あなたがここにいてほしい ~ KAMARO’AN

台湾の東部一帯に居住する原住民アミ族は、客が家に来ると「maro」(座ってください)と挨拶し、その客がおばあちゃんの家に帰れば、おばあちゃんは「kamaro」(ここに座りなさい)と言うそうです。

そして「kamaro’an」は「みんな座らないか」「ここにいろ」、ひいては「住むところ」「生きる場所」を意味するとか。

カマロアン、そんな素敵な響きとメッセージを持つ言葉が、このブランドの本質をそのまま表します。

2013年に、原住民文化研究者1名とデザイナー2名によって、台湾で始まったKAMARO’ANプロジェクト。
原住民族の伝統的な職人技術やその文化的価値を、どのようにすれば若い世代の雇用を生み出せる経済規模にできるかなどを研究するチームとしてスタートしました。

当初は、ブルデューやアドルノの影響から美学と文化の関係性の研究に取り組んでいたようですが、やがて柳宗悦の著作を通して、文化は行動そのものから生まれるものだと気づきます。

2015年からはプロダクトブランドとして始動。

台湾原住民族、特にアミ族の文化と伝統的な手仕事を現代的なデザインに変換し、新たな価値を創造し続けています。

地元の職人と密接に連携し、お互いの特徴を引き出しあってそのものづくりは行われてきました。

そうして原住民族の文化を発展させながら現代社会の経済と繋げることで、原住民の若い世代に雇用を生み出し、それによってコミュニティを離れてしまった先住民の若者たちが故郷に戻り、定住する機会を創出できる(まさに”KAMARO’AN”)…それがブランドの大きな目的です。

この背景を文面から受け取ると、ややもすれば土っぽい、言葉を選ばずに表現するならば、垢抜けない、野暮ったいものを聯想するかも知れません(事実、同じようなアプローチでそこに陥ってしまうケースは世に少なくありません)。
が、KAMARO’ANのプロダクトの大きな特徴のひとつは、高度に洗練された知的なデザイン。

ただ伝統文化を踏襲しているわけでも、表層だけ置き換えているわけでもない、かといって元の特徴を殺してまでクールでモダンなものにまとめない、そのバランス感覚が卓越しています。

