基本的に既製服はある程度の生産数があってはじめて量産可能になるものでして、そのマスプロダクトとしての性質を極限まで追求したのが皆様ご存知ユニクロでありファストファッションであり低価格衣料なわけです。
不況や格差の拡大などの後押しもあってこうした時代の旗手たちが世を席巻、同業あるいは異業種からの参入組まで他社が追随するにしたがい衣料品自体がコモディティ化し、それを市場はファッションの民主化と高く評価、今に至ります。
服を評価するにあたって「コスパ」という相対的な概念が最重要項目にリストアップされるようになったのもそのひとつの結果といえるかも知れません。
この流れ自体は正しいように見えますね。
装いを楽しむこと、そうでなくても日々の身嗜みを維持する営みが、所得や文化資本の多寡から解放されたのですから。
しかし、低価格を実現するための大量生産は、必然的に邂逅の興奮の機会を剥奪するものでもあります。
上記のようなエクストリームな例でなくとも、最近いろんな服屋に行ってもワクワク感が少ない、ナニコレという出会いがなかなかない、そうしたお声はしばしば店頭でも耳にするところです。
昨今の市場の求めるあらゆる合理性が、数値化できない何か重要な要素まで削ってしまっているのではないでしょうか。
いつもの如く話がとッ散らかってしまっていますが、ええと何が言いたいのかと申しますと、瞬間瞬間のたいせつな出会いは人生に於ける重要な潤いであり、それは服一枚についても例外ではない、ということです。
ゆえにたとえば店主がこのニットと出会い、受けた感銘を、皆様にお伝えする、マーケットに何の影響も及ぼすことのない片田舎の零細商店ですが、だからこそそれは丁寧に続けていきたいですし、だれか一人であっても素敵な出会いのきっかけになれればと願っています。
当店初登場のRencontrant。
まさにそのままフランス語で出会いを意味します。
ちゃんと発音するとカタカナ表記不可能なため、便宜上国内では「レンコントラント」と称すとの由です。
旅とニットを愛するフランス人デザイナーSara Dubois女史がディレクションを行い、彼女が旅先で出会った人や生産地の思い、技術を伝えるべく素材や工場を選定してニットを生み出しています。
結果、フレンチブランドではありますがこのセーターは日本製です。
素材はウールではありません。
なんとカシミアにセーブルを混ぜて編み立てられています。
セーブル(黒貂)の毛皮は最高級品として知られ、カシミアより繊維が細く滑らかな肌触りで、また内部に気泡を有するため軽く暖かいという特性を備えています。
日本でも奈良時代くらいから朝廷、貴族らに珍重されていました。
かの『源氏物語』でも末摘花がその毛皮に香を焚き染めて着用しているさまが描かれ(「表着には黒貂の皮衣、いときよらにかうばしきを着たまへり」)、没落前の栄華を仄めかしています。
そんな毛を用いたニットですから、そのふんわりとした質感、そして軽さには息を飲み言葉を失います。
デザインは余計な付け加えをせずとも、リブの仕様など細部に気が配られています。
全体のバランスとしては、若干着丈が短く、そして袖が長めです。
S~Lサイズまで取り揃えました。
ブランドのコンセプト自体がユニセックス対応で、Sは女性や小柄な男性向け、Mは一般的なSとMの間、Lは一般的なMとLの間くらいの大きさとなっています。
当店では敢えてこの美しい紫色のみの展開です。
まさに一期一会の極上品、手に取られた方のみに許される愉楽を、是非ご堪能ください。
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