すでに告知しておりますように、今週末は長野・諏訪のポータリーにて出張ユーフォニカが開催されます。
そのため、今週金曜から日曜(3/21~23)の3日間にわたり、仲町台の実店舗は店休日となりますのでご注意ください。
(なお、オンラインストアのご注文は店休期間中でも平常通り承ります。出荷は週明けとなりますこと、ご了承願います)
ご不便をおかけしますが、どうぞ宜しくお願い致します。
その植物が生い茂った建物の中で、とある一家が先祖代々暮らしています。
彼らのご先祖様は、自分たちがリラックスするために鼻歌をうたっていたところ、それが植物にとってもよい効果があることに気づいたそうです。
やがて鼻歌は植物のためにうたわれるようになり、演奏を伴う花唄へと変わっていきました。
いまここに住んでいるのは、5人です。
おばあさん、お父さん、お母さん、そして娘と息子。
彼らはここで植物を管理し、ときに花唄を演奏したりして暮らしています。
けれど、奇妙なことにこの建物に人の気配は感じられません。
彼らは、自分自身が元気のないときには、植物になりすましてそのなかに身を委ねます。
その時間が次第に長くなるにつれ、いつしか彼らが帯びる人としての気配までもが消えてしまったとか。
而して、ここは植物が音楽を奏でる不思議な建物として知られるようになりました。
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ASEEDONCLOUDの2025SSコレクション”shokuonshitsu”(植音室)は、かくも映像的な物語です。
緑生い茂る仲町台に暮らしているとついそれが当たり前のような感覚になってしまうのですが、植物の豊かな環境には、人心を落ち着かせてくれるような何かがあります。
昨年からの出張ユーフォニカで全国各地を廻ってみると、人の暮らす空間とこれほどまでに緑が密接な場所というのは意外とないものだと気づかされます。
さて、それ以上に緑豊かな家に暮らす植物一家でさえ、心安らげるために植物の中に身を委ねるとのことですが、かくの如く植物になりすまし、同化するには、服の力も助けとなります。
Assimilate plants coatは、園芸用の作業着であり、そのまま植物と溶け合うように同化できるコートです。
言葉を介さず目を惹くこの美しい生地は、ASEEDONCLOUDの人たちが実際に植物を生地に置き、木槌で叩くことで色素を転写させ(叩き染めと呼ばれる手法です)、それを柄としてプリントするという、実に手のかかった手法で生まれています。
コートではありますが厚みを抑えた清涼なコットンリネンにつき、春先の防寒着というよりも、春本番から初夏にかけて活躍します。
実際、植物が緑豊かに茂るのもそのくらいの時期からですものね。
この部分の紐をループ状に結んでおけば、園芸作業時に草木や花を襟元にまとめておくのにも使えます。
また、朽ちた草花もひとまず左胸に挿しておけるよう設計されています。
体全体で植物に擬態できるようたっぷりしたボリューム感のコートゆえ、そのまま着ると園芸作業時には少々邪魔になりかねません。
そのため、裾をコンパクトにし足さばきを楽にすべくドローコードが通されています。
趣味性が強いようで、目的に対し実用面も真摯にデザインされたコートです。
こちらは男性用のサイズを仕入れました。
植物と同化したい女性には、ワンピースをご用意しています。
生地の涼しさをより活かし、より暖かい時期、いな暑い時期に適した一枚です。
こちらも植物の中に溶け込めるよう体を包み込む生地使いをしていますが、肩のギャザーや
裾の両脇に深く切り込まれたスリットといった意匠が、土臭い野暮ったさを打ち消し、とても優美な印象を生み出しています。
共生地のウェストベルトを通す腰のループは上下2段に設けられていますので、この位置を変えてベルトを通すことで全体の印象にも変化をもたらすことができます。
コートもワンピースも、実際に植物の中に入らずとも草花に包まれているかのような心持ちになれそうですね。
もとより、「くもにのったたね」の名の如く、植物には縁の深いアシードンクラウドです。
オンラインストアはこちらです→ Assimilate plants coat/ Assimilate plants dress
