40歳前後あるいはそれより少し上の世代が若かりし時分、乗馬用のキルティングジャケットが流行したことがありました。
店主の記憶では『Begin』誌の影響でビジネスマンがスーツの上に纏うようになった(ビギン君、なんて呼ばれていましたね)のもその頃です。
軽く、ほどほどに暖かく、羽織るだけで英国の匂いを醸し出すことから学生から大人まで広く愛されていましたが、いつしか、寧ろスーツ姿の時に着るものと認識されたりと、その立ち位置は少しずつ変わっていきました。
若い世代だと存在自体気にしたことがない方が多いかも知れません。
さてそんなキルティングジャケット、そうして流行の場から離れしばらく経つうちに、一周廻って目新しさすら帯びて参りました。
今こそ、カジュアルの場に呼び戻してもよい頃合いでしょう。
エリザベス(2世)女王に仕える女官が、ナイロンを用いて保温性の悪い従来品に代わる軽量で暖かいホースブランケットを開発すべく、自らの故郷ラベンハム村にて創業しました。
のちにその生地を用いて乗り手のための上着として世に送り出したのが、お馴染みダイアモンドステッチのキルティングジャケットです。
この由緒正しい名門にEEL Productsが別注をかけ、往年の名モデルMILDENを現代的に復活させました。
’00年代のDior Homme旋風はモードの枠を超え、こうした英国調のスポーツウェアにまで影響を及ぼしました。
もともと肩幅や身幅が広く、アームホールがゆったりしていたキルティングジャケットも、しだいに細く、シャープでコンパクトな形状へ。
やがて旧来の型は古臭く野暮ったいものとされ、いつしか表舞台から姿を消していきます。
そのひとつがこのMILDENです。
不思議なもので、ともすればもっさりしがちなこの型が、今の目には却って新鮮に映ります。
さすがに昔の型のままだと鈍重な印象は否めないため、この別注にあたり着丈はやや短く修正されました。
くわえて、襟のコーデュロイ使いはそのままに
身頃のパイピングはコーデュロイからナイロンテープへ、プラスティックボタンは奥行きのある真鍮製のものへ差し替えられています。
また、これはこの別注に限った話ではないのですが、昔のキルティングジャケットをご存知の方であまりいい印象を持たれていない場合、その原因としてしばしば挙げられるのがキルティングのステッチ切れの多さです。
実際店主の友人が学生時代に着ていたジャケットは糸がいたるところで切れていて少し物悲しい雰囲気に包まれていました。
このステッチ切れに関してはラベンハム側も問題視していたらしく、現在は改善されたようです。
どうぞご安心を。
ちなみに、ラベンハムのジャケットは今もなおすべて本国サフォーク州サドバリーの自社工場にて生産されています。
検品と畳みの担当者名が洗濯表示タグに添えられているのが、人の手が関わっていることを改めて認識させてくれますね。
画像のものはJANETさんが担当されたようです。
担当者は複数名いるため、それぞれ表示は異なります。
そんなことをする方はいらっしゃらないとは思いますが、担当者指名でのご注文は承っていませんのでご了承ください。
閑話休題、前述の通りスーツの上にも着用でき、また普段でもさっと軽く羽織れる便利さは、これだけいろいろと機能的な衣料が世に出回る時代に於いてもその価値を損なうことはありません。
懐かしいなと思う方、初めて触れる方、人それぞれでしょう。
おのおのの思いを胸に、楽しくお召しいただければ幸いです。
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