さてこの夏、台湾から届いたその素晴らしいプロダクトの数々を、一挙にお見せすることにしましょう。

まずは小振りのバッグ、Woven Triangle Bag 36。

手持ちにちょうどいいサイズです。

特徴的な三角形の形状は、日本の植民地だった時代に米を運ぶのに使われていたあづま袋から着想されています。

一本の革紐を編んで作ったレザーのハンドルは、横にずらすとキャンバスの持ち手にある2つの隠しボタンが現れ、取り外しが可能です。

こういった気遣いは、本体のキャンバスの汚れを洗い落とすときに助かりますね。

とはいえ、このキャンバスは撥水加工がかけられており、比較的汚れにくい生地です。

また、内側には樹脂コーティングを施し、バッグ自体の剛性を高め、経年変化による型崩れを軽減しています。

このバッグを二回りほど大きくしたのがWoven Triangle Bag 58です。

こちらは肩掛けにも使える大きさとなっています。

また、この大きさを活かし、外側片面には文庫本がちょうどすっぽり収まるポケットが設けられました。

本体の収容力も高く、A4サイズの本と13インチのノートパソコンが収納できますので、お仕事用のバッグとしてもお薦めです。

Woven Lid BagはTriangleとはまた異なるアプローチのレザーバッグ。

Kopid(コピッド)と呼ばれるアミ族の道具入れをアレンジし、イタリアで鞣された上質なベジタブルタンドレザーで作られています。

コピッドは汎用性が高く、狩猟道具を入れる箱としてのみならず、ときには農作業や外出時のためにご飯を入れておく弁当箱としても用いられていました。

手編みの輪を通して肩掛けストラップによって連結された上蓋と下蓋の形状は、ボタンも金具もなかった時代ならではの、よく考えられた機能的な設計です。

このアミ族の知恵が、長財布やスマートフォン、こまごまとした小物を収納できる現代のバッグとして生まれ変わりました。

お次は小物を。

カードケースと

ペンケースは、

折紙に着想して設計された一枚革のケースに

籐の如く革を編んだバンドを組み合わせ、蓋をしっかりと固定する構造となっています。

最後は長財布。

ちゃんと日本のお札も入ることは、展示会で確認しました。

片方がフラップ、片方が収納部分、でなくどちらも好きに用いることができるシンメトリーなデザインが実にユニーク。

カードとコインの収納部分が独立しており、これを好みや利き手などに合わせて本体左右のスリットにドッキングして使用します。

財布としてのみならず、パスポートケースとしても使用でき、旅先でパスポートや紙幣、領収書、カードなど大切なものを収納するのにも役立ちそうですね。

これらの小物もWoven Lid Bag同様イタリア製ベジタブルタンドレザーで作られていますので、使い込んでいくと深い艶を湛え、手にしっとりと馴染んでくれます(なお、Triangleのハンドルも同じ革です)。

展示会ではデザイナーのユンさんと工芸師のソーマ”ミサコ”さんが来日されていて、お二人とゆっくりお話しする機会があり、多くの資料の写真も撮らせていただいたので、もっとここで伝えられることはあったのですが、なぜかそこで撮影した写真のデータがまるごと消失してしまい、詳しい背景や小話は店頭で…となってしまいました。

(その場でソーマさんが編んでお土産にくれたバングル)

ただ、そうした情報を抜きにしても最高に魅力的な品々です。
デザイン大国台湾の実力を、どうぞご堪能ください。

オンラインストアはこちらです→
Woven Triangle Bag 36 ブラック/ オールブラック
Woven Triangle Bag 58 ブラック/ オールブラック
Woven Lid Bag チェスナット/ ブラック
Woven Card Case ブラック
Woven Pen Case ブラック
Woven Passport Wallet ブラック


真夜中のカーボーイ ~ Post Production/ Western-Belt

気がつけばあれからすでに3ヶ月経ったようですが、4月のオーダー会も記憶に新しいPost Production。

メインアイテムである靴は言うに及ばず、小物にも定評のあるブランドで、昨年は手袋がたいへん好評でした。

そして今季新たにベルトの展開を開始、その第一弾が先日届いています。

毛を残して鞣したカウレザーの地の色をそのまま活かして製作されたウェスタン調ベルトです。

この迫力のある素材をウェスタン調にとなると、華美になるのも当然ですが、そこはPost Production。

ベルト自体を細長く設定し、意匠を抑制した金具を用いることで、武骨さや派手さのない、落ち着いた上品なデザインにまとめられています。

穴数が多い(7穴)ため、1サイズ展開ですが男女問わず使用可能です。

巻く人の個性次第で、多彩な表情を見せてくれそうですね。

ここまで極端に暑い日が続くと、服もとにかく涼しいもの以外目に入らなくなってしまいがちですが、無理なく装いにひと変化をつけられるこうした小物を採り入れてみるのも、夏の一手として乙なものではないでしょうか。

オンラインストアはこちらです


きっと夏 ~ K.ITO/ リネンラグランハーフスリーブシャツ

本日、短い梅雨が終わりを告げたそうでして、それも宜なる哉、茹だるような蒸し暑さはまさに真夏のそれです。

となれば、ますます半袖シャツの需要は高まるばかり。

開放的な設計のリネンシャツの快適さは、いまこそ発揮されます。




昨年秋、今年の春に続くK.ITOのラグランスリーブシャツ、その夏向けの半袖です。

ステッチが表に出ないよう袋縫いにされたラグランスリーブは、シャツにしてコートのようであり、ゆえにシャツとしては言うまでもなく、夏の上着としてTシャツやタンクトップに重ねて羽織るのもよいでしょう。

肩甲骨から前に向かう動きに対応すべく、背面には深いプリーツが設けられました。

背中の真ん中だけに襞が設けられているため、運動性は確保しつつもシャツのシルエットがIラインから崩れません。
通常はAラインにまとめるところですが、ここにデザイナーの井藤さんの美意識が見て取れます。

全体的にゆとりをもった風通しの良い形状で、また用いられているリネンの素材自体が焼けた肌にも優しい柔らかさですから、これから始まる灼熱の日々にきっと心強い味方となってくれるはずです。

