handson grip ウォッシャブルレザー使用製品の洗濯方法

2015年からずっと当店の秋冬を支えてくれているhandson gripの手袋。
お陰様で暖冬の今年もご好評いただいております。

すでに何度かこのブログでも書いているはずですが、こちらの手袋で用いられている牛革は特殊な加工が施されており、洗濯可能です。

…で、その具体的な方法は?

痛恨の極み、この点をしっかりお伝えできていませんでした。
まことに申し訳ありません。

この度当店で取り扱っている各モデルについてしっかりと確認してきましたので、遅ればせながらここに公開したいと思います。

まず、革手袋の洗濯は、手袋自体の構造や使用している副資材によっても方法が異なります。

他の革製品同様に革用のクリーナーで汚れを落とし、クリームで保湿する方法もありますが、しっかり洗いたいという場合は基本的に手洗いとなります。

モデル問わず、革手袋はすべて洗濯機、乾燥機のご使用はお避けください。

店主は私物のEasy Breezyをネットに入れてドライモードで洗濯機使用、乾いてからハンドクリーム揉み込むという荒い手入れを毎年繰り返していますが、この方法はお客様には推奨できません。
完全に自己責任レベルです。

(とはいえ、2015年から毎年そのように酷使してもこの状態を保てるほど丈夫な手袋ではあります)

正しくは、手袋を嵌めたまま、手を洗うように水またはぬるま湯で洗いたいところを濡らしてから、中性洗剤(LIVRERのウール&シルク用がこれに該当します)または頭髪用シャンプーを少量使用して洗います。

泡立ち、表面の汚れが取れた後に、よく洗剤をすすぎ、優しく絞ります。
手を入れて皺が出来ない様に形を十分に整え、直射日光のあたらない風通しの良い場所で80%~90%ぐらいを目安に乾かします。

この方法が基本です。

裏面も含めてしっかり洗いたい場合は構造によって異なりますので、モデルごとにフォーカスしていきましょう。


Fam

Famは裏地のないシンプルな構造ですので、水またはぬるま湯に全体を浸して、優しくもみ洗いしても大丈夫です。
洗濯後は、上記方法と同じく、形を整え陰干しをして、乾ききらないところで(80%~90%ぐらいの度合いを目安に)、手を入れてから、デリケートクリーム等をほんの少しだけ目立たない場所に塗ってみて、シミ等の問題が無ければ全体に薄く塗り込んで保湿します。
その後、再度乾燥をさせて出来上がりです。


Easy Breezy/ Wander’Bout

この両モデルは裏地つきですが、Fam同様洗濯可能です。
保湿、再乾燥もFam同様の手順を行ってください。


WT Traverse GV

WT Traverseは防水フィルムが内蔵されているため、裏地部分の洗濯はあまりお薦めできません。
どうしても洗いたい場合は、上記と同じ方法での洗濯方法となりますが、乾燥するまでのじゅうぶんな時間を確保してください。
ストーブやエアコンなどの近くで乾燥しすぎないよう注意が必要です。
なるべく屋内でグローブを吊るして自然乾燥させ、乾ききらないうちに保湿します(手順は上記モデルと同様です)。


まだ今は手袋が活躍する真っ盛りの時期ではありますが、来たる春に向け、こうしたお手入れ方法を知っておくのは悪くないと思います。

ご愛用のhandson gripも、どうぞたまにはすっきりさっぱりとリフレッシュさせてあげてください。

これからご購入をお考えの方はこちらからどうぞ→
Fam ブラック
Easy Breezy ブラック
Wander’Bout ブラック/ タン
WT Traverse ブラック


大地の子 ~ KESTIN HARE/ STAC BLAZER

昨日を以て、delightful toolとholo shirts.合同受注会”靴とYシャツと私“が無事終了致しました。
両ブランドのお二方、ご来店いただきましたお客様、有難うございました。

ところで、イベントも後半にさしかかるころから、連日の快晴もあってかスプリングコートや春物のジャケットも気にされるお客様がちらほらと。

先日ご紹介したCURLYのTRACK JACKETは早くも完売、昨年冬に掲載されたNIKKEI STYLEの記事で一躍注目されることになったSTAC BLAZERの春モデルも巣立ち始めています。

