niuhansの服は総じてキャッチーな意匠がなく、またシルエットも中庸なため、第一印象で伝わりにくい傾向にあります。
服にそれほど関心のない方であれば、ユニクロや無印との区別がつかないかも知れません。
しかし、これもまた総じて言えることですが、一度着てみればその着心地、知的で清潔な気品にはっと息を飲むことでしょう。
このフィンクスコットンを用いたシャツは、まさにそんな魅力を味わえる代表格のひとつと言えます。
世界にその名を轟かせるエジプトのギザコットン。
地中海に臨むナイル川下流の肥沃なデルタ地帯で栽培され、枯れ葉や枯れ枝、未熟な綿が混ざるのを防ぎ、また綿花を傷めないよう、現代に於いても手摘みによって収穫されています。
その後、品質ごとに選別、人の手で丁寧に撹拌されます(この作業はファルファラと呼ばれます)。
エジプト綿の高い品質は、こうした非効率的な作業の積み重ねによって実現しています。
こうして生まれる綿のなかからさらに厳選された特級綿、それがフィンクスです。
絹を思わせる艶、しっとりとした肌触り、そして優れた耐久性を備えています。
このシャツで用いられているのは、そんなフィンクスの糸を用いて浜松の工場でじっくりと織りあげた極上のタイプライター生地です。
紡績の段階でガス焼きを施し毛羽をとることで、よりフィンクスならではの光沢を引き出しています。
一般的にタイプライターはぱりっとした乾いた質感が特徴(niuhansがよく採用しているサウンドクロスも同様ですね)ですが、フィンクスのタイプライターは、しっかりと目が詰まりながらも柔らかく、しなやかです。
そんな生地の魅力を一切毀損することなく、最大限に活かすのが、この禁欲的かつ細部まで気の配られたデザイン。
niuhansらしい寡黙なディテールが、このシャツをより高い次元に引き上げています。
今日のような異常に暑い日を除けば、基本的に一年中使い回しの利くシャツです。
まずは一度お試しを。
上記の如き冗長な言葉がなくとも、体感でご理解いただけることでしょう。