袖を通せば体が納得するK.ITOの熟練の服作り、この夏も是非お確かめください。

オンラインストアはこちらです→ ブラック/ ネイビー/ サックスブルー


普通の旋律で ひねらない言葉で ~ .URUKUST

当店で革小物といえばまず名が挙がるのが.URUKUSTでしょう。

構造からデザインされたがゆえの抜群の使いやすさや毎年提案される限定色の美しさなど、多くのお客様から高く評価され、不動の地位を築いています。

ところが、これは店主自身も気付いていなかったんですが、定番モデルの定番色という当たり前の存在が、ずっと欠けたままだったようです。

売り切れてそのままというのもあれば、一度も入荷したことがなかったものもあり(もちろんブランドとしてはずっと展開しています)、これは手落ちでした。

というわけで、このたび基本に立ち返り、定番モデルのブラックとオークがようやく店頭に並ぶこととなりました。

店主自身も愛用している長財布Long Wallet。


豊かな収容力を備えながらも、

そのパーツの少なさゆえ大量のお札やカードを入れてもほぼ膨らまないのが特徴です。

このLong Walletと人気を二分するのが折財布のBifold Wallet。


Long Wallet同様に最小のパーツ、最小の縫製箇所でつくられているとは思えぬほど機能性に優れ、

1アクションで目的(お札、小銭、カードの出し入れ)に到達できるよう設計されています。

容量や機能性よりも携帯性を重視したい方にお薦めなのがCompact Wallet。


手ぶら派や鞄の小さい方には最適でしょう。

旅行時などに使うサブ財布としても活躍してくれそうですね。

ブラック、オークともにバケッタ、オイルドレザー、無染色のベジタブルタンドレザーで構成されており、使い込むとしっとりと手に馴染み、別物のように深い艶を湛えてきます。
そうした経年変化を愉しめるのも、これらの色(に使われている革)の特徴です。

オンラインストアはこちらです→
Long Wallet ブラック/ オーク
Bifold Wallet ブラック/ オーク
Compact Wallet ブラック/ オーク


チープなスリルに身をまかせても ~ EEL Products/ Chee Chee Petiole

先日もお伝えしましたが、当店が長らく使ってきたインスタグラムのアカウントがハッカーに乗っ取られてしまいまして、已む無くアカウントを作り直しました。
改めまして、こちらのフォローをお願い致します。
https://instagram.com/euphonicayokohama

さて、それはそれとしまして店自体は平常通り営業しております。

梅雨明け前とは思えぬ大暴れな猛暑に、すでにグッタリな方も多いとは思いますが、服屋としては極力涼しく快適な夏物衣料をご紹介していくのみ。

近年の夏の高温多湿っぷりはもはや温帯湿潤気候のそれではなく、我が国は亜熱帯気候に属すると称してもあながち間違いとは言えなくなってきました。

それもあって、このところこうした服が多くのお客様の目に留まるようです。


EEL Productsの”Chee Chee(チーチー)”、何とも人を食ったような響きですが、往時のワークウェアをベースとして敢えて「チープにチープに」リデザインしたことからこう名づけられました。

カットソーの工場にてロックミシンを多用して仕立てることで、きちんとしたシャツやジャケットにはない柔らかな軽快さが生まれています。

前にご紹介したmando然り、とくに暑い時期はこのように意図的に簡素につくられた服の魅力が増しますね。

素材はインド綿でしょうか、薄く、風通しのよい生地で、昨今の夏でも快適です。

品名にある”Petiole”は葉柄(ようへい)、すなわち葉と茎を接続している小さな柄状の部分を意味しますが、

言葉遊びの好きなブランドですから、「葉柄(はがら)」とのダブルミーニングと思われます。

先ほど軽くワークウェアと述べましたが、頑強な生地や縫製でそれを表現しているわけではないのは言うまでもなく、たとえばこの左脇に設けられたポケットにそのエッセンスがよく表れています。

ジャケットというよりペインターパンツによく見られる形状のポケットで、よく見るとハンマーループまで設けられています。
もちろんここにハンマーなんて下げたら生地がちぎれてしまいます。
この服のテーマは「チープ」ですから、それも捻くれた(ハンマーループだけに文字通り)ユーモアとしてお楽しみください。