本日3/14はホワイトデーですが、なぜバレンタインデーのチョコのお返しをする日が「ホワイト」デーなのか、いままで一度も考えたこともなかったことにふと気づきました。
このくだりに矢鱈とボリュームを割くのもナンセンスでしょうし、どうも諸説あるみたいですから簡単に記しますと、軽く調べたところ「バレンタインチョコにお返しがないのは不公平だ」との声からお菓子屋さんがマシュマロを用意するようになり、そのマシュマロの白のイメージからそう呼ばれるに至っったとか。
「白は純愛のシンボル」だなんてRomanticな話もあって、そんなわけでこの純愛の白い記念日に、白いシャツをご紹介することにします。
それもただの白シャツではありません。
このたびデビューしたばかりの新星ブランドの記念すべき一品目であり、そしてそのスタンスを明確に体現した白シャツです。
すでに当たり前とされているものごとに対して”Why it?”と問い、新たな視点、姿勢からの再生を試み、そしてその響きが示す通り、Whiteをプロダクトの色軸に据えてミニマリズムと実用性の共存を目指すレーベルです。
このデビューコレクションも、白いシャツと白いTシャツのみという徹底ぶり(Tシャツは後日入荷予定)。
シャツはナロータイプとワイドタイプの2種がありましたが、当店では今回ワイドタイプのみをオーダーしました。
コンパクトヤーンを使用し打ち込み数を通常より少し増やして織り上げたブロードの生地は、なめらかな肌触りと美しい艶、そして気兼ねなく使える耐久性を備えています。
洗いざらしでも雰囲気が出る生地ですので、気分や装いに合わせてアイロンをかける/かけないを使い分けるのもよいでしょう。
実は本来このシャツで使われているのは透明度の高いプラスティックボタンなのですが、当店としてはこの生地の品質の高さに合わせてシャツ自体のグレードを高めるべく、ブランドのデビュー作なのにあつかましくも別注という形で、前立てとカフスのボタンを高瀬貝のものに変更していただきました。
シャツ自体をじっくり眺めてみると、襟の大きさや角度、カフスの形状など、これ見よがしでなくとも、細部に亘り入念にデザインされていることが判りますね。
なお、縫製は技術力に定評のある佐賀の唐津シャツ工房が請け負っています。
さてここまでがこのシャツの大枠の話。
実は単にシンプルで上質なだけでなく、面白いギミックが仕掛けられていますので、引き続きご覧ください。
ここまでの説明に挿みこまれてきた画像をご覧になって、観察眼の鋭い方はもう気づかれたかも知れませんが、襟の裏と袖口の裏に、ひっそりと共生地のパーツが重ねられています。
このパーツはボタンによって留められているため、取り外しも可能なのですが、
シャツ、なかんづく白を着ているとどうしてもだんだん気になってくるのが、襟裏と袖口の皮脂汚れです。
こればかりは、どんなに日頃から身体の清潔を保っていても、完全に防ぐことはできません。
そこで汚れやすい該当部分にこのパーツを重ねることで、シャツ本体への汚れの付着を軽減します。
最前線で汚れてしまったパーツも、取り外してここだけしっかり洗ったり漂白することが可能です。
実用品として白シャツをとらえてみれば、実に合点のいく仕様ですね。
実は二重構造になっていて、奥(体の側)は眼鏡やサングラスを収めるためのポケットとして機能します。
画像では判りやすいようはみ出させていますが、実際はたいていのアイウェアであればすっぽり収まる大きさです。
さて、胸ポケットにサングラスなどを入れていて、うっかりしたはずみで落としてしまった経験のある方は少なくないのではないでしょうか。
そこもじゅうぶん意識した設計で、裏から見るとポケット自体が斜めに。
垂直に入れるから垂直に落ちやすいわけでして、この形状であれば不意の事故で涙を飲むリスクも抑えられます。
と、プレーンな白シャツでありながら語りどころの多い一着です。
男女問わず多くの方にお召しいただきたく、女性にもお薦めしやすい最小サイズから、大柄な男性でも対応できる最大サイズまでご用意しました。
意外と選択肢が多いようで限られている白いシャツ、しかも「見たことがない」ようなものとなるとそうそう見つかりません。
しかも拠点である福岡の2店舗以外でこのブランドを取り扱っているのは、現時点ではなぜか当店のみと聞いています。
春はシャツの出番も増える季節です、この機会に是非一度お試しを!