今回はネイビーのようないわゆる一般的な定番色はラインナップ上に存在せず、よりその軽快さが引き立つ色展開となりました。

いわゆる黄土の色”オーカー”、

スコットランドの寂寥とした粘土質の荒野を彷彿させる”クレイ”、

ともに土由来の色でありながら野暮ったさはなく、寧ろ都会的と言えるまでの印象すら漂わせるのは、ケスティンの研ぎ澄まされた色彩感覚、高い技量の為せる業でしょう。

形状は前回と同じく一枚仕立てですが、

生地をしっとりとしたコットンモールスキンからハリの強いコットンナイロンに置き換えることで、ひときわ清涼な印象となりました。

ワークジャケットをベースとしているため使い勝手にも優れており、開口部を斜めに設けることで手を出し入れしやすくしたポケット、

そのままでも折っても楽しめる袖口など、

凝り過ぎず、しかし丁寧に設計されたことが随所から窺えます。

これから少しずつ陽の光も強まり、こうした彩り豊かな服が一層美しく見えるようになってきます。
目に嬉しく着て嬉しく、そんな悦びに溢れたジャケットです。

オンラインストアはこちら→ オーカー/ クレイ


袖ひちてむすびし水のこほれるを 春立つ今日の風やとくらむ ~ SOAK IN WATER

比較的温暖な横浜はこの冬まだ雪らしい雪も降ってはいないのですが、寒冷地では大いに吹雪いているようで、天気予報を見れば今が冬の盛りであることを再認識させられます。

それでも来たる雪解けの季節を想起させてくれる、そんな銘を冠したベルトがやって参りました。

当店では初登場となります神戸のベルト専業ブランド、SOAK IN WATERです。

ブランドディレクターである角本惣次さん自身の手で一本一本作り上げられるそのベルトは、新品の状態が最高なのではなく、長く使い込むことでその魅力を増して、持ち主の生活やスタイルに浸透(SOAK)していきます。

そのために用いられる素材、構造は剛健そのものではありますが、ただその骨太な価値のみに終始せず、柔和で、穏やかな雰囲気も併せ持っているのが特徴です。

専業ならではの豊富なラインナップが用意されているなか、今回当店ではまず2型を選びました。

まずは細身のNarrow Standard。

11穴のベルトホールが設けられた、ユニセックス対応のロングベルトです。

ブラックはイタリア製のベジタブルタンニン鞣し革を採用、同色のバックルにより洗練された顔つきとなっています。

一方タバコカラーのものはブラック同様イタリア製のベジタブルタンニン鞣し革ではありますが、こちらはより油分の多いバケッタ(伊トスカーナ州の伝統技法にて鞣された革)で、さらに表面を粗く加工した、名門バダラッシ・カルロ社製”プエブロ”を採用しています。

粗い質感に仕上げることでより外部の環境に反応、具体的に言えば手の脂分などを吸収しやすくなり、使用を繰り返すことによってどんどんコクのある深い艶が生まれます。

ちなみに、このベルトはオリジナルの缶に収められて販売されています。

もう一型であるSolidはもっと頑強で、男性的なベルトです。

角の立ったオリジナルの真鍮バックルと肉厚なイタリア製オイルドレザーを縫い合わせて作られています。

Narrow StandardもSolidも手縫いによって接合されていますが、こちらのSolidには複数色を混ぜ手で撚った美しい糸が用いられ、革や金具ゆえの粗野に偏らない工夫が施されました。

こちらは缶ではなく紙箱入りです。

なお、どちらもモデルにもブランド名に関連して”WATER”を彷彿させる雫型のベルトホールが開けられています。

こうしたところにも、独特のやわらかな感性が活きていますね。

いい素材を使って高い技術で作りました、決してそこで止まることのないSOAK IN WATER、是非ご注目を。

オンラインストアはこちらです→
Narrow Standard ブラック
Narrow Standard Vacchetta タバコ
Solid ブラック


桜の季節過ぎたら 遠くの町に行くのかい? ~ EEL Products/ サクラコート

お陰様で好評開催中の”靴とYシャツと私“。
漸う近づく春に向け、靴やシャツのオーダーを多くの方にお楽しみいただいています。

delightful toolオーダーの会期は終了しましたが、まだholo shirts.は20日まで承っていますので、先週末ご都合が合わなかった方もご安心ください。

