかな曲線が生まれるわけです。

襟裏のタグはひっそり控えめに。

一方、身頃の裏にはずいぶんと立派な大物が隠れていました。

先にも少し触れましたが、タグに記載されている通り、なんとこのブラウスは洗濯機で洗えます。
ほんのわずかな縮みは出ますが(目安として着丈、身幅で1~1.5cm程度)、洗いによる変化を楽しめるのは大きな悦びです。

ご購入時には裾にもフラッシャーが縫い留められていますが、こちらは着用前に外してください。

まったく、どこまでも加減を知らぬ服です。

無論、パンツも然り。


往時のアメリカ製トラウザーズを基に再構築したS201Aもまた、THE CIRCA BRANDの名を冠すに値すべき存在であることを声高に主張します。

こちらは経糸にコットン、緯糸にリネンを用いて織りあげたツイルを用いて、ブラウスと同じく裏面使いで仕立てられました。

リネンの特徴である強度、光沢が表面で活きるだけでなく、肌触りのやわらかなコットンが裏面でいい仕事をしてくれます。

両サイドの縫い目は深くつままれていて、ポケットから裾に至るまで、側章のよう。

ベルトループがない代わりに、エロティックな貝のサスペンダーボタンが用意され、

そして尾錠も設けられました。

現在はほぼ絶滅した、二本針のシンチバックルです。
久しぶりに見ましたよ。

針を生地に貫通させると危険ですので、針先を生地に引っ掛ける程度にしてください。
それでもじゅうぶんにストッパーとしての役割を果たします。

なお、このパンツも洗濯可能ですが、最初の水通しでかなり激しく縮みます。

参考のため、当店にて一度洗ってみました。

ウェストに約2cm、ワタリ幅、裾幅に約1cm、そして股下に約7cmの縮みが発生しています。
これは家庭用洗濯機で一度洗ったものの計測結果ですから、そこから1~2回はさらに縮みが出る可能性があることはご了承ください。

しかし、それだけ縮んだだけあって、がらりと風貌が変わりますね。

未洗いの新品と比べると、生地の迫力が段違いです。

これから着こみ洗いこむことで、どのような成長を遂げるのか、楽しみでなりません。

なかなかな長編となってしまいましたが、2型とも語りどころが多すぎるゆえ。
THE CIRCA BRANDの底知れぬ恐ろしさ、少しでも伝わりましたら幸いです。

オンラインストアはこちらです→ S103B/ S201A


BEST CRUSADERS ~ EEL Products/ ビークルベスト

店頭でもオンラインでもじわじわと注目度上昇中のEEL Products・ビーグルジャケット

その名から兄弟分かと思わせて、否まったく別物の、しかし同じくらい完成度の高いベストが登場しました。

ではご覧ください、ビークルベスト。

紛らわしいことに、ビーグルジャケットのBeagle(ビーグル犬)でなく、Vehicle(車両、乗り物)です。

さてそんなビークルベスト、軍もの、アウトドアウェア、ハンティングウェア、どれにも当てはまるようで当てはまらない、独自の魅力を放っています。

撥水性の高い生地にキルティングされた中綿はダウンでなく化繊です。
東レのSunstate(サンステート)Ⅱを採用しています。

サンステートⅡは薄さ、軽さからは想像もできないほどの保温性(同じ厚さなら羽毛の2倍だとか)を備え、なおかつ虫害や黴に強く、そして洗濯も可能で形状回復力にも優れているという、きわめて高性能の素材です。
一般的な中綿素材にくらべ繊維が細く、繊維缶の空気の層を細かく区分、暖かさを閉じ込めます。