オンラインストアはこちらです
3/15(土)は、法事のため臨時店休日となります。
ご不便をおかけしますが、どうぞ宜しくお願い致します。
「観る人の思考を促す」を目的とし、プロダクトをただファッションとしてのみならず、問題提起をする媒介としてもとらえ、発信するbeta post。
決して万人好みではないかも知れません、しかしそのオンリーワンの着眼点と、単なるネタに終わらないものづくりは、ゆっくりと、けれど確実に理解者を増やし続けています。
「戦争」をテーマとした昨年秋冬のコレクションは、当店のお客様方からも絶賛を浴び、このブランドがさらなる高みへ進んだことを感じさせるものでしたが、春夏・秋冬の2期に区切った一般的な年間スケジュールでの制作に一度区切りをつけるポイントでもありました。
もちろんそれはブランドの終了を意味しません。
より丁寧に時間をかけて、いわゆる「シーズン」やトレンドに大きく左右されないデザインを追求すべく、このたび”Issue 1″として新たなテンポでリスタートします。
今回のテーマは「サボる」。
いろいろ言いたいことはあるものの、手始めにブランド公式の文章を引用します。
「サボる」とは、仕事や義務から意図的に離れて、自分の時間を確保する行動を指します。
この言葉は、怠けたり、真面目に取り組まない行為としてネガティブに捉えられることが多いですが、その背景には、休息やリフレッシュ、あるいは自己充足のための時間を意図的に確保しようとする積極的な動機が存在することもあります。サボることで得られる「暇」は、ただの無為な時間ではなく、創造性をはぐくむための大切な時間をなり得ます。忙しい日常から意識的に離れることで、新しい視点を得たり、深く考える余裕を持つことができ、結果的に自己のバランスを取り戻し、長期的な生産性や創造性を向上させるための重要な行動を捉えることができます。
……ポジティブ!
豆知識的な話をすれば、「サボる」の語源であるSabotageはフランス語で「破壊活動」を意味し、労働争議の一環として行われる機械設備の破壊行為をサボタージュと称したことから、だんだんと意味が拡がり、「怠ける」行為も含むようになって、いまに至ります。
というわけで原義的には少々物騒なニュアンスを内包した言葉ではあるのですが、言葉とは変わっていくもの。
ひとまず我々はbeta postによって再定義された「サボる」を念頭に置いたうえで、このジャケットを見ていくことにしましょう。
いかにも「サボり」そうな、とろん、としたジャケットです。
リネンを混ぜたレーヨンの生地は、きちんとアウターたり得る適度な厚みとともに、軽さと柔らかさも備えています。
付属のウェストベルトは、しっかり腰に巻くもよし、背面でそのままにするもよし、どう使うかは着用者の裁量に任されます。
ボタンは、アルミの削り出し。
beta postではおなじみですね。
袖口にはスナプボタンが設けられ、締まり具合を調節することができます。
さて、ここまでの説明に留まれば、「サボる」雰囲気のジャケットなのですが、もちろんbeta postがここで完結させるはずもありません。
まるでミトンのような…。
……。
そう、このフラップはミトン状のハンドポケットでもあります。
ここで、先日ご紹介したHandwerkerのHW handsfree jacketを思い出してみてください。
HW handsfree jacketは、脱いでいる状態での「手ぶら」の実現のため、内側には肩掛け用の紐を設けています。
つまり、ワークジャケットとして両手が自由に使える状態を保つのはとても重要であるということです。
言い換えれば、ポケットに手を突っ込む行為は手を使えなくさせ、「ワーク」からの離脱を意味します。
というわけで、ポケットに手を突っ込んで「サボる」べく、この仕様が生まれました。
残念ながら、我が国の労働生産性の低さはよく指摘されるところ。
それは末端の労働者が怠惰だからというより、付加価値の軽視、不適切な評価制度、現場の長時間労働に頼る人員配置など、マネジメントや組織の構造に因るところが大きいと云われています。
