EEL Productsの本が発売されました

以前にも告知致しました通り、EEL Productsの軌跡を記した書籍『イールプロダクツ』がミルブックス社より発売されました。

創業者であり現在はレディースラインのironariを手掛けている高橋さんの回顧録、そして今後も作り続けたい31品番(実際はもっと広く語られてはいますが)についての物語がデザイン画や豊富なカラー写真などと併せてまとめられ、EELファンに限らずこれから洋服の仕事に携わっていきたい若い方にとっても興味深い内容となっています。

価格は1500円+税です。

Amazonや一部書店はもちろん、当店でも少量部数ではありますが販売しておりますので、ご興味あれば店頭にてどうぞ。


モックが笑えば みんなも笑う ほらほら小犬も かけてくる  ~ mocT

スウェットやTシャツの最も重要な基本色として幅広く愛され続ける杢グレー。
実はこの色、我が国に於いては基準となる色が存在します。

それが大阪の新内外綿株式会社が1967年に開発した”GR7″です。

米国産サンホーキン(サンホアキン)綿を用いて、トップ染めした少量の綿を生成の糸に混ぜて紡ぐことで独特のまだらな表情を生み出したこの色糸は、現在でも同社の杢糸シリーズ”MOCUTY”の看板として君臨しています。

そのGR7を大々的にフィーチャリングし、新内外綿が自社のブランドとして立ち上げたmocT(モクティ)は、この糸名に因んで名づけられました。

そのラインナップは、基本的にグレーのカットソーのみという潔さ。

しかし、繊維会社が手掛けるだけあって、ただ杢グレーを使っていますというだけでは終わらせません。
判りにくくも、そこには確かな違いがあるわけです。

このポケットTも然り。

一見するに何の変哲もないようで、

近づけば、ほら。

ネオンイエローの糸が混ぜ込まれています。

ただ単なる杢グレーのTシャツでもない、しかしポップすぎることもない、絶妙な塩梅の配合に舌を巻きますね。

肌触りのしっとりとした柔らかさも見逃せません。

素材メーカーならではの、たしかな技術力があらゆる点で如何なく発揮されています。

基本的には杢グレーのシンプルなTシャツですから、装いの提案などするほうが無粋というものでしょう。

正直モニター越しではお伝えしきれない商品です。
是非一度店頭にて触れてみてください。

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KIMURA受注会を開催します

少しずつ、しかし着々とファナティックな支持者を増やしてきているKIMURA。

有難いことに先月入荷したnarrowing cardiganも(そして他の全モデルも)瞬く間に全色完売してしまいました。

さらに、店頭にてお客さまより「KIMURAの他のモデルをもっと見てみたい」「去年やったようなオーダー会は次いつやるんだ」等のお声もいただくようになり、これはもうデザイナーの木村さんをお呼びするしかないであろうと判断した次第です。

ということで急遽決定、KIMURA受注会を開催致します。

期間は来週土日(5/25-26)の2日間。

当店で展開したことのある型だけでなく、過去の作品から新作に至るまでサンプルをズラリと並べ、その中から発表シーズンを問わず気に入ったモデルをご注文いただけます。

当日は木村さんも在店されますので、デザインや構造についてなど、何でもどんどん訊いてみてください。

シャツがどんどん気持ちよくなる時期ですし、素敵な2日間となるのは間違いないでしょう。

皆様のお越しをお待ちしております!


You & I ~ TRIOP/ SLIPPER UNI

奄美が梅雨入りしたそうで、このままぼやぼやしていると横浜もすぐに梅雨、そして夏になってしまうのでしょう。

サンダルの季節はすぐそこですね。

お馴染みTRIOPから今年届いたのは、つっかけタイプのお気楽なモデル”UNI”です。

ブラック、ブラウンに無煙炭色が組み合わさったシックな色合いがシックに見えないほどの、実に不思議なデザイン…。

ですがその設計思想はあくまで履きものとしての本質に基づいています。

骨格、筋肉を計算して配置された甲のストラップ部分と

インソールの足が触れる箇所には、肌理細やかなシンセティックスウェード素材が採用され、素足にやさしく寄り添います。

土踏まずが立体的なインソールはやわらかいラバー、

ミッドソールには衝撃吸収性に優れたポリウレタンにエチレンジアミンを添加し弾性を高めた複合素材を、そしてアウトソールには耐摩耗性を重視し圧縮ラバーを用いています。

元来クライミングシューズメーカーとして名を馳せているブランドだけに、ソールつくりはお手のもの。
沈み過ぎない適度な固さと要求以上のクッション性能に唸らされます。

甲の独自構造のストラップとこの立体的なソールが合わさり、見た目以上に履きやすく、そして歩きやすいのがこのサンダル最大の特徴とも言えます。

今回はやや少量の入荷ですので、気になる方はどうぞお早めに。

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山には山の愁いあり 海には海の悲しみや ~ KESTIN HARE/ CRAMMOND SHIRT & SEACLIFF SHIRT