さて、そんなふうにまだきりりと寒いなかでも次の季節の気配を感じつつある今日この頃、いつものあの子が帰ってきました。

お馴染み、EEL Productsのサクラコートです。

今回の限定色はどことなく夜桜の情景を想起させるネイビーとなります。

仕様は変わらず、風の冷たい春の日に嬉しいチンストラップ、

清涼感溢れる白い裏地、

表裏異なる縮率が生み出すギャップがもたらすふわりとした表情、

サクラコートならではの独自の普遍性、永続性をひしひしと感じます。

なお、今季はブランド側の意向により発注可能数が非常に限られておりまして、零細極まる当店では既存色を合わせても微々たる量しか入ってきていません。

そんな次第で、すでに今季分のウォルナットカラーは完売、ブルーもごくわずかな在庫状況となっています。

さらに今年は補充もできない状況のようですので、気になる方は是非お早めに。

オンラインストアはこちらです→
サクラコート ネイビー/ ブルー
サクラコートkodomo(子供用限定モデル) ブルー/ スミクロ


今年最初のイベントが開幕しました!

皆様お待たせ致しました、delightful toolとholo shirts.共催のオーダー会”靴とYシャツと私”が始まりました。

すでにdelightful toolの寺田さんはスタンバイ、holo shirts.窪田さんも本日16:00より在店予定です。

両ブランドの開催時期が若干異なりますので、改めてご案内を。

delightful tool
1/12~14 12:00~20:00

holo shirts.
<パターンオーダー>
1/12~20 12:00~20:00
<フルオーダー>
1/12 16:00~20:00
1/13 12:00~20:00
1/19 12:00~20:00
1/20 12:00~20:00

寒波到来であまり好天とは言えませんが、来たる春に向けて、この機会に是非ご自身だけの特別な一足/一着を。


希望の轍 ~ CURLY/ TRACK JACKET & TROUSERS

実は昨年から少しずつ入荷していた春物も、正直冬の盛りにはなかなか紹介しづらいもので、そうこうしているうちに一月も中旬になってしまいました。

心なしか一時期より陽が伸びてきています。

もうそろそろ情報解禁してもいい頃合いでしょう。

ということで2019年の第一弾、CURLYのTRACKシリーズのご紹介です。

TRACKシリーズはスウェットパーカRAFFYと並ぶCURLYの定番品(当店では初登場ですが)で、弾力性と伸縮性に富んだ東レのポリエステル糸”サモーラ”を超長綿糸にブレンドして編まれたジャージー素材で仕立てられています。

まずはTRACK JACKET。

先述のジャージーを用いて一枚仕立てされた2つボタンジャケットです。

紺ブレのようなパッチポケットに、前振り袖、袖口も本切羽(ボタンがダミーでなく開閉可能)となっているなど

オーソドックスなジャケットのディテールを採り入れ、素材の特長は活かしながらも職種によってはビジネスにも使えるほどのクリーンな一枚に仕上がりました。

このジャケットと対を成すのがTRACK TROUSERS。

1プリーツが設けられたテーパードパンツで、これもまたいわゆる「ジャージのずぼん」とは一線を画した一本です。

とはいってもフロントのスナップボタン使いなど、ただ単に素材をクラシックなものに落とし込んだだけ、に収まらない絶妙な匙加減に唸らされます。

そうかと思えばヒップポケットには生真面目に貝ボタンが使われていたり、なかなかどうして一筋縄ではいきません。

それぞれ単品でも、そしてもちろんセットアップでも着用可能です。

上下揃えたならば、先に述べたようにビジネスの場から、同窓会に結婚式の二次会など、ちょっとだけきちんとしたい、でもあまり固くなりすぎるのも、といった場面で大活躍することでしょう。

輝かしき新春を飾るのに相応しい、素敵な逸品です。

オンラインストアはこちら→ TRACK JACKET/ TRACK TROUSERS


あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

本日より今年度の営業を開始致します。

ただ、以前お伝えしましたように今年は変則的なスケジュールでして、下記の通りとなっておりますのでご注意ください。

1/2 12:00-18:00
1/3 臨時休業
1/4 臨時休業
1/5 臨時休業
1/6 12:00-20:00(以降通常営業)

それでは本年も宜しくお願い申し上げます。


作り手から知るその価値 ~ delightful tool 寺田太郎氏×holo shirts. 窪田健吾氏 対談

来たる1月12日から始まるイベント『靴とYシャツと私』、ここで中心となるdelightful toolとholo shirts.は、靴/シャツと扱うものは違えど、その価値観やスタンスがとてもよく似ています。