とにかく薄手で、かつたっぷりとゆとりのあるサイズ感ですから、夏の羽織ものとしてもクルーネックのシャツとしても活用できそうです。

徹底的に作り込んだ服の佳さは言うまでもなく、けれどときにはこうした服もそれに代わる魅力を発揮することがあります。
そうした価値観の振り幅をもって評価してみると、服ってさらに面白くなりますよ。

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何より俺色にそまれ 誰より君色にそまろう ~ mando/ オーバーダイペイズリージャケット&イージーパンツ

梅雨といっても真夏のようで、おそらく秋口も真夏のようなのでしょう。

近年そんな気候が続いていますから、着るものの選択には「夏前後」くらいの大雑把な季節感で向き合った方がいいのかも知れません。

本日ご紹介するmandoの新作も、コレクションの区切りとしてはいちおう秋冬の枠に入りますが、実際は「夏前後」向けです。

シングルブレストのジャケットと


イージーパンツ、共生地でご用意しました。


ペイズリーの小紋柄が入った薄手のキュプラの生地は、涼しいだけでなく吸排湿性も優れています。

生地の洒脱な風合いや奥行きのある色調は、製品染めだからこそ。

正統派の服作りを経由したうえでの「抜き」がmandoの特徴といえますが、その「抜き」加減には毎度驚かされます。

たとえばジャケットの袖口を本切羽にするとか、凝り具合のわかりやすいディテールはどんどん大胆に省く一方で、パンツのドローストリングのようにいくらでも手を抜けそうな部分にはきっちりとした重厚な仕事が施され、服全体のバランスをコントロールしています。
うーん、実にプロフェッショナルですね…

パンツは意外なほどすっきりとしたシルエットですが、サイドシームのない筒状の構造や立体的な裁断によって、適度なボリューム感、そして軽やかな穿き心地は確保されています。

ジャケット、パンツともに癖が強いように見えて、着てみるととても上品にまとまります。

蒸し暑い日の小洒落たセットアップとしてはもちろん、どちらも単体で使いやすく、あればとても重宝するはずです。

是非一度お試しを。

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ジャケット ダークネイビー/ パープル
イージーパンツ ダークネイビー/ パープル


陰翳礼讃 ~ Ithe/ No.13-53-4-ISO

ItheのNo.13-53-ISOシリーズ(通称イザシャツ)は実にItheらしい品番で、ぱっと目を惹くインパクトもなければ、狂気じみた作り込みもありません。
実に「普通」です。

けれどそれは必ずしもネガティブなことではなく、また素材や縫製のグレードはこれ見よがしでないにしても高いため、ついつい自然と手に取ってしまうお気に入りの一着として、日々に潤いを与えてくれます。

「普通」というのは実はとても難しく、ただ単にそれを形にしようとしても、単に面白くないものになりかねません。
ゆえにこのシャツは、「普通」であって「普通」ではない、「普通」にするために「普通」にしていない、そうした矛盾を内包しています。

それが違和感なく混ざり合っているからこそ、この絶妙なバランスの「普通」が成立しているわけです。

そこまでして成し得た「普通」ゆえに、素材を乗せ換えても本質的な部分は損なわれず、新たな可能性のみが生まれます。


無地の印象が強いItheですが、先日ご紹介した別注のTシャツはじめ、今季は柄物が増えています。

ブランドとして初となるチェック柄に選ばれたのがオンブレチェックというのが、ItheらしくないようでItheらしいところ。

10代のころスケートボードに明け暮れていたというデザイナー吉﨑氏のルーツが窺えますね。

一般的にはコットンフランネルのシャツでよく見る類のチェック柄ですが、ここで用いられているのは夏に最適なリネン。

品質を安定させるために若干ナイロンを混紡しながらも、その風合いや肌離れの良さといったリネンの特長はそのまま残っています。

さらに、生地自体がやや甘く織られているため風通しに優れ、近年の酷暑でも快適にお召しいただけるはずです。

蒸し暑くなるにつれ、リネンのシャツをお探しの方も増えてきました。
早いものでもう7月、夏本番はすぐそこに迫ってきています。

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