アレクラスト大陸の南に ~ CURLY/ CRUST SHORT BLOUSON

昼はまだ夏の名残というにもずいぶんと暑い日が多いものの、朝晩はだいぶ涼しくなってきました。

コートはまだ気分ではない方も、そろそろ秋の羽織ものが必要になってくるころでしょう。
なにせもう10月、衣替えですよ。

まずは今月から12月半ばくらいまで、冬の本格的な訪れまで特に活躍するであろう上着がCURLYから届いています。

CRUST SHORT BLOUSONと名付けられたこのブルゾン、その名の通り昨年入荷したCRUST EZ TROUSERSと似た質感を備えたメルトン調の起毛ポリエステルニットで仕立てられています。

軽く、柔らかく、伸縮性と耐久性に優れ、しかも毛玉になりにくい素材です。
家庭にて洗濯可能なのもうれしいところですね、

この風合いを活かすのがふわっとしたボリューミーなシルエット。

袖はゆったりしたラグランスリーブで、脇にもマチが設けられ、運動性を一層高め、また中にある程度着こんでももたつきにくくしています。

両脇にはアジャスタがついており、裾の広がりを調整することが可能です。

袖口も同様、

スナップで絞ればまた印象が変わりますね。

襟裏や背裏の一部などにはウールの生地が張られ、保温性を高めるのみならず、柔らかい素材ゆえの型崩れを防いでいます。

まったく、控えめながらよくできたブルゾンです。

店頭でもだんだんと注目度が上がってきています。

秋本番が来る前に是非ご検討ください。

オンラインストアはこちらです→ オリーブ/ ベージュ


かもめの水兵さん かけあし水兵さん 白い帽子 白いシャツ 白い服 ~ Portuguese Navy Trainer

このただならぬ佇まい、まさにビザールスニーカーと呼ぶに相応しい一足です。

ポルトガル海軍で使用されていたらしきこの靴については、情報があまりにも少ないため、だいぶ憶測を交えたレビューとなります。

生産時期は2010~2011年のようですね。

アッパーの素材はおそらく牛革、コシはありますが柔らかく、フィット感は悪くありません。

この部分は靴紐を穴に通して編み上げることで靴の両脇を締め、運動時に足が左右にブレるのを軽減する構造となっています。

シンプルなデザインにして異様な雰囲気を生み出している大きな要因である、爪先部分の斜めに配置された通気孔。
今までいろいろなスニーカーを見てきましたが、初めて見る意匠です。

タンは意外なほどふかふか。
おかげで甲が快適です。

ライニングには革や合皮でなく、通気性、速乾性に優れた化繊系のファブリックを用いています。

目の粗いオパンケ縫いが施されているガムソール。

この素材とソールパターンから、おそらくは室内(体育館的な)トレーニングでの使用を想定していると思われます。
もちろん屋外でも履けますので、ご安心を。

肝心の履き心地はといえば、かなり硬い接地感です。
クッションはほぼ認められません。
しかし、なぜか、厭ではない…不思議な印象が残ります。

そんなこちらの靴ですが、デッドストックで見つかったものを入れたという経緯ゆえ、サイズ40と44、一足ずつのみの入荷となっています。

決して万人からは愛されなくとも、たった一人からでも深く愛されるタイプの靴ですから、サイズのめぐり逢い次第ではすぐに巣立ってしまいそうな予感がしています。

どうぞ今のうちに、店頭にてお試しを。

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靴とYシャツと私 Pt.2

6月のEuphonic LOVE以来となる、久しぶりのイベント告知です。

1月に大好評いただいた、delightful toolの靴とholo shirts.のシャツのオーダーを同時にお楽しみいただける贅沢企画<靴とYシャツと私>が、この秋再び開催されることとなりました。