そこで今回、各ブランドを手掛けるお二方にお集まりいただき、その哲学やなぜこの道に至ったのかなどを対話の中から導き出してみることにしました。

ブランドや製品以上に作り手さん個人にフォーカスした対談、どうぞお楽しみください。

寺田 太郎(見出し画像・右)
1982年6月5日新潟県新潟市生まれ。
中高生の頃から革靴に興味を持ち始め大学卒業後、mogeworkshopにて2年間靴作りを学ぶ。
教育関連の会社に勤務した後、革靴のメンテナンス用品を扱う会社を経て、2016年にdelightful toolを開業。

窪田 健吾(見出し画像・左)
1986年8月15日長崎県島原市生まれ東京育ち。
高校を卒業する頃よりミシンを使いはじめ、古着の解体・リメイクなどをはじめる。
その後、大学時代も独学で服作りを続け卒業後、繊研新聞に入社。
まだまだ独学を続け、サラリーマン最終年度にエスモードジャポン大阪校の夜間に通って独学との答え合わせを試みる。
退社後、準備期間を経て2014年11月にholo shirts.として開業。

なぜ靴なのか、なぜシャツなのか。

Euphonica そもそも、なぜお二人がシャツや靴を手掛けるようになったのか、生い立ちから遡って教えていただけますか?

寺田 靴自体に興味を持ち始めたのは、たぶんぼくらの同世代のほとんどがそうだったように、90年代スニーカーブームあたりですね。
そこで靴って面白いなと思って。
ハイテクスニーカー、ナイキのバスケットボールシューズを買ったのが、自分で靴を選んだきっかけです。

窪田 最初はスニーカーからだったんですね。
そこからどのようにして革靴に?

寺田 『Boon』でクラークスやレッドウィングを知って。
当時ビルケンシュトックのパサディナが人気があってそれを買ってみたりとか。
地元の新潟から東京に出てきて三原康裕さんの靴を買ったのが高校生くらいですかね。
それからだんだんとヨーロッパの靴に興味を持って、これも高校生のとき、トリッカーズを手に入れて、そのあたりから好きなものが固まってきました。
革靴ってシンプルに不思議なもので、平面が立体になるってどういうことかなと、だんだん作る方向に興味が出てきたんですね。
ただ高校を出てすぐに職人になるとかは考えていませんでした。
大学は建築とか工学を専攻しようと思ったんですけど、数学にも興味もあったので、理工系の中から数学科を選んで。
そこから周りの8~9割が選んだように教職課程を取って学校の先生になるのではなく、大学を出た後は靴の専門学校に通って、それから学生時代にアルバイトしていたこともあって塾講師として働いていました。
でもやっぱり革靴の世界に戻ってきたいなと。
働きながら革靴を触ってきて、結局自分の欲しいものがありそうでない、だったら自分でやってみようと思って。

窪田 それで言うとぼくはシャツに行き着くまで、小さい頃からのルーツを思い返すと、あんまりないんですよ(笑)。
もちろん服は好きでしたし、いろいろ買ったんですけど、洋服ジャンキーというほどではない。
たぶん本格的に興味を持ったのも中学生の終わりとか高校生の始まりとか。
高校時代はバイトもしていなくてお金がなかったから、身の回りにあるものや現実的に手に入るものから選んだり。
それと家に母親のミシンがあったのは大きくて、もともと工作が得意だったから、父親や母親が着なくなった服なんかを改造していました。
大学も専門学校ではなく普通の四年制で英語学科に進んで、わりかし緩めの学部といいますか、きつい課題も多くなかったので、もてあました時間で服を見に行ったり美術館に行ったりとか。
そんななかどんどん服が好きになり、将来服で何か仕事したいんだ、くらいの気持ちになっていって。
『王様の仕立て屋』とかの影響もあって自分で何かやりたいなというのも。

