夢色の小さなスプーン ~ ASEEDONCLOUD/ Sankayo jacket

秋から春にかけて、霧の出ている時期だけ開かれる移動式のティーガーデンの話を憶えていますでしょうか。

また一からお話しすると長くなりますので、詳しくは以前の拙ブログをご参照いただくとしまして、そのティーガーデンを主宰する”霧の収集家”がホストとして自ら招待したゲストを前に身に纏うジャケットが、仲町台に届いています。


Foggy woolと名付けられた、独特の凹凸が表情豊かなウールの生地で仕立てられ、

素木のボタンを用いた、幻想的な一枚です。

肌寒い霧の中で防寒性を高めるべく、襟を立てて前立てをすべて閉じることでスタンドカラーのように着ることもできますが、

ここは襟を寝かせて4つボタンジャケットとして着る際の第一ボタンにご注目。

この”HOLD FIRST”は往時のワークウェアおよび子供服に由来する刻印です。

ASEEDONCLOUDデザイナーの玉井さんは、ロンドンに住んでいたころ、古いワークウェアやユニフォームに使われていたジャンク品のようなボタンを蒐集していたそうで、そのなかでとくに気に入っていたのが”HOLD FAST”と刻印されていたボタンでした。

これは単に「(ボタンを)しっかり留めましょう」という意味ですが、とあるマーケットで玉井さんが出会ったおばあさん曰く
「もともとは”HOLD FAST”ではなく”HOLD FIRST”というボタン。子供のユニフォームの一番上に付けられていて、一番最初にこのボタンから留めましょうと言う意味だったのよ」。

実際それから”HOLD FIRST”ボタンを見つけることはできなかったようで、おばあさんの話が本当なのか作り話なのかはわからずじまいですが、その真偽はさして重要ではないでしょう。

ボタンひとつから溢れる豊かな物語、それはASEEDONCLOUDに通じる重要な価値です。

ということで、その旧いボタンから引用したボタンが、ここに用いられています。

さてジャケット自体を見てみますと、肩を落とし、身幅をたっぷりととったチャーミングなシルエットで、いわゆる正統派のテーラードジャケットとは似て非なるものです。

これは、ティーガーデンのホストとして、きちんとした佇まいとともに、臨機応変に対応できるように動きやすく設計されているから。

お茶会が開かれるにあたって、いつ何が必要になるのかわかりません。
自分自身はもちろんゲストにも気まずい思いをさせぬよう、万全の準備が求められます。

そこで内側には、急な事態に備えるために、各種道具を仕込んでおくポケットが設けられました。

左身頃にはスプーンと茶漉し、

そしてお砂糖、

右身頃には砂時計とディッシュクロスを収めることができます。

それぞれのポケットには入れるべき道具名が刺繍されていますから、バタバタしているときも慌てずに済みますね。

身頃にもアームホールにもゆとりがあるため中に着込むことができ、またしっかりとしたコットンの裏地が設けられていますので、より寒い時期にはショートコートとしても活躍することでしょう。

寒冷期に外でお茶会を主宰するときはもちろん、自宅でだれかをもてなすときも、あるいはお茶とは関係ないシチュエーションにも、素敵なひとときを愉しめるジャケットです。

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