ここ数シーズン、肩肘張らない程度に上品で、美しく、そしてどこかしらスコットランドの荒涼とした風土を彷彿させるコレクションを展開しているKESTIN HARE。
通常であれば陽気な属性を帯びるであろう花柄の半袖開襟シャツですら、例外ではありません。
まずはエディンバラからほど近い島の名を冠したCRAMMOND SHIRTをご覧ください。
ゆったりとしたアロハシャツの形状が夏の盛りを思い起こさせますが、
てろんとしたテンセル生地にプリントされた手描きの花柄はうっすらと灰色がかっています。
やさしく快適な着心地、花柄、そして翳。
これらの諸要素が重なることで、ケスティンならではの独自性豊かなシャツへと昇華しました。
余談ですが、このシャツの名の由来となったクラモンド島は本土から1.6kmほどの距離に位置し、干潮時は歩いて渡れるそうです。
満ち潮にはお気をつけください。
さて、もう一型もご紹介。
ノース・バーウィックの地名を冠したSEACLIFF SHIRTもまた、ただならぬシャツです。
こちらはハリのあるコットンポプリンに枯れたあざみ(Scottish thistle)がプリントされた生地で仕立てられています。
左胸と両脇にはパッチポケットが設けられ、真夏のちょっとした羽織りもののような使い方もできそうです。
あざみはスコットランドの国花で、かの地で非公式国歌として愛される”Flower of Scotland”の曲名も、この花を意味しています。
歌の内容は、イングランドの大軍による侵攻をゲリラ戦術によって食い止め、のちのスコットランド独立を成す嚆矢となったバノックバーンの戦い(1314年)をモチーフにしたものであり、
あざみの花はこの戦いと直接関係はないのですが、この花自体はもっと古い時代から国を守る象徴として語り継がれています。
一説には、10世紀にデンマークと交戦した際、夜襲をかけるにあたり足音を消すため裸足になっていた敵兵があざみを踏んでしまい、棘の痛さで思わず上げてしまったその声でスコットランド側が奇襲に気づき、結果勝利を収めたことから、救国の花として扱われるようになったとか(同様のエピソードは1263年のラーグスの戦いでの逸話との説もあり、今一つ定かではありませんが)。
また、スコットランドには何種類ものあざみが存在し、それはいくつもの民族、文化が折り重なっているスコットランドそのものを表しているようでもあります。
いったい何が本当の由来なのかは、実のところはっきりしていません。
が、あざみが何百年ものあいだスコットランドにとってとても大切な象徴とされていたことだけは事実です。
ところで、春から夏にかけて紫色の花を咲かせるあざみが、なぜかその時期に着るはずのこのシャツでは枯れています。
どうしてそんな寂しいことになったのか、想像を喚起させて止みませんね。
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CRAMMOND SHIRT オリーブ/ オーカー
SEACLIFF SHIRT