寺田 テーラーを主題にしたまんがですね。

窪田 そう、だからテーラーに憧れたこともあったんです。
いずれにしてもまだこのときはシャツで、といった気持ちはありませんでした。
ぼくは当時ユニクロでバイトしてたんですが、そこで繊研新聞の存在を知って。
店長が読み終わったのを休憩室に置いていて、アルバイトが読むか読まないかをどう考えていたのかは知りませんが、とにかくそれを読む小僧がいて(笑)。
その後運よく繊研新聞に入社することになりました。
ひとつのメーカーにいたら知り得ないことなど、たくさんの情報を得ることができたのはよかったですね。
4年間の会社勤めのときも、学生の時ほど頻繁でないにしても自分で服を作ったりして、だんだんと、やっぱりそれを形にしたいなと思ったんです。
でもいろいろ業界の表裏を見て、これはもう、大儲けは無理だなと(笑)。
編集とかメディアの仕事を選んだだけあって人と会ったりするのは好きだったので、対面で販売できる仕事がしたかった。
それとさっき話したまんがの影響が重なって。
そこでテーラーに行かなかったというのは、普段使うものがよかったから。
スーツとなると、どうしても男性のハイクラスな方々だけのもの、となってしまって、着てもらう機会が減るなと。

寺田 すごいなって思うのは、ぼくとか井本さんがそうだったように、普通はまずこれを着てみたいという衝動があってお金を貯めて買って、やっぱり違うなってところから深みに嵌っていくものなんですけど、窪田さんの場合は洋服が好き、だから作ってみようと(笑)。

窪田 家にミシンもあるし、金もないし、作るか、じゃあ!って(笑)。
シャツだけでなく、パンツなんかも。アウターはあんまり作りませんでしたけど、裏がぼろぼろの古着のブルゾンを、なんとなく見様見真似でパターンを抜いて、生地屋さんでキュプラを買って張り換えるとか、そういうトライはしたかな。
学生の時はいろいろと万遍なく作りました。

Euphonica シャツに絞ったきっかけは何だったのでしょうか?

窪田 はっきりとは覚えていないんですけど、よく着てたからというのはありますね。
それと普通の人では面倒くさいと思われる、シャツのパーツの多さも面白いなって。
作るの好きだから(笑)。
寺田さんが自分で作る方にいかなかったのは?

寺田 比較的手を動かすのは好きで、実際得意な方でもあるものの、靴を作り続けてそれを生業とするにあたり、求められている能力が違う気がして。
専門学校のときに気づいたんですが、靴職人として大切なのは、作り続けて、自分で納得できないところを常に修正して、それを続けていく根気なんです。
でも、ぼくは単純に飽きっぽい(笑)。
ただやっぱり靴は好きだし、自分の欲しいものを形にしたかったので、環境を整えながら今のスタイルになっていきました。

窪田 型を決めてブランドとして販売するのではなく、オーダーにしたのはどういう経緯があったんですか?

寺田 既製品だと、完全に満足できるものがなかなか見つからないんです。
いい素材、つくりでとなると価格は最低でも5~6万するのに、さらに履き心地、足との相性などの要素があって、それが自分にとって当たりとは限らない。
で、合うものを探しているうちに3足目となったら15万、手頃な価格のオーダーが見えます。
そんななか注文靴を作っているブランドは増えてきていたんですが、それも自分の中でイメージする靴とずれがある。
また、自分自身の足がそこまで難しいタイプではないので、靴を作るにあたり木型を一から起こす必要も感じませんでした。
金沢にKOKONさんという、工場を動かしてパターンオーダーよりももうちょっと踏み込んだ調整ができる靴屋さんがあって、その手法がヒントになりました。
実際フルオーダーであれば何でもできるかといえば、価格的な問題もあるし、意外と完成形とイメージとのずれも起こりやすい。
仕組みを簡略化することで実は逆にできることがあると気づいたんですよね。
革靴って、ちょっとのめり込むと「こうでなければいけない」がたくさん増えてきて、それを超えると「これでもいいんじゃないかな」と落としどころが見えてくる。
既製品でもなくフルオーダーでもなく、ただのパーツを組み合わせるパターンオーダーでもない、工場を動かすだけじゃなくて自分の手も携わっているからできる範囲はもうちょっと広い。
というのがぼくのなかでは丁度いいと思ったんです。

