四月も下旬、横浜はまだ少しひんやりとした風に暖かな陽射しが心地好く、若葉萌ゆる木々が目にも清々しい、一年の中でもほんのひとときの爽やかな時候です。
あとひと月も経てば梅雨の気配が忍び寄り、それから日を追うごとにじっとりと蒸してくることでしょう。
どちらにしてもこんな柔らかく軽やかなシャツがあれば頼りになるというものです。
buntのルーツである横浜南部の金沢文庫。
同名の施設はインテリゲンチャとして知られる鎌倉時代の武将北条実時(金沢実時)が自身で収集した蔵書を収めた私設図書館を由来とし、紆余曲折を経て現在は博物館として県によって運営されています。
そうした背景を知らずともどこか思索的な佇まいなのは、その素材ゆえかも知れません。
ここで用いられている生地は綿でなく、テンセルと和紙の混紡素材です。
木材パルプを原料とするテンセル、楮などの樹皮を原料とする和紙、文字情報だとずいぶんごわごわした印象ですが、触れていただければそのとろんとした柔らかさにきっと驚かれるはず。
細く裁断した和紙に強い撚りをかけた糸は通気性、吸湿性に優れ、また繊維も分解しませんので洗濯したからといって溶けたりすることはありません。
加えて、紫外線を通しにくく高い抗菌性と防臭性を備えているという特性もあるようです。
なお、紙という構造上糸の毛羽立ちも起きず、さらりとして肌触りもよいのですが、和紙だけだと少し硬くなってしまうため、テンセルを混ぜることで長所を残したままこの滑らかさを実現しています。
そんな素材の美味しさを堪能できるようシャツには余計な虚飾は施されず、その名の通りごくスタンダードな仕様で纏められました。
ただしサイズ感だけはちょっと変わっていて、buntのラインナップの他アイテムと較べると幾分大きく作ってあります。
そのため肌に触れる面積が抑えられ、風通しがよくなるだけでなく、生地特有のふわっとしつつ重力に従った落ち感、ドレープを存分に味わえます。
このシャツを身に纏い、古文書に記された昔日の情景に思いを馳せながら荷風の『日和下駄』よろしく初夏の市中散歩を楽しみ、その道すがら気の利いた古本屋さんにでもふらりと立ち寄ってみては如何でしょうか。
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