システムにしたって人間にしたって、冗長性がないと不測の事態には対応できないものですし、ギチギチと言われたことをまじめにこなすばかりが正しいとは限りません。
ほんとうに望ましい結果を得るためには、ひとりひとりが適切なタイミングで適切にサボることだって必要かも知れませんよ。
オンラインストアはこちらです
昨年夏にデビューを飾り、大好評をいただいた新進ブランドTHINKWOOL。
ブログだけ遡って見るとTシャツ一型しかないようですが、実は秋冬はオンラインストアなどに上げる前に店頭で巣立ってしまったものが多く、単に世に披露する機会を逸してしまっただけだったりします。
さて、今季はそうならないよう、入荷早々にご紹介を進めていきますよ。
まずは暖かくなってくれば活躍の機会も一気に増えてきそうな、長袖ポロシャツを。
MESH POLO SHIRTSの名が示す通り、独自に開発されたメッシュ生地で仕立てられています。
メッシュの服、というとともすればジャニーズアイドルのセクシーすぎる衣装を想起してしまいがちですが、これが着てみるとほぼ気にならないくらいに透けが目立ちません。
THINKWOOLの服の大きな特徴のひとつが、この生地です。
ウールの長所と短所、化繊の長所と短所を掛け合わせ、それぞれの欠点を補いながら良い部分だけを引き出す素材作りは、さすがウールの専門商社とアウトドアウェアメーカーが関わっているだけあります。
このメッシュも、メリノウールの優しい肌触りや抗菌消臭性、ポリエステルの速乾性や強度を兼ね備えたハイブリッド素材。
何となくのイメージとして、メッシュと聞くとスースーしすぎる気がするかも知れませんが、この構造が空気を蓄え、ウールの特性も相まって心地好い温度を保ちます。
もちろん通気性は高いわけですから、気温の高いときや体を動かしたときなども、しっかりと蒸れを防いでくれます。
前立ての開きも深めに設定されていますので、スナップボタンの留め具合でも暖かさを調節できます。
お次にご覧いただくのは、ワイドテーパードシルエットのパンツです。
こちらは乾いた質感のリップストップクロスが用いられていますが、なんとこの生地にもウールが配合されています。
経糸にペットボトルを回収して生成されたリサイクルポリエステル糸、緯糸にはメリノウールとリサイクルポリエステル混紡糸を配して高密度に織り上げているため、強度が高く、速乾性に優れ、また抗菌消臭性も備えています。
さらに、表面にはフッ素をふくまないC-zeroタイプの撥水加工を施しており、雨天時にも心強い一本です。
パンツ自体を見てみると、ドレッシーな2プリーツのスラックス調のデザインに、アウトドアウェアのディテールがひっそりと仕込まれていて、たとえばハンドポケットはメッシュの内袋にすることでベンチレーションの役割も果たし、またファスナーにより中に入れたものが落ちづらくなっています。
ウェストの内側にはドローストリングが通っているため、ベルトを使わずともしっかりとウェストに固定できます。
ポロシャツ、パンツ、どちらも日常使いはもちろんのこと、職種によってはビジネスの場でも、さらには出張、旅行の伴としても大活躍してくれることでしょう。
高い機能は捨て難い、でも都市生活の場でちょっと浮くような野暮ったい服は着たくない、そんな無いものねだりを無いものねだりでなくしてしまう、それがTHINKWOOLです。
オンラインストアはこちらです→
TW MESH POLO SHIRTS LS/ ブラック
TW SHOWERPROOF PANTS/ ブラック
ASEEDONCLOUDのワークウェアラインHandwerkerが、今季10周年を迎えたそうです。
気がつけば当店とアシードンクラウドとのお付き合いもそれなりに長くなりまして、もう8年目になるのですが、ちょうど取り扱いを始めた最初のシーズンにスタートしたのが、Handwerker Laboratory(特定の職業・職人にフォーカスし、特別にデザインされたシリーズ)でした。