ここ数シーズン、肩肘張らない程度に上品で、美しく、そしてどこかしらスコットランドの荒涼とした風土を彷彿させるコレクションを展開しているKESTIN HARE。

通常であれば陽気な属性を帯びるであろう花柄の半袖開襟シャツですら、例外ではありません。

まずはエディンバラからほど近い島の名を冠したCRAMMOND SHIRTをご覧ください。

ゆったりとしたアロハシャツの形状が夏の盛りを思い起こさせますが、

てろんとしたテンセル生地にプリントされた手描きの花柄はうっすらと灰色がかっています。

やさしく快適な着心地、花柄、そして翳。
これらの諸要素が重なることで、ケスティンならではの独自性豊かなシャツへと昇華しました。

余談ですが、このシャツの名の由来となったクラモンド島は本土から1.6kmほどの距離に位置し、干潮時は歩いて渡れるそうです。

満ち潮にはお気をつけください。

さて、もう一型もご紹介。

ノース・バーウィックの地名を冠したSEACLIFF SHIRTもまた、ただならぬシャツです。

こちらはハリのあるコットンポプリンに枯れたあざみ(Scottish thistle)がプリントされた生地で仕立てられています。

左胸と両脇にはパッチポケットが設けられ、真夏のちょっとした羽織りもののような使い方もできそうです。

あざみはスコットランドの国花で、かの地で非公式国歌として愛される”Flower of Scotland”の曲名も、この花を意味しています。

歌の内容は、イングランドの大軍による侵攻をゲリラ戦術によって食い止め、のちのスコットランド独立を成す嚆矢となったバノックバーンの戦い(1314年)をモチーフにしたものであり、

あざみの花はこの戦いと直接関係はないのですが、この花自体はもっと古い時代から国を守る象徴として語り継がれています。

一説には、10世紀にデンマークと交戦した際、夜襲をかけるにあたり足音を消すため裸足になっていた敵兵があざみを踏んでしまい、棘の痛さで思わず上げてしまったその声でスコットランド側が奇襲に気づき、結果勝利を収めたことから、救国の花として扱われるようになったとか(同様のエピソードは1263年のラーグスの戦いでの逸話との説もあり、今一つ定かではありませんが)。

また、スコットランドには何種類ものあざみが存在し、それはいくつもの民族、文化が折り重なっているスコットランドそのものを表しているようでもあります。

いったい何が本当の由来なのかは、実のところはっきりしていません。
が、あざみが何百年ものあいだスコットランドにとってとても大切な象徴とされていたことだけは事実です。

ところで、春から夏にかけて紫色の花を咲かせるあざみが、なぜかその時期に着るはずのこのシャツでは枯れています。
どうしてそんな寂しいことになったのか、想像を喚起させて止みませんね。

オンラインストアはこちらです→
CRAMMOND SHIRT オリーブ/ オーカー
SEACLIFF SHIRT


私はがまんできない ~ HAVERSACK/ シルクローンスタンドカラーシャツ&ズアーブパンツ

HAVERSACKが今季特に力を入れて提案する素材、シルク。

艶や肌触り、保湿性、吸湿性、通気性といった素晴らしい魅力の一方で、繊細で扱いづらいといった懸念も少なくないことでしょう。

そこで大胆にも、生地にこれ以上水を通しても変化しないほど洗いをかけ、家庭でも洗濯可能な実用品へと仕上げてしまったのが、これらのシルクローンシリーズです。

まずはスタンドカラーシャツ。


以前ご紹介したストライプ生地のものと同型ですが、素材が薄手のシルクに置き換えられるだけで、見事に別物へと変貌しますね。

とても薄くて軽いため、真夏の羽織りものとしても最適です。

こちらに加え、パンツもございます。


ちょっと変わった形ですが、ズアーブパンツと称します。

ズアーブ(Zouaves)とは、1831年に編成されたフランス軍の軽歩兵連隊です。
フランスの植民地だった北アフリカ、主にアルジェリア人やチュニジア人の兵士によって構成され、1962年のアルジェリア独立を以て解散するまで、精鋭部隊としてクリミア戦争や二度の世界大戦など歴史の重要な局面で活躍しました。

