ええとまず本文と全然関係のない話をしますと、きょうは2020年2月2日にして令和2年2月2日なんですね。
どうでもいいんですが、なんだか童心をくすぐられます。
さて。
ハバーサックというブランドは、どうしてもその濃厚且つ重厚な世界観に圧倒されますし、旧き良き時代の手法をふまえた服作りを行うクラシカルなブランドという印象が先行します。
そしてそれはあながち間違いとは言えないのですが、実は一面に過ぎません。
最新の技術を貪欲に取り入れ、あくまで現代の生活に適したリアリティのある服を生み出す、これもまたハバーサックの真骨頂です。
このコートには、そんなハバーサックのあまり語られぬ、しかし決して見過ごすことのできない魅力が、これでもかとばかりに詰め込まれました。
インヴァネスコートを彷彿させるケープのような意匠が、過ぎ去りし時代の匂いを感じさせますが、
実は最新アウトドアウェアに匹敵するテクノロジーを駆使して仕立てられています。
まずこの生地、帝人フロンティア社のポリエステル繊維ソロテックスを用いて織られた、その名もミノテックス。
我が国はじめ稲作の盛んな地域で古代から近世まで多く使われていた伝統的雨具である蓑、これは雨水がかかった場合、繊維の方向に沿って水が流れていき、内部には滲みこまないという原理を利用しています。
このミノテックスはそんな蓑の理論を応用、表面に肉眼ではほぼわからないほどの極微細な溝を設けることで、ポリウレタンコーティングを施さずして内部への水の侵入を防ぐ機能を備えています。
コーティングを施さない、このメリットは甚大です。
まず、ポリウレタンはどうしても経年によって劣化します。
高名なアウトドアブランドの本格レインウェアやバックパックですら、コーティングの剥離とは無縁でいられません(なお、先日ご紹介したBRAASIのバッグの裏地のコーティングは表地側に施されており表面に出ないため、劣化の影響を受けにくくなっています)。
つまりはこのミノテックス、撥水機能が劣化しづらいということです。
また、生地自体も薄く、柔らかく、軽い状態を維持できます。
さらにソロテックスは自然な伸縮性をも備えているのですが、膜を貼りませんからこの機能も損なわれません。
この生地の裁断はレーザーによって行われます。
レーザーの熱により裁断面の繊維が溶着、ほつれが発生しませんので、この特性を活かしさらに実験的な構造も可能となりました。
まず、本体や袖の接合は縫製でなくローラシートによる圧着で行われています。
生地が重ならず、接合面がすっきりするだけでなく、縫い目からの浸水も防ぎます。
また、背面のベンチレーションも鳩目などは用いずレーザーにて開けられており、
着用時はここを通って内部の湿気が肩のの下から排出されます。
このケープ状のフラップは袖と一続きになっている、独特の構造です。
説明をしようと裏返してみましたが、複雑すぎてわけがわかりませんでした。
見れば見るほど、その技術力の高さ、そしてそれを存分に活用できるアイディアの豊かさに唸らされます。
そんな理屈は抜きにしても、手に取って、袖を通してみれば、その信じられないほどの軽さ、心地好さ、美しさにため息が漏れることでしょう。
スプリングコートとしては決して安価な部類には入りませんが、それ以上の価値のある逸品中の逸品です。
来たる春に臨み、どうぞ一度店頭にてお試しください。
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