裏地には目の細かいポリエステルフリースが張られています。

構造上どうしても冷たい風を通してしまうフリースも、表地と中綿と合わされば欠点が補われ、その大いなる強みである肌触りのよさと暖かさを存分に発揮してくれます。

この薄さと保温性能は、ベストに圧倒的な汎用性をもたらしました。

Vehicleよろしく積載能力は抜かりなく、両胸、

両脇に

パッチポケットが設けられ、秋にはちょっとしたライトアウターとして活躍。

冬はこの上にコートを羽織れば、保温性がさらに高まります。

そして春は春で意外と肌寒い日が多いもの。
スプリングコートの下にこっそり装着すれば、見た目は軽やかなまま、快適に過ごせます。

もう10月、秋はこれから冬に向けどんどん深まっていきます。
来たる季節に臨み、是非お手元へ。

オンラインストアはこちらです→ ネイビー/ ブラック


今はここで そう Bye For Now ~ smoothday

今年の春夏シーズン、当店初登場であるにも拘わらず、その洗練されたデザインと恍惚の着心地により、瞬く間に多くのお客さまよりご支持を得たsmoothday。

待望の秋モデルが2型入荷してまいりました。

まずはクルーネック長袖T。

さらりとした肌触りに上品な光沢を備えたコットンスムースで仕立てられています。

弾力性に富み、型崩れしにくいため、着用を繰り返しても凛とした表情が長く維持するのがうれしいですね。

袖と裾はリブのない仕様で、すとんとしたシルエットを楽しめます。

もう一型はハイネック。

先ほどのクルーネックに比べやや黄味を帯び、風合いのあたたかなウールの天竺が採用されました。

Super140’sの極細繊維を撚り合わせた糸で編み立てられているこの薄手の生地の肌触りは、とろけるよう。

ウールのハイネックでありながら、まったくチクチクしないどころか、心地好さしか感じられません。
ですので、単品としてのみならず、インナーとしても最適です。

クルーネックのものより若干長い袖の先は、リブ仕様となっています。

相変わらずどちらも素晴らしい。
いつまでも触れていたく、着ていたくなります。

今後に向けて、ますます期待が高まります。

…が。

まことに遺憾ながら、smoothday、今季を以てブランド自体が一旦休止致します。
再開の目途は現在のところ立っていません。

さらに、2020AWのほかの商品につきましても、少なくとも当店のオーダー分に関してはすべてドロップ、すなわち生産中止となってしまいました。

つまり、今回が当店に於けるsmootday商品の(暫定的な)最終入荷です。

きわめて痛恨の事態ではございますが、ゆえに図らずも稀少な品となりましたこのTシャツ、是非今のうちにお買い求めくださいませ。

オンラインストアはこちらです→
Men’s 60/-シルキースムースCN長袖T
Super 140’s 双糸ウール天竺ハイネック長袖T


秋、多摩川にて ~ KIMURA/ shaggy cardigan

その大いなる狂気は次から次へと熱烈な支持者を呼び、当店内で常に圧倒的存在感を放ち続けるKIMURA。

ところが、シャツしかラインナップにないため、必然の帰結として秋冬に提案できるものが少ないという弱点がありました。

しかしそれももう過ぎた話となります。
KIMURAは、ついに秋冬を克服しました。

同ブランドの評価を一躍押し上げた不朽の名作シャツカーディガンが、あたたかな素材を纏って登場です。

丸首と

Vネック、

どちらもご用意しています。

使われている生地は、起毛加工を施したコットンツイル。



やわらかく、ふんわりとした質感で、触れた際に仄暖かな空気の層を感じさせます。

これもシャツ地ですから厚みはそれほどありませんので、使い勝手は抜群。
なおかつ基本モデルより身幅、アームホール、着丈を若干大きめに設定し、重ね着しやすくなっています。

いつものようにクルーネックのTシャツと合わせるだけでなく、

ハイネックもよし、

デザイナーの木村さんも、ハイゲージニットの上などに羽織ることを想定したそうです。

そもそもの完成度を考えれば当たり前ながら、どこをどう見ても名品の匂いしかしません。
おそらくサイズ欠け、色欠け、完売となるのもそう遠い先の話ではないでしょう。

気になる方は、どうぞお早めに。

オンラインストアはこちらです→
shaggy cardigan crew neck チャコール/ グレー
shaggy cardigan narrowing v20 ベージュ/ グレー