そのエキゾティシズムに満ちた独特の装いはフランスに留まらず、各国に影響を与えることとなります。

たとえばアメリカ南北戦争では南北両軍にズアーブを称した義勇兵部隊”5th New York Volunteer Infantry(Duryée’s Zouaves)”、”Louisiana Tigers”などが存在、こうした華やかな軍服に身を包んで戦場へと繰り出しました-ただし、その美しい彩りは相手側の射撃手、砲撃手からすれば格好の標的となったようですが。

もちろん今回のズアーブパンツは殺伐とした争いの場ではなく平和な都市生活でお召しいただくもので、これがまた意外なほど日常の装いに違和感なく合わせられます。

まるで穿いていないかのような軽快な着用感と、ふわっとした絶妙なシルエットは、夏の有能な一員としてズアーブ兵の如くさまざまな場で重用されるはずです。

どちらも着てみると予想を遥かに超えて佳いとのお声をいただくことが多く、シャツ、パンツともに気温の上昇に伴って店頭にてどんどん巣立ち、だいぶサイズ欠けを起こしてしまいました。

次第に蒸し暑くなるこれからの季節に臨み、どうぞ今のうちにお買い求めください。

オンラインストアはこちらです→
スタンドカラーシャツ ブラウン/ カーキ
ズアーブパンツ ブラウン/ カーキ


もったいないこと してないかい? ~ SIDE SLOPE

ゴールデンウィークにかまけてだいぶブログ更新を怠ってしまいましたが、入荷そのものは相変わらず続いております。

だんだんと半袖をお求めになるお客様も増えてきたことですし、ここでサマーニットの逸品をご紹介致しましょう。

当店初登場となるSIDE SLOPE(サイドスロープ)は、ニット専門のブランドです。

日本と中国に自社工場を構えており、2005年のブランド発足から今に至るまでその品質の評価は世界的に高く、主に高級店を中心に各国で展開されています。
国内よりも寧ろ海外でのほうが知られているかも知れません。

この度ご縁があって当店でもお取扱いが始まったのですが、今季は2型提案させていただきまして、まずはニットポロ。

上品な艶、しっとりした肌触り、高い耐久性を備えたギザコットンをイタリアで紡績、染色した糸で編み立てられています。

裾と袖口に編み柄を入れることで、英国クラシック的になりがちな型に華が添えられました。

また、ブランドの特徴として、銘の入ったタグがついていません。
その代わりに略称である”SS”で描かれたハートの刺繍が入っているのですが、この糸色がモデルの方向性を表しています。

このニットポロは白色。

ブランドとしてもっともオーソドックスなラインであることが示されています。

もう一型はニットTシャツ。

このニットTに刺繍された緑色のハートは、工場で出た余剰糸を再利用したことを意味しています。

品質の高いニットを作るがゆえに、どうしても余ってしまう糸も当然上等なものばかり。

そうでなくともそれらを廃棄するのは素材に対して申し訳ないという思いから、こうした糸を用いたニットづくりもブランドとしてとても大切にしています。
というより、そもそもこの余った糸に対する強い思いがサイドスロープを立ち上げるきっかけでした。

ゆったりしたシルエットに編みっぱなしの仕様(これもまた余った編地の切れ端に着想されたようです)が、先ほどのニットポロとはまた異なる魅力を放ちます。

なお、このTシャツはクランベリー由来の染料で製品染めが施されています。

とはいっても旧来の草木染めではなくシオンテック社のボタニカルダイが採用されており、クリア且つ深みのある優しい発色と高い染色堅牢度の両立が実現しました。
えぐみのない澄んだ赤が、これから気温の高まる季節に映えることでしょう。

若い方は勿論、大人が着られる夏の色ものとしてもお薦めです。

どうぞ一度、店頭にてお試しください。

オンラインストアはこちらです→ STANDARD Polo Pullover/ BOTANICAL DYE C-Neck T-Shirt


LETROISオーダー会が始まりました

本日より5/5までの3日間、新ブランドLETROISのオーダー会が開催されています。

全日デザイナーの菊地さんも在店されていますので、各アイテムの詳細についてなど、どんどん訊いてみてください。

引き続き開催中のBRAASIポップアップイベントとあわせて、是非どうぞ!