高級品を目指さない理由。

Euphonica シャツにしても靴にしても、オーダーなんて特にそうだと思うんですが、もっと高級な路線もあるなかで、敢えてそこを目指してはいないんですよね。

寺田 でも、簡略化、簡素化しすぎるのもよくなくて、となると日常使いと言いながら、実は価格帯としては決して安くできないんですよ。

窪田 そうなんです。自分たちでも日常で使う道具、と言いつつも、高いよね、って(笑)。

寺田 素材や作りを考えれば妥当な価格設定にしているはずなんですが、絶対的には安くない。

窪田 ただ、それこそ超高級な200番手300番手といったすごく細い糸を作ったドレッシーな、一回着たら剣先どうなるのって心配になるような(笑)生地を使う方向もあったかも知れない。
でも、そもそもぼく自身が服を着るときの扱い方に沿っていくと、あんまり毎回クリーニングに出してっていうのも生活スタイルに合わないし、洗って綺麗に干したら着られる、ちょっとスチーマーを当てて整える、くらいがいいので。
だから自分としては超高級な5万も6万もするシャツを着る生活が想像できなくて。
高いかも知れないけど、まだ2万くらいなら洗濯機ネットに入れて干して着る、というのが気持ち的に追いつくかなと。

寺田 日常使いのための身体性は意識して、ストレスなく使えるようにしています。
オーダーの世界って、シャツにしても靴にしても、スーツのときとか、ドレスシューズが中心で、日常生活に落とし込むと、意外にやっている方が少ないんですよね。

窪田 やっている方がいないというのは気づいていて、なぜだろうかと考えると、オーダーのシャツって、カジュアルに落とすと、解釈が拡がり過ぎて面倒くさくなるんですよ。
決まった型をベースにして、というパターン化がしづらい。
しかも男女も着られて普段着、となると可能性が無限となっちゃうんです。
だから効率化がすごく難しくなってビジネス的に楽じゃない(笑)。
「ああ、やる人いないのはこういうことか」ってやりながら納得してます(笑)。
でもやっていくなかでお客様の傾向とか体のデータとかを蓄積できたので、今回パターンオーダー、形を決めてサイズや生地を選んでというのを始められたんです。
こっちはどちらかといえば体に合わせるというよりは着こなしてもらう、となるんですが、でもひとつの提案として、お客様にとってよいたたき台になるかも知れないと期待しています。

寺田 フルオーダーのいいところって自由度が際限なく拡がることですが、それゆえに収拾がつかなくなりがちで。
革靴をたくさん履いてきて、知識もあって、ほかでもオーダーをしてきた方ならできても、逆に言えばそれくらいオーダーする側に知識や経験が必要になってしまう。
だからそこまで範囲を拡げず、でも最初から足が当たって痛いところとかはあまりコストに跳ね返りすぎない程度に調整できたほうがいい。
型はある程度絞って、完成形をイメージしやすく、フィッティングに関しては可能な範囲で対応する、そうやって拡げられるところと狭めるところを意識しながら探っているところです。

窪田 今ぼくが履いている靴をお願いした時、けっこういろんなことができるなと思いました。
フィッティングは寺田さんに漠然とした感覚を伝えながら基本お任せして、見た目に関してはステッチを大きくしてカジュアルに寄せたりとか、そうした求めるものをイメージしながら相談したり。

寺田 現状オーダーいただいている方は、もちろん靴好きな方もいらっしゃるのですが、意外と初めて買うちょっと高価な靴がうち、という方も多く、それだと当然何もわからないわけです。
そのなかで出来る限り長く履いていただける一足を作るために、こちらの持っている知識を伝えながら、ご自身の好きなものやこうしたいというポイントを引き出して形にしていきます。

窪田 シャツのフルオーダーでも、慣れている人はいるにはいますが基本的にはお客様はオーダーするのが初めてという方が多いので、選択肢を絞りつつ、ハイ決めてください、ではなくて、これならこう見えますよとこちらも意見を出して、一緒に決めていく方法をとっています。

寺田 価格だけでなくそういう部分を理解していただけているのは有難いですよね。
敷居を下げるのはすごくオーダーに於いては大事なんですけど、下げ過ぎるわけにもいかず。
窪田さんのなかで、オーダーの敷居を上げすぎず下げすぎず適度なところで抑えるために意識していることはありますか?

