バタフライ・エフェクト ~ ASEEDONCLOUD/ Recreation vest

時計技師のおじいさんと遠くからやってきた少年のお話を、弊ブログの読者の皆様は覚えていらっしゃるでしょうか。

長年連れ添った愛妻を亡くし、ただ思い出を胸にからくり人形を作るだけの余生を過ごしてしまいかねなかったおじいさん。

そのあまりの元気のなさを心配した少年は、野山で遊ぼうとおじいさんを時計台の外から町の外まで連れ出しました。

最初は戸惑っていたおじいさんでしたが、少年に教わりながら遊んでいるうちに、だんだんと心境に変化が生まれ、人生に対して前向きになっていきます。

蝶採集も、そうしてのめり込むようになった遊びのひとつ。

やや特殊な道具が必要なこともあって、蝶を捕りに出るとき、おじいさんはこのベストを着用しています。

このベストは、Tehu Tehuとのコラボレーションによって生まれました。

Tehu Tehuは、その名の通り蝶をコンセプトにしたブランドです。

公式サイトよりブランドコンセプトを引用しますと、

全国各地で採集した蝶から標本箱を製作。
蝶採集時に最高のパフォーマンスを発揮する
世界初の蝶採集専用のハンティングウエア・ギアを2015年に発表。
​以降、採集地や種により新たなモデルを開発し
年間を通して各地でテストを行い発表し続けています。
機能が作用し作用が機能する。
最先端の技術は使っていませんが​知恵と経験で生まれています。

まさに、このベストの開発にあたって理想的なパートナーと言えましょう。

蝶採取に特化したブランドの監修だからといってただ単にハイスペックな服にするのではなく、あくまで初心者であるおじいさんにとっての使いやすさを重視してデザインされているそうです。
その匙加減にも、素人には及びもつかぬプロの経験と知識が光りますね。

虫捕りなど幼少期に蝉やカブトムシなどをつかまえた経験程度しかない店主ゆえ、遺憾ながらその機能すべてを完璧に理解することはできませんが、ブランドから提出された情報をもとに可能な限り説明していきます。

とにもかくにもポケットの多い服ですが、すべてが汎用的なポケットというわけではなく、なかにはやや特殊な用途のものもありますので、まずは左胸を見てみましょう。

肩のヨークに重なるように設けられたこの謎パーツは、サングラスと地図を入れるためのポケットです。

スナップを外して展開するともう少しわかりやすいかと思われます。

ヨークに重なっているのは、雨に濡れるのを防ぐためだとか。

右胸ポケットからはピンセット用ポケットが覗きます。

このピンセットを使って、捕獲した蝶を三角紙に収めます。
三角紙は薄く蝋による処理が施されており(つまりはパラフィン紙)、鱗粉の剥離などを防ぎます。

この紙を収納するポケットが、左脇に設けられています。

・・・見つかりませんでしたよね。
濡れないよう、このように隠されているのでした。

背面には大きなゲームポケット。

上のスナップと

下部両脇のファスナーを外すことで、簡易的な敷物にもなります。

野外に座るとどうしてもお尻が汚れてしまいますから、これはうれしい。

また、ポケットではありませんが、肩のD環をどう使うか考えるのも愉しいものですね。

その他、ホイッスル用のポケットや、休憩時に捕虫網を掛けておけるギミックも搭載されているようなのですが、それがどこなのか、店主の乏しい知識ではわかりませんでした。
どなたか蝶採集に詳しい方に教えていただけますと幸いです。

(2023/4/20追記:ASEEDONCLOUDデザイナー玉井さんに直接確認しました。以下に続きます!)

右脇のポケットのフラップの下にはホイッスル用ポケットが内蔵。

また、疲れて一休みするときなどには、捕虫網を畳み、裾の小さなポケットと先述した胸のループ(地図とサングラス用ポケットを留めています)で挟むことで

このように固定しておくことができます。

捕虫網が店内になかったのでマリノスのポスターで代用していますが、まあそこはお赦しくださいませ。

さて、ここまでくどくどと書いてきたのを辛抱強くお読みいただいた皆様、少なくない割合の方がある部分が気になっているのはないでしょうか。

そう、まだこの素敵な生地について何も触れていませんでした。

アンティークのソファやカーテンに使われていそうな古びた雰囲気がたまらないこの生地には、リンドウ、マム、カーネション、キンセンカ、スターチス、リシアンサス、モカラの花がプリントされています。

おじいさんたちの暮らす土地にも、我々にとってのお盆のような風習があるらしく、一年に一度、夏にあの世からこの世へ魂が帰ってくるそうです。

生前庭にいろいろな花を植えていたおばあさんを迎えるべく、おじいさんが準備したのがこの7種でした。

余談ですが、このお盆のような時期に殺生を行うのはよろしくないとのことで、そのあいだはおじいさんも虫捕りや魚釣りを我慢せざるを得ません。

実はこの花柄のなかには、こっそりと虫や魚を見立てたような遊びが仕込まれており、お盆の期間中はこの生地の服を着ることで、密かに遊びたい欲求を補っているというわけです。
虫や魚がどこにどう隠されているかは、是非ご自身の目でお確かめください。

おじいさんたちが暮らす町だけでなく、横浜もすっかり春めいてきました。

いよいよ蝶々が舞い始めるころです。

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