走る 走る 俺たち ~ Ithe/ No.23-58-F-TP

畢竟するに、服屋の仕事とは言葉やヴィジュアルなどを駆使して服の魅力を伝えることです。

ゆえにそのデザインのみならず、素材や生産現場の背景であったり、縫製など、そうした視点で語られることが必然的に多くなります。

ただ、それはそれとして、ときに「なんかよくわからないけど、なんかいい」みないな服が登場することがあり、これはなかなか説明が苦しい。

もちろん語りどころがないわけではなく、寧ろいくらでも見つかるわけですが、その言葉がもっとも伝わる媒介かどうかいまひとつ自信が持てない、そんな服です。

たとえばこのパンツのように。


Itheのこの秋の新作No.23-58-F-TPは、過去に登場したNo.23-F-TPをベースにリデザインした一本です。

引用元は、1980年代におそらく量販店あるいはスポーツ用品店で売られていたであろう、FILAのトラックパンツ。

歴史的な名品でもなければ、古着として骨董品的な価値があるわけでもない、二束三文の代物です。

これをItheお得意のサマーウールに載せ替えることで、構造そのものの魅力を引き出したのがNo.23-F-TPでした。

サイドのFロゴ羅列のテープを本体と共生地にすることで、スポーティーさは影を潜め、さながらタキシードパンツの側章のような佇まいに。

こうしたNo.23-F-TPの基本設計はそのままに受け継ぎ、ワイドな裾幅を削ってゆるやかなテーパードシルエットへとすっきりさせています。

元ネタが元ネタですから、いくら素材と縫製のグレードを上げたところで、特段ユニークな構造にはなりませんし、ぱっと見は何の変哲もないイージーパンツにしか見えないことでしょう。

しかし、店頭でご試着された方の多くがその場でご購入を即決され、またその後もほとんどの方にご愛用いただけているというのは、このパンツの本質的な完成度を大いに語る事実です。

まずは騙されたと思って一度お試しください。
なぜだかはわからずとも、まさに自分のために作られた一本であるかのような不思議な感覚を覚えるかも知れませんよ。

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