その試みだけでも面白いなと思ってはいましたが、各モデルは、ヒアリングを行った相手のもとでも実際にワークウェアとして使われ、良かった点や改善するとさらに良くなる点などリアルな意見がフィードバックされてきたそうです。
そうして現場で着込まれた服が、ブランド発足10周年を迎えるにあたり、それぞれの持ち主から一度まとめて戻されました。
そしてこの蓄積されたアイディアが、次の10年に向けてのステップとなります。
今回の新作は、2019SSに発表されたHW editor’s jacketをベースに、
2020AWのHW wood worker’s blousonのディテールを合体させたジャケットです。
軽くてタフなコットンナイロンのウェザークロスと
洗いを掛けた風合い豊かなリネンの生地、
2種類の素材をご用意しました。
極力ポケットの存在感を抑えることで見た目はすっきりとしていますが、
外側からも内側からも出し入れ可能なA5ノートが入るメインポケット、
携帯電話などが収まる小ポケットなど、充実した内ポケットにより、収容機能はしっかりと満たしています。
これらの外見やポケットは、雑誌編集者用のワークジャケットであるeditor’s jacketを踏襲しています。
そして腕を前に出したときの可動域を広くとったセットインラグランスリーブは
木工職人用ブルゾンwood worker’s blousonのために考案されたパターンです。
もちろん、こうした過去のデザインの掛け合わせだけでなく、新たなアイディアも追加されています。
いままでさまざまな職業のためにワークウェアをデザインしてきて、ほぼ共通していたのが両手が自由に使えることの重要性だったとか。
当然といえば当然とも言えますが、しかしたしかに決して見落としてはならない部分です。
ジャケットという服の性質上脱ぎ着する機会が多いことにも着目し、脱いでいる状態での「手ぶら」の実現のため、内側には肩掛け用の紐を設けています。
留め具はマグネット式で、簡単に留めたり外したりすることができます。
肩掛け機能を使わないときや、紐が煩わしいときは、留め具を外し、内外紐の部分を先述の内ポケットに収めておくことも可能です。
見れば見るほどよくできた服です。
まさに、10年目の歴史の蓄積があってこそ生まれた逸品と言えましょう。
コットンナイロン、リネンともに、一般的な男性のMサイズに該当するMサイズと、女性や小柄な男性でもお使いいただけるSサイズをご用意しました。
3月に入れば、いよいよ春らしさが加速しはじめます。
気兼ねなく使える日常の相棒として、是非お選びください。
ほぼちょうど一年前、KIMURA初のコートとして登場したBelgian Linen/Egyptian Cotton_Coat。
服の完成度は言うまでもなく、当店のみの展開だったこともあり、お客様からの反響はそれはもうたいへんなもので、シャツブランドとして長く活動してきたブランドの歴史にとっても重要な転換点でした。
そんな傑作が、生地を変えて再び登場。
初代は生地名を商品名としていましたが、今回からは形状をもとにして、bib pocket coatと改名しています。
もちろん二代目の生地もKIMURAクオリティ。
コットンリネンのムラ糸を用いた平織生地は、同じインディゴでもデニムとはまた違う風合いが愉しめます。
なお、インディゴの経糸は、薬剤の使用を抑え、生産工程で二酸化炭素の排出を軽減したエコロジカルな手法で染められているそうです。
着込んで生地の風合いが変わっていったときも美しい調和を見せてくれそうです。
コートには珍しく台襟を設けている襟に、シャツとともに歩み続けたKIMURAの歴史が反映されています。
一般的な内袋つきのポケットでもなく、いってしまえば一種のパッチポケットではあるのですが、そのパーツ自体で前身頃のほとんどが占められ、なおかつポケットが上下で分割されることで左右2つずつの計4つになるという、文章で説明すると何が何やらな構造となっています。
このように、ぱっと見はそこまで変わった服ではないようで、実はたっぷりKIMURAフレーバーなコートなのでした。
不思議なことに、今回もこの型は当店だけの展開だそうです。
気になる方はお早めにどうぞ!
