ベルト一つ見ても、武骨で、重厚で、作り手の人柄が偲ばれます。
CHARLIE BORROW(チャーリー・ボロウ)は、若きデザイナーであり職人であるチャーリー・ボロウ氏が2013年に立ち上げたブランドです。
ロンドンに小さなアトリエを構えて独りで切り盛りしています。
少し前にチャーリーが来日した際に一時間ほど本人と話す機会があり、革の匂いの話で盛り上がったのですが、いかつい肉体の割に笑顔の可愛い若者でした(当日はカメラを忘れたうえスマホが故障しており、写真は残っていません…)。
その作風は質実剛健そのもの。
すべての資材は耐久性を基準に採択され、全商品がチャーリー本人によって一点一点作り出されています。
このベルトに用いられているブライドルレザーは、英国南西部デヴォンのJ&FJ Baker社によるもの。
今やイングランド国内で唯一となった、オークバークという樫の木の皮から抽出されるタンニンで鞣す技法を継承しているタンナー(皮革製造業者)です。
オークバーク鞣しは、皮を革にするまでに18ヶ月もかかるという非常に効率の悪い技法ですが、時間をかけた分繊維が詰まり、結果として強靭な革となります。
鞣した革にじっくりと蝋と油脂、染料を滲みこませることで柔軟性と強度を高めたのがブライドルレザーなのですが、通常蝋や油を浸透させるために銀面を削るところ、Baker社は削ることなく革の芯にまで滲みこませます。
この方法は長い時間と高い技術が必要なうえ、表面を削らないためトラと呼ばれる血管痕や革の小さな傷がそのまま残ってしまうのですが、繊維が最も緻密に絡まっている銀面がそのまま残されているため、きわめて頑強です。
このBaker社製のブライドルレザーが世界最高級の革のひとつとして称されるのは、こうした理由あってこそ。
ただ、硬く、重く、表面が荒々しく、匂いも独特なため、万人向けというよりマニア好みと言えそうです。
この革をチャーリー自身がハンドカットし、角を落として蜜蝋ワックスで裁断面を整え、金具が取り付けられるわけですが、この金具も当然彼の厳しい目で選ばれたものです。
馬具用金具を得意とする英国王室御用達の鋳物工場Abbey製バックルは、強力な圧力にもびくともしません。
表面にはメッキ加工などは施されておらず、燻されたような質感へと経年変化していきます。
分厚い革を打ち抜きしっかりと固定する銅のリベットは、バーミンガムのリベット専門工場Sapphire社によるものです。
これらのパーツが組み立てられてベルトとして生まれ変わった日は、付属のタグにチャーリーが手押しスタンプにて残してくれています。
完全にファッションアイテムではなく工芸品の域に達してしまっていますが、長い時間を伴にする一本としてはこれ以上望むべくもないものです。
もうベルトのことで悩みたくない、一生愛せる一本が欲しい、そんな方は是非お試しください。
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