期間は10/12(土)~14(月祝)の3日間。

delightful toolは基本的に前回と同じですが、

holoについては今回はフルオーダーはお休みし、その代わりパターンオーダーでできる範囲が拡がります。

襟型は従来のレギュラーに加えて

ラウンドカラーに

ボタンダウン、

バンドカラー、

そして前回に引き続き当店限定のスモールカラーが選べるようになりました。

その他、サイズが増え(XLが追加されました)、細かい調整も可能に。

この表にある「染まるボタン」は一部の生地との組み合わせのみオーダー可能なのですが、地と一緒に特殊なボタンを染めることで、また新鮮な表情を楽しむことができるとか。

ところで、先日holo shirts.窪田さんがdelightful tool寺田さんとともにdelightful toolの靴を生産している神戸の工房へ見学に行かれたという文章が公開されました。

holo shirts. journal/ 理想の二人

現地でのレビューというだけあって、たいへんに興味深い内容です。

前回のイベント開催決定時に当店で行われたお二人の対談記事と組み合わせて読むと、さらに面白いですよ。

そんなお二人のものづくりに対しての姿勢に触れつつ、イベントに向けて是非ご期待ください!


10/1からの増税に伴う送料設定変更について

まったく忌まわしいことに、10/1から消費税が10%に上がります。

つきまして、当日より、商品代だけでなく、送料も下記の通り設定を変更させていただきます。

基本972円(税込み12960円以上は無料)→ 基本1000円(税込み13200円以上は無料)

配送業者さんの運賃のみならず、梱包材費などの負担も大きく、ひょっとすると状況次第ではまた変更させていただくことになるかも知れません…

どうぞご理解賜りますようお願い申し上げます。


この部屋は落ち葉に埋もれた空き箱みたい ~ tilt The authentics/ Room Track Jacket

まず手に取って、しっとりとした上品な重量感を楽しんでみてください。

次に袖を通せば…あまりの軽さと快さにはっと目が覚めることでしょう。

そんなtilt The authenticsの服作りの見事さを、存分に味わえるブルゾンです。

テーラードジャケットと陸上用トラックジャケットを融合したデザインは、シンプルなようで不思議な個性を放ちます。

それこそテーラードジャケットの代わりに羽織れるほどドレッシーな印象を与えるのは、袖口に見られるクラシカルなディテールのみならず、

tiltオリジナルのこの生地の力もあってこそ。

なめらかな手触りながら、複雑なメランジ感により表情に奥行を与えています。

裏地はキュプラと綿の混成で、つるつるっとした艶めきを抑えながらも粗野さなど微塵もない、実に品の佳い生地です。

そして何といっても、冒頭で述べたようにその着心地の異様な軽さには降参するほかありません。
一度身に纏えばもう体が忘れられず、気がつけばいつだって求めてしまう、それほどの体験となります。

すでに在庫も残り一着(9/27現在)となりました。

気になる方はお早めにどうぞ。

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公園のベンチに 埃が舞う ~ EEL Products/ チベットパーカー

とくに県外の方にがっかりされがちなのですが、仲町台は横浜でありながら浜の横には位置しておりません。

それどころか海とは程遠い丘の上にございまして、ほんの数十年前まで、ここ港北ニュータウン一帯の大部分は今以上に雑木や竹林だらけの里山でした。

ただ、地域として見れば昔から人は住んでおり、都筑ふれあいの丘駅近くの花見山遺跡からは縄文土器が大量に出土し(横浜市歴史博物館や東京国立博物館でその一部を見ることができます)、かの『万葉集』にも筑紫に派遣された都筑郡の上丁・服部於由の詠んだ防人歌

和我由伎乃 伊伎都久之可婆 安之我良乃 美禰婆保久毛乎 美等登志怒波禰
(我が行きの 息衝くしかば 足柄の 峰延ほ雲を 見とと偲はね)

が収められています(巻第20)。

この愛すべき都筑の地を含め、横浜北部の丘陵地帯はかつてその利便性の悪さゆえ「横浜のチベット」と称されていました。

そんな歴史を思い起こさせるショートコートが、EEL Productsから届いています。

その名もチベットパーカー。
実に、辺境の地・仲町台の洋品店に相応しいではありませんか。

肉厚のコットンツイル一枚で仕立てられ、

紐のループを用いたボタンの留め方が実にエキゾティック。

正直服自体チベットの民族衣装との共通項はあまり見当たらないのですが、

商品名をよく見れば”Tibet Parka”ならぬ”Tibet Parker(チベット公園管理人)”ですし、なかなか一筋縄ではいきません。

公園といえば、ここ港北ニュータウンは、かつての里山や田園地帯を根こそぎ剥ぎ取るのではなく、基本構造を残し緑道、公園をまず配置してそこに沿って近隣住区を開発するという順で設計されています。