エルフのクリスタル ~ ASEEDONCLOUD/ Elves jacket

今季のASEEDONCLOUDのテーマ”最眩組(moguragumi)”は、1人の少女と4人の老翁たちの物語です。

詳しくは以前のブログをご参照いただくとして、一部を下記に抜粋しましょう。

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ある日のことです、亡くなった仲間を埋葬するため坑夫たちがお墓を掘っていたその時を同じくして、町にひとりの女の子が誕生しました。
彼ら-4人の坑夫たち-はその子を仲間の生まれ変わりとして大切に育て、自分たちの仕事場に日々連れ出すようになります。

月日が流れ女の子は成長。
いつものように老坑夫たちとともに採掘作業中に勤しんでいると、たまたま古いお墓に当たり、ボロボロになった遺品を掘り返してしまいます。

女の子はそれを見て大変悲しみましたが、その様子を見た坑夫たちが遺品を綺麗に戻すと、とても喜び彼らを褒め讃えました。

それからというもの、彼らは地下で遺品を元に戻す作業に没頭するようになります。
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この少女-その名をElves(アルヴ)といいます-は、遺品を扱うにあたり、彼女なりの正装としてワンピースの上にジャケットを羽織っているようです。

それがこのElves Jacket。

クラシカルというよりアンティークの芳香すら漂う古式ゆかしいデザインですが、それもそのはず、産業革命以前に多くのイギリス人が着ていたジャケットを下敷きにしたとのこと。
おそらくはヴィクトリア朝時代の労働者階級の服かと思われます。

そこにASEEDONCLOUDならではのアレンジが施され、柔和な、とてもやさしいジャケットとなりました。

まずご覧いただきたいのが英国MOON社製の生地。

グレーがかった”モス”にはエメラルドグリーン、ブラウン、そしてベージュ、

“ブラウン”にはブラウン、レッドブラウン、カーキ、ネイビーブルーが混ぜ合わさり、奥行きのある豊かな表情が生まれています。

前立ては4つボタン仕様で詰まった胸元が特徴的です。
さらに上部、ラペル裏のボタンを留め、スタンドカラーとして着ることも可能となっています。

袖はまさかの立体裁断。

きわめて幅が狭い胸ポケットが、想像力を喚起します。

裏地はコットン。

円みを帯びたパッチ型の内ポケットがなんとも愛らしいですね。

なお、袖裏にはすべりがよく吸湿性にすぐれたキュプラが用いられています。

全体としてボキシーなシルエットで、アウグスト・ザンダーの写真にうつる市井の人々が着ているような佇まいです。
肩肘の張らない秋冬の上着として、大活躍してくれることは間違いないでしょう。

なお、アルヴの名は北欧神話から現代のライトファンタジーまで愛され続けている妖精の一種エルフ(Elf, Elves)に由来しています。

発音としては古ノルド語を取り入れているのでしょうか。

国や時代によって概念が異なるためエルフそのものを定義づけることは難しいのですが、概ね人間と似た、そして特別な力のある存在として扱われます。
この物語のアルヴにも、どこかそんなイメージが投影されているようです。

今後ご紹介するであろう老翁および彼らの服についても、どうぞお楽しみに。

オンラインストアはこちらです→ モス/ ブラウン


クレイジー・クライマー ~ ZDA/ Climber 2560LS

秋の長雨とはほんとうによく云ったもので、2週間ほど靉靆とした空模様が続いています。

次から次へと秋冬の商品が届いているというのに、こんなに薄暗い日ばかりだと環境が整わず、オンラインストアにしてもブログにしても撮影ができやしません。

明日からはようやくお天道様が戻ってきてくれるそうですが、本日も一瞬の晴れ間の恩恵を受け、ここにようやくZDAの新作を皆様に披露することが叶いました。

ランニングシューズの”Marathon”、室内球技用シューズの”Trainer”に続くさらなる刺客、軽登山用ラインの”Climber”。

ただでさえ謎に満ちたZDAのなかで、このClimberは特に不明点が多い…というより、不明点しかないようなシリーズです。

この靴ひとつにしたって、過去の製品を調べるうえで頼りになるЮрай Шушка(Yuray Shushka)氏の資料を探してみても、該当しそうなものは見当たらず、もはやZDAネームで製造されたモデルかどうかも疑わしい。

