上野を舞台に、老若男女・障害の有無・日本国内外問わずすべての人に向けて発信するアートプロジェクトUENOYES2019 “FLOATING NOMAD”。
昨日は家族でこの催しを体感しに上野恩賜公園へ行ってまいりました。
そして17時、この日最大のイベントであるwrittenafterwardsの2年ぶりとなるファッションショー”After All”が始まりました。
2019SSから続く魔女三部作の最終章、”Anxious Witches”をショーという形でどう見せるのか、期待は高まるばかり。
公園の噴水の周りの椅子に通され、夕暮れの中その時を待ちます。
少し予定時刻を過ぎたところでさっと照明が落ち、ただならぬ雰囲気に包まれました。
その禍々しく陰鬱な様相は、前シーズンのテーマ「魔女裁判」を彷彿させます。
そして場がぱっと明るくなるとともに、2020SS最新コレクションの数々が披露されました。
このモジャモジャくんはじめ、足の遅いモデルは、後続にどんどん抜かれてしまっていました。
それでも気にしないのでしょうか、のんびりと歩き続けます。
開幕の物々しさとは打って変わって、心の軽くなるような世界が広がり、時間の過ぎるのを忘れてしまいます。
実は一足お先に展示会で来季の服は確認してまして、実際に店主も袖を通しているのですが(ということで来シーズンも展開します。乞うご期待!)、まったく見え方が違っていて、とても新鮮でした。
そしてフィナーレ。
まさかの『イムジン河』が流れる中、”FLOATING NOMAD”が指すように遊牧民の如く大荷物を抱えたモデルたちが列をなし、場から去っていきます。
この『イムジン河』には唸りました。
現在の韓国で生まれのちに北朝鮮で活躍した詩人・朴世永が南の故郷を思ってつくった詩をもとに作曲、それがやがて在日朝鮮人に広まり、のちに松山猛による日本語詞でフォーク・クルセダーズが歌い、そして政治的配慮から放送禁止となった、そんな経緯のある歌です。
さらにここで流れたバージョンは、その日本語詞版を韓国人であるイ・ランが歌ったもの。
前回の”魔女裁判”では、価値観の反転により同一の事象がその意味を変えることを指摘していましたが、この『イムジン河』では、イデオロギーの対立や差別、迫害の歴史を超えた先にあるべき景色を伝えようとしているのでしょうか。
もちろんそれはただの憶測に過ぎません。
しかしファッションショーひとつで観たものに服の範疇を超えたさまざまな考察を促すとは、まったくリトゥン恐るべしです。
そして店主は今もなお、その魔法の余韻の心地好さに浸り続けています。