緑道で結ばれる公園の如く、またチベット仏教に於ける六道輪廻の如く、点と点がこうして繋がり、円環が成就しました。

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黒く塗る男 橋の上から去った男 「停車場から出た汽車は自由に辿りつくことができない」と知っている男 ~ YOAK/ STANLEY

詳細は伏せますが、先日とあるお客様からのお問い合わせから、販売足数や話題性といった一般的な物差しでなく、ごく私的な観点に於ける最高のスニーカーとは何かを考えさせられました。

それがこちらのツイートに繋がりまして、

ここから始まった一連のスニーカーの羅列は想定外の反響を呼び、いつしか「#私的ベストスニーカー」なるタグまで作っていただき、多くの方がそれぞれにとっての嗜好の一足を挙げるという、ツイッターならではの現象が発生することに。
たいへんうれしいことです。

さてこうして挙げたスニーカーは私物やヴィンテージばかりで、当店で取り扱っているものは意図的に外しているのですが、先のツイートでも触れましたように、当店は現在ベストと思えるものを仕入れておりますので、それを含めると当然店頭にあるものが最高ですよ、となってしまうんですね。

YOAKの靴ももちろんそのひとつ。

このブランドがオンラインでの直販のみでの展開から卸を始めたときからのお付き合いとなり、有難いことにすぐにデザイナーの広本さんとの対談記事も出て、今や完全に当店では欠かせないスニーカーブランドとして君臨しています。

寡作ながら、ブランド発足から現在に至るまで廃番にした型はなく、どれもが定番として普遍的な存在感を放ち続けるなか、もっとも中庸であることを突き詰めたのが代表モデルの一角であるSTANLEY。

当店では今までオールホワイトのものと上級グレード版1.0を取り扱ってまいりましたが、この度ここにオールブラックが加わりました。

ラグビーワールドカップ開催中ですが、オールブラックスに乗っかったわけではなく、ただの偶然です。

ソールはもちろんのこと、

もっちりした履き心地を生み出すライニング、インソールの豚革も真っ黒。

白とはまた違う、ドレッシーかつ精悍な顔つきとなりました。

ちなみに、こうしたごくごくシンプルなデザインは、とりわけ革を用いる靴では簡単そうに見えて厄介なものです。

各パーツが大判であるがゆえに、傷、生来の皴や血管痕、また部位によって変わる質感などの表情のブレを避けるとなると、裁断にはかなり気を使わなければなりません。

そうした視点でまた改めてこの靴を眺めてみてください。

虚飾を排するというのは何も誤魔化せないことと同義であるのが、きっとご理解いただけるはずです。

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小さな恋のメロディ ~ tilt The authentics/ Small Collar Plain Shirts

定評あるパンツのみならず、店頭から次々とtilt The authenticsの服が姿を消しています。

そんな油断のならぬ状況ですので、このシャツも今のうちにご紹介をば。

バックヨークまで削ぎ落した禁欲的なデザインに、仄かな温もりを宿した、実にtiltらしい一枚です。

素材は高密度に織られたコットンフランネル。

つまりこれ、ネルシャツなんですね。
その単語を聞いてぱっと想起するものとは、なんだかまったく違いますが。

この上品な生地に、ややゆとりのある幅に小さな襟、若干短めの着丈といったトレンドのオーバーサイズと一線を画したリラックス感が加わり、清潔な心地よさを生み出しました。

地味ながら、袖も二枚袖にすることで、立体的な曲線を作り出し、着用時の美しさと運動性を高めています。

こうしたシンプルでデザインされていなさそうなシャツも、実はこのように細部までプロの仕事が施され、しけじけと見れば見るほどに驚きと感動を覚えずにはいられません。

tiltがどんな服を作るブランドなのか、それを実によく表したシャツです。

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ノース・エンド ~ CURLY/ RAFFY & PRESTON ZIP PARKA