いざ行かむ 行きてまだ見ぬ山を見む このさびしさに 君は耐ふるや ~ Ithe

古来より、美食家の辿り着く先は精進料理と云われています。

もともと独創性の強い服作りを得意としてキャリアを積み重ねていったデザイナーの吉﨑さんが2016年に立ち上げたIthe(イザ)は、まさに服に於ける精進料理のようなブランドです。

デザイナー自身(I)がまさに今着たいもの(the)、それは言わば「日常の制服」。

普段の生活の中で、当たり前のように着る服-そのために何が必要なので何が必要でないかを極限まで突き詰めて導き出した解答は、デザインをしないことでした。

時代の流れに研磨され、それでも現代まで残った服は、おおよそ見た目ありきで創られたものではなく、ある目的を達成するための合理的な理由があってその形となったものです。
だからこそそのデザインには普遍性があり、広まり、残ったとも言えます。

そうした過去のアーカイブが内包する結果としての「普通」に最大の敬意を払い、その「普通」を新しく再構築する、それがItheのデザインです。

サンプルとなる服が製造された年代、背景、流行、パターン、縫製、生地、付属品、サイズといった諸要素を解析し、現代の素材、技術に乗せ換える…そうしてItheの服は生まれます。

それは一種のコピーでもありますが、驚くことにその着地点はまったく非なるものになります。

まずはそう、何はともあれItheの服をご覧いただきましょう。

No.14-BB。

80年代に米国で製造されたブルックス・ブラザーズのブレザーを基に、しっとりしたとろみのあるコットンの平織り生地で仕立てたジャケットです。

パッドを抜いて肩のラインを柔らかくし、

またオリジナルで使われていたメタルボタンを艶の少ないナットのものへ変更、

縫製のグレードを上げることで、普遍性はそのままに、現代の服へと生まれ変わっています。

これとセットアップで組み合わせられるのがこちら、No.15-DK。

なんとあのディッキーズの定番ワークパンツである#874の90年代製品がトレースされました。

ブレザーと同じまろやかな生地を用いて、当然本家とは較べるべくもないほど綺麗な縫製が施されてはいますが、

ディテールはどう見てもディッキーズの武骨なそれ。

なお、オリジナルに倣って、ウェストサイズが(縫い直すことで)調節可能な仕様となっています。

ザ・ワークパンツなのにブレザーと合わせれば不思議とまとまってしまうのは、それぞれの構造をあらわす描線以外の肉を徹底的に削ぎ落とすことで、残されたエッセンシャルな要素のみを同一の次元に落とし込めているからでしょう。

コーチジャケットのNo.16-VAも面白い。

基となったのは、往年の和製アイビーブランドVANです。
しかもブレザーやボタンダウン、スパニッシュコート等ほど語られることのないコーチジャケットですから、その選球眼には恐れ入ります。

こちらは光沢が抑えられ、しなやかな柔らかさと程よく乾いた質感を備えたコットンナイロンの生地で仕立てられています。

肌ざわりがよいため、表裏共に同じ生地が用いられました。

形状はたしかにコーチジャケットですが、スポーティーな印象はあまりなく、こうした服を着慣れていない方でも抵抗なくお召しいただけるはずです。

それぞれの元ネタは以下の写真にまとまっていますので、その違いがお判りいただけるかと思います(Poloベースのシャツは今回入荷していません)。

あまりにも大胆な手法で服の本質を追求するIthe、どうぞ今後ともご注目を。

オンラインストアはこちらです→ No.14-BB/ No.15-DK/ No.16-VA


新ブランドLETROIS受注会を開催します

当店でも何年にもわたり展開を続けてきたMOSODELIAが、今季を以て終了となりました。

残念なことです。

が、デザイナー・菊地条氏が活動を休止したわけではありません。

旅のための服というMOSODELIAのコンセプトを一旦終わらせるだけで、より作り手本人の嗜好に寄せたディープな世界へと生まれ変わるだけです。

ということで新ブランドLETROIS(ルトワ)をご紹介します。

「過去から未来へのバトン」をコンセプトに、テーラード×ワークをベースとしたクラシカルな服を提案。

ブランド名は”3″を意味し、過去+現在+未来、の3段階の時間軸を表しています。

MOSODELIAとはガラリと変わった世界観ですが、もともとパタンナーとして活動していた菊地さんはこうした重衣料の構造の理解も深く、御本人からすると自然な帰結のようです。

さて、そんなLETROISが、この秋のデビューに臨み、当店にて一般のお客様に向けた受注会を開催することとなりました。

期間は3に絡めて5/3~5の3日間。

当日は菊地さんも在店され、直接それぞれの型の詳しいお話を聞くことができます。

また、お披露目も兼ねてということで、受注会にてご注文いただいた方には菊地さん特製のノベルティも進呈致します。

BRAASIのイベントもご好評いただいているなか、さらに強力な仲間が加わって、一層彩り豊かなゴールデンウィークとなりました。

もちろん見るだけでも結構ですので、是非お気軽に遊びにいらしてください!