主人公の移動手段はバイクです。
今季のASEEDONCLOUDの主題である”老異苑(おいことえん)”、その背景については以前のブログでおさらいいただくとして、そこでも触れられているように、デザイナーの玉井さんが上海の地で聯想した『AKIRA』のイメージが少なからず設定に影響を及ぼしています。
『AKIRA』といえば金田(さん)のバイクが実に印象的ですね。
ということで冒頭の話に戻ります。
老異苑を運営する貴族に売るべく、世界を駆け巡って珍品を探し求める主人公の冒険者。
彼が旅の相棒である鉄の馬に跨るにあたって着用するのはこんなコートでした。
機動性の高さの一方で積載量に限りがあるバイクを使う以上、ある程度の獲物は彼自身が身に着ける必要に迫られます。
ゆえに、そこから羽織る上着にはじゅうぶんなゆとりがなくてはなりません。
1940年代のバイクコートと軍物のスノーコートのディテール、シルエットを引用、咀嚼、混成、再構築することで生まれたこのボリューミーなコートは、そんな要求にしっかりと応えてくれます。
くわえて胸には大きなポケット。
ボタンで留まるフラップも設けられ、バイクの移動時でも中身が飛ぶ心配は無用です。
立体的なフードはその役割をしっかりと務め、そして出番のないときは取り外すこともできます。
フードがない状態だととてもすっきりとした印象となりますね。
長い着丈はバイクに跨るには煩わしいのでは?そんな疑問もごもっとも。
裾の紐を左右ごとに前後合わせて結び、脚を挟み込むように固定することで解決します。
素材も見ていきましょう。
生地はオリジナルの千鳥格子柄、その名も”Oykotoen gun club check”の先染めコットンツイル。
印象以上にやわらかな手触りで、肌に心地好い素材感です。
これを一枚仕立てで用いています。
“ガンクラブ”は単なる銃火器愛好家の集いではなく、狩猟クラブのことです。
英国では害獣であった狐を狩ることがいつしかゲームと化し、その行為がエスカレートした果てに狐を絶滅危機まで追いやったとか。
そうした退廃的な享楽性が”老異苑”の世界観と近しいことからこの柄が生まれました。
なお、ここで用いられている煤けた緑色は、『AKIRA』の鉄雄の印象とも繋がります。
ところで、先ほどからチラチラと登場するボタン、お気づきでしょうか。
実は大のボタン好きである玉井さん、このコートに選ばれたのは木製のものです。
素地をそのまま活かした朴訥な質感で、これが使い込むとどうなるのか、想像を喚起してくれます。
最後にタグのお話を。
ASEEDONCLOUD=A SEED ON CLOUD、すなわち『くもにのったたね』。
玉井さんが我孫子幼稚園在園時に著した素敵な絵本の題名です。
着る際には外してしまう商品タグにも、種にまつわる玉井さんの思いが込められていまして…よくご覧くださいませ。
このタグの中には植物の種が仕込まれており、実際に植えて育てることができます。
何の種かは、開けてのお楽しみとのことです。
と、付属品に至るまで何かと魅力の詰まった豊潤なコートですから、バイクに乗るのらないを別にしてもきっと存分に楽しめるはず。
秋にも問題なく着られるとはいえ、ご紹介する季節も季節ですから、数は積んでいません。
スプリングコートの本格的な出番がいよいよ目前に迫るこのタイミング、是非お見逃しなく。
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