窪田 うーん…雰囲気作り(笑)。
それはウェブサイトもそうだし、お店を構えているわけではないので、入り口として、オーダーだけどこんな雰囲気というのを伝えられればなと。
いかつく、技術を前面にゴリゴリ押し出して、にはしたくないですね。
オーダーは難しくて怖いものではないんですよ、と言葉で伝えていくというのは常に意識しています。

寺田 窪田さんはtwitterでもふだんの生活をつぶやかれていますし、一緒に活動されている仲間も飲食だったりイラストレーターさんだったりと、そういうところが一消費者の目からすると親しみやすいですね。

窪田 だれかと一緒にやるのも、結局オーダーしてくれなくてもこういうことやっている人がいるよと知ってもらうためで、次に偶然近くで受注会があれば思い出して行ってみようかなと思ってくれればくらいに思っています。

寺田 計測とかフィッティングだけでOKですよと言っても、どうしても頼んだ以上はオーダーしないといけないと思われがちですので、そのハードルは下げたいですね。
まずは活動を知ってもらうのが大事なことだと思います。

窪田 やっていることがニッチなのは自覚しているので(笑)。
知ってもらうことの大変さは常に常に感じています。
しっかりした店構えがあるわけでもないし、ロールモデルはいないし、やってること自体一般的に理解してもらいづらいですからね。
このスタイルであるからには地道にやっていかないといけない。だからいろんな入り口を設けています。

Euphonica 知らないものにお金を出すのが怖いという方は多いですしね。

寺田 知らないものにお金を出す、しかも安くない、さらにオーダーで。
だから活動を始める前に有名なところできちんと研鑽を積んできました、というのはお客
様を納得させる、安心していただくためのやり方として理に適っている、でもぼくらはそ
ういったやり方ではない。
同じオーダーでありながら、少し世界が違うのかも知れません。

窪田 オーダーの靴の世界で横の繋がりってあるんですか?

寺田 繋がりはありますね。
狭い業界ですから、一人くらい介せばだいたいだれかしらには繋がるんです(笑)。

窪田 いやあ、自分には全然いないなと思って(笑)。
ファッションの世界にも知り合いいないし、オーダーの世界にも繋がりがなくて。
活動の仕方も特殊なので、同業者からも「何やってるのかちょっと理解できない」と思われたりしてるんだろうなと(笑)。
でもやっていることに関しては自信がある、というか、信じられる。こういうのが存在していて、悪いことはないんじゃないかなと。それを求めてきてくださる方はいるし、だから続けたい、続けようと思っています。

サンプルの役割。

窪田 ところで、靴だと、初めてオーダーされるお客様ってやっぱり緊張される方が多いんですか?

寺田 自分のアトリエに来ていただける方はある程度知識があって、かつ下調べされているので、実はお互い身構えることはそんなにないんです。
ユーフォニカさんのイベントだと、なんとなくオーダーってどんなのかなと興味があって、あとはたいていの方は井本さんから話を聞いているので、それで事前にある程度情報は持っているようですね。

Euphonica いつも置いている既成ラインの黒いプレーントウで履き心地のよさを知って、それでオーダーにご興味を持っていただける方は割合として少なくないんですよ。

寺田 見た目がよくても履いて歩いて、からスタートですから、足に合わない、硬い、それで買うなんて選択はよっぽどのブランド力がないとあり得ません。
まずは履き心地で納得していただくために、フルサイズのサンプルシューズを用意しています。商品のご試着だと、やっぱりお客様の方でも気を遣ってしまいますので。

窪田 ぼくはサンプル的なものがない状態で4年くらいやってきましたが(笑)、それでやってきたという自負のある反面、今まで皆さん不安だったんだろうなとも思います。
服屋さんで受注会がほとんどなかったのも、そういうところに理由があるのかなと。

寺田 完成形の見える安心感というのはありますね。

窪田 お薦めしやすいですしね。

Euphonica 実際、フラッと来て採寸するというのも勇気が要りますよね。

窪田 「これから一時間いただきますよ」って (笑)。
だからちょっと試着してみようかな、くらいのノリが、さっき話したように知ってもらうために大切なのかなと。それから「こういうのが欲しいんだよね」とフルオーダーに繋がるかも知れない。
やっと準備できたので、今回皆さんに試していただけるのが楽しみです。


年末年始の営業について

先ほど告知しました来年のイベントも実際そんな遠い話ではなく、気がつけば今年は残りわずか。

ということで、遅くなりましたが年末年始の営業日についてのおしらせです。

今回はちょっと変則的なスケジュールとなっています。

12/30(日) 12:00-20:00 (年内最終営業日)
12/31(月) 休業

1/1(火) 休業
1/2(水) 12:00-18:00
1/3(木) 休業
1/4(金) 休業
1/5(土) 休業
1/6(日) 12:00-20:00(この日から通常営業開始)

