ソルジャー・オブ・ラヴ ~ written by/ Military Coat

昨今ファシズムの再興めざましく、日に日に国内外の情勢が不穏になるにつれ、ファッションとしてのミリタリーウェアの「意味」も否応なしに強まってきています。

ミリタリーウェア、国家が莫大な予算を投じて設計しているものであるがゆえに純然たる機能美を備え、ゆえに回り回って平時の服となるのも必然ではありますが、そのすべてを否定するのはナンセンスであるにしても、せめて「意味」は意識していたいと、衣料品販売業者の端くれとして思うところです。

さて、ミリタリーウェアを平時の服として扱うにはいろいろなアプローチがありますが、このように徹底して換骨奪胎してしまうのもひとつの手段でしょう。


いわゆるM-47フィールドパーカあたりを下敷きにしてはいそうですが、それにしても何とも攻撃性の低いミリタリーコートです。

2017年に“After Wars”をテーマとしたコレクションを発表したこともあるほど、以前から戦争と平和について常に意識を向けて服を作り続けてきたwrittenafterwards。

ミリタリーウェアに対して単に「カッコいいから」というだけの純朴な目線は向けず、その機能美だけを抜き出しながら、デザインの力で硝煙と血の臭いを見事に消し去ってしまいました。

高密度に織られた馬布は、そのハリの強さが服全体に硬さを与えるどころかふくらみを支え、柔和な印象に一役買っています。

気兼ねなく使える耐久性、等身大の清潔感もまたこの生地の特徴です。

ディテール上、アクションプリーツや

フィッシュテールといった「文法」は踏襲しているものの、

デフォルメと表現したくなるほど大ぶりのボタンが服に可愛らしさを加え、武骨さを抑え込みます。

それでいて前立てのボタンを外すと

そこに現れたるは迫力のあるビッグサイズのUNIVERSALファスナー。

衣料品に使われているのはあまり見たことがないくらいの大きさで、言うまでもなくたいへん武骨なディテールでありながら、その極端さが逆説的に不思議なユーモアも生み出しています。

名前を出していいのかダメなのか判断つきかねるためひとまずは伏せつつ、先シーズンよりチームに加わった山縣さんの旧友デザイナー氏は、長年にわたりYKKのアドバイザーも務める、いわばジッパーのプロフェッショナルでもあります。
そんな氏ならではのアイディアが光りますね。

蓋し、軍事は古来より科学技術の向上に大きな役目を為してきました。

また個人間と異なり国家間に友情など存在しない以上、ある程度の武力による防衛というものは残念ながら必要不可欠ではあります(たとえば3月にイベントを開催する横須賀は、地理的に東京湾の入口に位置するため江戸時代から重要な国防拠点でしたし、現在も日米が艦船を置く現役の軍港です)。

が、かの『孫子』でも述べられているように、実際に武力を以て相手を制するのは望ましいことではなく、現実問題として国の都合で多くの人の命を奪う戦争は、下策であり絶対悪であると見做すべきでしょう。

しかし、個人として抗うこと、戦うこと自体まで絶対悪ではありません。

昨今は近隣諸国、なかんづく中国の脅威を過剰に煽り戦意を昂揚させるような言説が、お上から民草に至るまで勢いを増していますね。
が、結局のところそのように戦争を利用するだれかによって脅かされるのは個人の尊厳や生活であり、そのとき直接的暴力を以てでなくとも抗い戦うことを否定すべきではないと考えます。

このコートは、そうした戦いへの戦いのための、その姿勢を表す戦闘服になり得るのではないでしょうか。

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