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Gジャンは、意外と着る人着ない人がはっきり分かれるタイプの服です。
とくにアメカジ色の薄い当店では「着ない」派のお客様が多く、なおかつ店主自身がこれだというものにも出会えていなかったため、開店以来長きにわたって展開していませんでした。
2021年にその状況を打ち破ったのがJeanik。
長年来の「着る」派も唸らせる高いクオリティ、そして「着ない」派(それは店主自身も含まれていました)でさえ着たくなる絶妙なデザインバランスを兼ね備えたGジャンは、いまや当店では不動の定番です。
代表モデル#0102はその人気ゆえ毎度すぐに完売してしまい、このたびもしばらく欠品状態が続いていたのですが、ようやく再入荷となりました。
そして同じ型で、デニムではなくピケ(ベッドフォード・コード)を使った新作も登場しています。
ピケはコーデュロイに少し似たような畝(厳密にいえば元来は横畝のものをそう呼ぶのですが、いまでは縦畝が一般的です)をもつ生地で、からりとした肌触り、そしてピンとしたハリを備えています。
さっぱりした風合いながら、密度が高くしっかりとした厚みもありますので、まだ気温の上がりきらない春先から活躍しそうです。
1950年代につくられていたリーバイスの507xx(通称”2nd”)をベースにはしていますが、レプリカに甘んじることなく、武骨な要素を徹底的に排除し、まったく別物として着地させています。
予め立体的につくった袖を本体に後付けしており、(ハンガー吊りだと少々判りにくいかも知れませんが)肩から鋭角的に落ちるシルエットが何とも美しく、そのすっきりした見た目の印象と快適な着心地のギャップも持ち味です。
運針が細かいステッチはパーツの際に沿って丁寧に走り、服全体の印象をさらにシャープに引き締めます。
Gジャンにしてもジーンズにしても、ブランドの銘や何かしらの文言などがボタンに刻印されているのが一般的ですよね。
しかしJeanikではそうした慣習に囚われることなく、虚飾を削ぎ落しに削ぎ落しきったボタンを用いています。
人によってはあまりにも素っ気なく見えてしまうかも知れませんが、少なくとも当店のお客様からは「余計なロゴが入っていなくて素晴らしい」と大好評いただいているポイントです。
デニム、ピケとともにM・L2サイズをご用意しました。
どちらにもそれぞれの魅力があり、甲乙つけ難いところですので、可能であれば是非一度店頭にてお較べください。
オンラインストアはこちらです→
0102 2nd Type Denim Jacket/ インディゴ
0102 2nd Type Pique Jacket/ ブラック
当店のすぐ近く、せきれいの道沿いに、建築家の横河健さんが設計した建物が佇んでいます。
仲町台近隣の方なら、「FRESCOさんの建物」といえば伝わりますかね。
きわめてモダンであるにもかかわらず、のどかな片田舎である仲町台の緩やかな空気を壊すことなく、景色の一部として溶け込んでいる、実に素晴らしい建物です。
数年前まで、横河さん自身も長らくこの上階に事務所を構えていらっしゃいました(いまは東京に移転し、元事務所はフランスの会社のオフィスになっているようです)。
お話を伺ったのも10年ほど前ですので、だいぶディテールは曖昧になっているものの、以前この建物についていろいろと教えていただいた際、「ランドスケープの一部としての建築」という視点をとても大事にされているのがとても印象的でした。
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横河さんの著書『美しい住宅へ』を繙いてみますと、その考え方が随所に述べられています。
仕事の依頼があっても、ここには建てない方がいいんじゃないかと言って仕事をなくしたこともありますし、敷地を代えてもらったこともあります。なかなか難しいことなのでしょうが、でも、その地域にとって建てようとしている建築がふさわしいかどうか考えることも、建築家にとって大切なテーマだと思うのです。
(中略)
設計を志す学生さんと話をしていて、何がよいものなのかを見る目をどん欲に養ってほしいと感じることがあります。そのためには、贅沢な暮らしをしてほしいというわけではありませんが、自分自身の生活にきちんと向き合うことが大切です。そうしないと、トイレの扉の前にご飯を食べる場所をつくってしまったり、ただ流行りごとを追いかけてしまったり、それがどういうことかわからないまま、あまりにも貧しい感覚で設計をすることになってしまいます。建築の設計とは機能的なことはもちろん、人の気持ちをつくる仕事なのです。
日本らしさとは必ずしも和風建築に限ったことではないと思います。……明治の西洋にならってつくられた洋式建築ですら、日本独自の形を持っています。
この本を読み進めていて気づいたのは、建築とファッションとの近似性でした。