ZDAは実際に当時の工場に残っていた型を使い現地で再生産してはいますが、ついでに他のブランドで作っていたであろうモデルまでしれっと自社製品として復刻してしまうという、信じられないほど緩いスタンスですので…

それはさておき、靴単体として見れば、たしかな魅力に満ちています。

上記の理由でモデルの背景等はまったく判りませんが、デザインから察するにアプローチシューズではないかと思われます。

アプローチシューズ、登山を好む方以外にはあまり馴染みのない呼称かも知れません。
ロッククライミングを実行するにあたり岩壁まで向かう(=アプローチする)道中に履く靴です。

あくまで目的は岩壁への到達ゆえ、そこまで重厚な登山靴は必要とせず、さりとてアスファルトを前提としたスニーカーで歩けるほど生ぬるい道でなし。
そうしたシチュエーションには、ほどよく軽快で、しかしゴツゴツした山道に負けない頑強な靴が最適です。

たとえばこの靴を見れば、スウェードとスムースレザーを重ね耐久性を高めたアッパー、

足のブレを防ぐためつま先までフィット感を調節できる外羽構造、

硬くざらついた岩との摩擦によるアッパーの損傷を防ぐ補強のランドラバー。

まさに岩稜帯での活動を想定した仕様です。

一方で、ソールはそこまでスパルタン路線ではありません。
軽く、そしてクッション性に優れたミッドソールに、滑り止めもそこそこに、しなやかに屈曲するアウトソールが採用されています。

アプローチシューズによっては、簡単な登攀にも対応できるよう、アウトソールの爪先あたりに粘り気があってフラットな部分(クライミングゾーン)が設けられていますが、この靴にはありませんので、なるべく履いたまま岩に登らないでください。

履き心地は見た目からは想像できないほど良好で、ゆえにハードな環境での使用にはあまり対応できないと思われます。
通常の歩行に適した柔らかいソールは重い荷物を支えきれないだけでなく、爪先だけで踏ん張ることができず、転倒や滑落の原因となりかねないため、山の悪路には適しませんので。

また、特に防水機能なども付与されていないようです。

ですので、アウトドアでの使用は、ちょっとしたハイキングやバーベキュー程度にとどめた方がよいでしょう。

一方で、市街地でと考えると、前述の通り履き心地に優れ、歩きやすいというのは大きなメリットです。
ぱっと見インパクトの強い配色も、いざ装いに合わせてみれば驚くほどかろやかに溶け込みます。

この絶妙な曖昧さ、まったくいつだってZDAは期待を裏切りません。

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ゲーミング・マギ ~ EEL Products/ ビーグルジャケット

ビーグル犬は、その鋭い嗅覚や無尽蔵の体力、鳴き声によって仲間と連携をとる性質などから、古来より兎狩りなどで起用されてきました。

当地ではかなり旧い時代からお馴染みだったのがその名からも窺え、「開いた喉」を指す古フランス語”begueule”に由来するとも、「小さい」を意味する古英語”begele”やゲール語”beag”に由来するとも伝えられています。

さて、そんなビーグル犬、そこからハンティングに聯想してデザインされたマウンテンジャケットが、EEL Produtsより到着しました。

コットン60%、ナイロン40%、いわゆるロクヨンクロスと呼ばれる軽撥水生地で仕立てられたこのジャケットには、日常から狩り、さらに幅広いシチュエーションに至るまで対応できるよう、豊富なギミックが仕掛けられています。

まずハンティングウェアらしい部分といえば、背面のゲームポケット。

元来は獲物(”game”)を入れるために設けられたディテールですが、このジャケットではそれほど大ぶりにには設計しておらず、おろそらくは仕留めた兎を収めることはできません。
とはいってもそれなりのスペースはありますので、工夫次第でいろいろな用途に活きるのではないでしょうか。