初めて紹介してからもう三度目の秋になりますが、飽きられるどころか絶賛の声は高まるばかり。

CURLYを代表するスウェットパーカRAFFYの秋冬モデルが、今年もやって参りました。

フロントジップをどこまで開けてもフードがぺしゃんこにならず立体的な形状を保つ独自の構造、

肉厚にして柔らかく、しっとりふわふわした肌触りと、

長年の着用を経ても一向にへたらずまた硬くならない耐久性、着用時のシャープなシルエットは、トレンドの動きに負けない普遍的な価値を備えています。

基本的にブランド名でものを選ぶお客様の少ない当店ゆえ、CURLYが、とかではなく単に店頭に置いてあるスウェットパーカとしてとしか認識されないケースが今もほとんどであるにも拘わらず、体ではっきりとわかる極上の品質を評価され、毎度入荷のたびに驚くほどの速度で巣立っています。

そのRAFFYをより秋冬向けに再設計したのがPRESTON。

こちらはコットンをベースに、スーパー140’sという高級スーツ生地に用いるような繊維の細いウールの糸を配合、豊かな触感と確かな保温性を生み出しました(ちなみに、RAFFYにはトルファン、ギザ、スーピマの落ち綿のみを混紡したムラ糸リサイクルコットンを編み上げた生地を用いています)。

そんな糸を使って、手入れとか大変なんじゃないの?という疑念は当然起こるかと存じますが、ご心配なく。

RAFFY同様、洗濯を繰り返しても風合いが崩れることなく、長く楽しめるよう考慮されています。

なお、RAFFY、PRESTONともにファスナーもこの上質な生地に負けないものを採用。
歯の一本一本に磨きをかけたYKKの最上級品エクセラは、開閉時の使用感も抜群です。

両モデルどちらもそれぞれの佳さがあり、なかなか甲乙つけがたいところ。
純粋に、用途やお好みでお選びいただければ、きっと幸せになれますよ。

オンラインストアはこちらです→ RAFFY ZIP PARKA/ PRESTON ZIP PARKA


3エーカーの土地と一頭の牛 ~ LETROIS/ Rodney

MOSODELIAあらためLETROIS(ルトワ)。

5月の先行受注会でもご好評いただいたこのブランドから、第一弾となるシャツ”Rodney”が届きました。

パターンナー出身ならではの技巧を駆使し、19世紀半ばのシャツを再構築したグラッドストーンカラーのシャツです。

このグラッドストーンカラーは、ヴィクトリア朝の時代4度にわたって英国首相を務めた名宰相ウィリアム・ユワート・グラッドストーン(1809-98)が愛用したことでその名を冠し有名になりました。

平和主義、自由主義を掲げたグラッドストーンは、相対し帝国主義を推し進めるベンジャミン・ディズレーリと二大政党制のもと鎬を削った19世紀英国政界の最重要人物の一人。

日本に於いても、同じく当時辣腕を振るったプロイセンの宰相オットー・フォン・ビスマルクの対局に位置する高名な政治家として、福沢諭吉や中江兆民、大隈重信らに影響を与えたと云われています。

なお、浅学故経緯は不明ながら、かのトーマス・エジソンへ向けた肉声の録音が残されています(1888年)。
いかにも演説慣れした深い声と重厚な調子に、つい聞き入っちゃいますね。

さて、このシャツの襟はグラッドストーン翁よろしく立てるのはもちろん、

通常のシャツの如くお召しいただくことも可能となっています。

またその特徴は襟型のみならず、肩甲骨に主眼を置いたパターンワークが展開され、

着心地、運動性、美しいシルエットを生み出しています。

袖も2枚接ぎの立体的なつくりです。

裾はやや長め。

出してもずろっとせず、入れてももたつかない、絶妙な丈感に唸らされます。

往時の英国の匂いを味わえつつも、しっかりと現代の日本の服として整えられたこのシャツ、日常生活から堂々たる演説の舞台まで、いつでもお供として寄り添ってくれそうです。

そういえば今さらながらこのシャツの名はグラッドストーンではなくRodney、となれば自ずと第二次世界大戦で活躍した英国海軍の戦艦ロドニーを想起しますが、

ロドニーは大戦時、重巡洋艦ノーフォークやドーセットシャーらとともにドイツの戦艦ビスマルクを撃沈しています(また史上初めて戦艦同士の交戦で魚雷攻撃を成功させた事例となりました)。

デザイナー菊地さんが、鉄血宰相にしても戦艦にしてもビスマルクに対していったいどんな思いを抱いているのか、それは知る由もありません。

オンラインストアはこちらです→ ホワイト/ ネイビー