オンラインストアは年中無休でご利用可能ですが、出荷のスケジュールは下記の通りとなります。

12/28までのご利用→ 12/29出荷可能
12/29~1/6のご利用→ 1/7以降の出荷 

わかりにくくて申し訳ありません。どうぞ宜しくお願い致します。


靴とYシャツと私

メリー・クリスマス

ご好評いただいた『男には自分の世界があるPt.3』も無事幕を閉じ、気がつけば来年の姿はすぐ眼前に。

さて、イベント終了し早速ではございますが、次のイベントの告知です。

来年1月12日より14日まで、5回目となるdelightful toolのオーダー会を行います。

店頭にてディレクターである寺田さん自ら足を計測し、フィッティングサンプルを試し履きして微調整すべき箇所をチェック、用意されたデザインパターンをベースにオーダーとなります。

価格は靴底を接合する製法によって基本2パターン。
・ マッケイ製法 ¥70,200(税込)
・ 9分仕立て ¥97,200(税込)

ここに下記オプションをつけることもできます。
・ ブーツ化 +¥5,400(税込)
・ メダリオンの追加 +¥2,700(税込)
・ 親子穴を全体に追加 +¥4,860(税込)

靴底の種類など素材による価格の上下は原則的にはありません(ただし、アッパーの革によっては一部差額が発生します)。

だいたい靴の完成までに3ヶ月程度頂戴しております。
タイミングとして、新年度の一足としてフレッシュな気分になれそうです。

店主は以前オーダーした靴の調子があまりにもよく、先日FACYの記事でも紹介させていただきました。

確実に深く愛せる特別な一足を、是非この機会に。

…と、いつもならここで終わるところですが、今回はひと味違いまして。

靴だけでなく、シャツまで一緒にオーダーを楽しめてしまいます。

当店初登場、holo shirts.(ホーローシャツ)のご紹介です。

デザイナーであり作り手である窪田健吾さんが、店舗を持たず放浪(holo)し、ホログラム(holo-gram)の如く立体的で、琺瑯(holo)のような温かみと清潔感のあるシャツを、ひとりひとり採寸し、オーダーメイドで製作しています。

ただいきなりシャツをフルオーダーできますよと言っても、人によっては敷居が高く感じられるもの。

そこで、今回は新ラインであるパターンオーダー “m.d&n”も登場。

こちらはholo shirts.が蓄積したオーダーのデータを基に設定した一型のみで、店頭のサンプルをお試しの上XS~Lの4サイズから選択、そして膨大な見本から使用する生地をお選びいただく、という流れとなります。

フルオーダーより気軽に味わえるだけでなく、シャツ自体も力の抜けた、日常使いに適したほどよいラフさ加減が持ち味です。

なお、今回は当店限定の襟型もご用意していただきました。
基本の形に較べ、襟自体が小さく、先の角度の開きが大きめです。

実は店主、ひと足お先に一着作っていただきまして、それがこちら。

生地はholoさんオリジナルのチェック柄。
独特の上品な配色は季節を選ばず、コシとハリが強い質感で、長く着込んでいけそうです(何度か着てしかも洗い晒しゆえ、皺が多少目立つのはご愛嬌)。

当然襟は当店モデルでお願いしました。
通常モデルのサンプル(白)と比較すると、そのコンパクトさが伝わるかと思われます。

気になる価格はセミオーダーのシャツにして驚きの¥19,440(税込)~。
使用する生地によって価格が異なりして、ご参考までに、店主オーダーモデルは¥24,840(税込)となります。

状況にもよりますが、こちらも納期は3ヶ月程度とお考えください。

会期はdelightful toolより若干長く、1月12~20日。

なかでも下記日時はholo shirts窪田さんが在店し、前述のフルオーダーも承ることができます。

1/12 16:00-20:00
1/13 12:00-20:00
1/19 12:00-20:00
1/20 12:00-20:00

m.d&nは型が決まっているためこまかい採寸の必要がなく(各サイズの試着用サンプルを店頭に並べます)、会期中通してオーダー可能ですので、こちらをご希望の方はいつでもお越しください。

新年早々ワクワクするイベントとなりそうで、今から楽しみです。

皆様のお越しをお待ちしております!