フードは脱着式です。

この「スナップによる脱着」は、フードのみならず意外なところでも取り入れられています。

裏をチラリ。

ここから視線を下げていきましょう。

腰あたりでポリエステルフリースのブランケット出現。

この上部を留めているスナップを全部外せば、当然ブランケットは下部を支点とし、めくれますよね。

すると…

ご覧の通り、太腿を暖めるような形に。

たとえば冬季の日産スタジアムでマリノスの試合を観戦するときなど、椅子や接地面からの冷えを軽減してくれます。
これは有難い。

なお、下部のスナップもすべて外しブランケット部分を独立させて、マフラーとして用いることも可能です。

このように、敢えていわゆる本格派を再現するのではなく、絶妙な匙加減のユーモアをひとふりして、まったく独自の服を作る。
それがEEL Productsならではの魔法であり、替えが利かないところです。

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いつまでも あの人にはいてほしいのだけど 通うかしら 私のこのまごころ ~ Olde Homesteader/ PLAIN RIB HEAVY WEIGHT SOCKS

裸足の季節は終わりを迎え、靴下が必要な時候となってきました。

せっかくですから、まっさらな新しい靴下で心地好く秋に臨んでみては如何でしょうか。

折しもOlde Homesteaderから、素敵な新作が届いたところです。

同ブランドが初めて靴下をリリースしたときからずっと定番として展開し続けているヘビーウェイトソックスの糸量をさらに増やした、やや肉厚のリブソックス。

黒と生成が混ぜ合わされた奥行きのある風合いからすでに、その穿き心地の好さが窺い知れます。

ほどよい薄さとあっさりさっぱりとしたフィット感が特徴的な前者とは異なり、空気をたっぷり含んだような柔らかさが身上で、クッション性に富み、また保温性にも優れています。

やや遊びをもたせた爪先と平坦なリンキングは変わらず。
爪の付け根などにまったくストレスを与えません。

足首あたりには幅広いリブ、トップ部分には細かいリブを用いることで、ふんわりとした包み込みとずり落ちにくさを両立させました。

なおこのリブソックス、実は以前にも色違いが入荷してまして、おそらく納品が重なった時期だったため、ご紹介を完全に失念してしまっていました。

エクリュ一色のものと

温かみのあるラスティックブラウン、

ともに若干数ですがまだ在庫がございます(2020/9/17時点)。

まろやか極まる着用感は、どれも同じです。

肌着のみならず靴下もまた圧倒的リピート率を誇る、その事実がすべてを物語ります。
すでにご愛用されている皆様に今回もお薦めなのは無論改めて言うまでもないこと、未体験の方はこの機会に是非一度体感してみてください。

オンラインストアはこちらです→ ブラック×エクリュ/ エクリュ/ ラスティックブラウン


素敵な歩みより 右により 左より ~ Handwerker ASEEDONCLOUD/ HW slacks

だんだんと、昼の暑さもやわらいできましたね。
今年は7月、8月と月ごとに気候がスパスパッと切り替わってきましたが、今月もその調子のようです。

陽もだんだん低くなってきてますし、秋は着実に近づいています。

秋冬に向けたパンツも順調に入荷しており、Handwerkerからは新作が登場しました。

定番のワークパンツは豪快な太さが特徴的でしたが、今回はそこまで極端な方向へは向かわず、中庸な具合に収まりました。
太腿にややゆとりをもたせながらも全体としてボリュームを抑えた、やや細身のパンツです。

通常の形状にくらべ尾錠の位置が高く設定され、ヒップラインはとてもすっきりしています。

とくに横から見たお尻から脚への流れるような曲線は、見事です。

機能的なヒップポケットが、この美しい一本がワークパンツであることを思い出させてくれます。

素材はHW wood worker’s jacketと同じく、コーデュラナイロン混のカラリとした生地と

ふっくらとしたコーデュロイの2種をご用意しました。

どちらもワークパンツという枠をあまり意識せずに、さまざまな装いを愉しめるはずですよ。

オンラインストアはこちらです→ カーキ/ グレーコーデュロイ