どちらも必要最低限のものやトレンディなものをローコストにつくることはできますし、現代の貧しい社会情勢ではそれが強く求められているのも仕方ないことですが、それだけが「正しい」というのは、あまりにも殺伐としています。
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そして、横河さんの仰るところのランドスケープとの関係性もまた、実はファッションと無縁ではないのではないかと思うようになりました。
それに薄々気づきはじめたきっかけが、昨年からはじまった出張ユーフォニカ。
大阪、仙台、東かがわ、名古屋、富山ときて3月にも諏訪にお邪魔しますが、こうして実際にいろいろな土地に足を運んでみると、同じ日本といってもほんとうに違うなと実感します。
風土、食べ物はもちろん、ファッションの傾向にしてもそうです。
この仕事をしているとつい「いまのトレンドは**だ」とか「最近の若い人は**なファッションを好む」なんて大雑把なことを考えてしてしまいがち。
しかし、仲町台~東京の往復程度の生活圏内でそんな分析をしたところで、それはしょせん南関東ローカルの流行の話に過ぎません。
たとえば東京と大阪を較べても、ファッションの傾向はまるで違いますよね。
この二都の違い、少なくとも江戸時代にはすでにだいぶはっきりと分かれていたとか。
時代はややずれているものの、上方発祥の元禄文化、江戸発祥の化政文化の特色の違いを見てもそれは理解できます。
ちゃんとしたデータをとっているわけではないのですが、おおまかに関ケ原あたりを境として(かつてこの地で天下分け目の戦いが行われたのも納得ですね)、東日本と西日本でも好まれる装いの「温度感」のようなものが分かれるように感じます。
大雑把にいえば、東は「冷たい」、西は「暖かい」。
東日本、とくに関東地方は色温度が低く、さらりとした質感の生地が好まれる一方で、西日本では色温度が高く、表情が豊かな生地が好まれるようです。
また、重ね着やアクセサリーといった「要素」も、東日本にくらべ西日本ではどんどん足していくお洒落が目立ちますね。
そしてもちろんそうした差異は東京と大阪、東日本と西日本、といった二分に限りません。
大きな流行というのは概ね大都市で発生し周囲に向けて拡がるものですが、そうはいっても各地にそれぞれ独自の特色があり、独自の文化が生まれています。
南北に長い日本列島は地域によって気温や気候がまるで異なり、その地理的影響も無視できないというのも自明のこと。
地理的な要因が人々のライフスタイルに影響を及ぼし(たとえば波に恵まれていればサーフィンを嗜む人も集まります)、ライフスタイルはファッションに影響を及ぼすものです。
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面白いことに、どの土地であっても、その地域ごとの人びとの装いの傾向は、必ずその地域の雰囲気に調和します。
東京の人はなんとなく東京らしく、大阪の人はなんとなく大阪らしく、名古屋も、香川や富山も、そして横浜も…
「この土地の人はみんな街並みに合わない雰囲気だな」なんて感じることはありません。
おそらく、自覚的にせよ無自覚的にせよ、そこに住む多くの人がその土地のランドスケープに馴染むような服の選び方、組み合わせ方をしているということなのではないでしょうか。
「そんなことないよ~」と思われるかもしれませんが、「どこ」でなく「いつ」の角度からランドスケープをとらえてみると、どうでしょう。
春と秋、気温は大して変わらないのに、なぜ春服と秋服の雰囲気が真逆と言っていいほど違うのか。
そしてなぜ我々はその違いを抵抗なく受け入れることができるのか。
それは太陽光線の強さ、空の色、木々の葉の色などが異なるからです。
これもまた、ランドスケープによって選択が変わるということになりますよね。
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服に関してよく聞く悩みのひとつが、「何をどう着たらいいのかわからない」。
インターネットやSNSでは、こうした問いに対してわかりやすく端的な「正解」「不正解」を与えるコンテンツが人気です。
やれどんなブランドが旬だとか、「コーデ」がどう、とか…
けれど、どの言説もどこか薄っぺらく感じてしまうのは、このランドスケープの視点が欠けているからではないかと思います。
不特定多数に向けて普遍的な「正解」を提示する以上、特定的条件であるランドスケープが前提から除外されてしまうのは致し方ないのですが、それゆえにどうしたって表層のテクニック、小細工の話に留まってしまうのでしょう。
もちろん、「個」を追求し、敢えてランドスケープから逸脱するというのもまた、ファッションの選択肢のひとつとして成立します。
が、その結果が客観的にどう見えるのかという判断材料のひとつとして、ランドスケープから解放されることはありませんし、いやむしろその逸脱によってランドスケープとの紐づけがより強く意識されてしまうことにだってなり得ます。
蓋し人の装いとは、ランドスケープなしに成立しないものなのかも知れません。