ちびっこカウボーイがやってきた ~ Mistral – Les Indiennes de Nîmes/ Bandana

もう10年以上の昔、当店がオープンする前の話になります。

仲町台には南仏の雑貨を販売するOlivetteというお店が存在していました。
ちょうど当店がいま入っている物件のお隣りで、現在は派手めな雰囲気の不動産屋さんとなっている場所です。

というわけで残念ながらもうその面影すら残っていない状態ではありますが、だからこそ、あらためて南仏のフレイヴァをこの町に持ち込んでみると新鮮に映るかも知れません。

日本が北と南でがらりと文化を異にするのと同じく、フランスも地域によって特色が変わります。

地中海に面している南東部プロヴァンス地方は、温暖で開放的な気質の土地柄と聞きます。
且つ、フランス最大の港湾都市マルセイユを擁しているのもあって、民族や文化などさまざまな要素が入り混じりやすい環境です。

17世紀にインド更紗が伝わり、それまでフランスに無かったエキゾティックなプリント柄に多くの人々が魅了されました。
而して、東洋的な文様・色彩にプロヴァンスの自然、民族的な色彩感覚を加えた独自のスタイルが形成されていくことになります。

プロヴァンスといえばゴッホの絵でも知られるアルルも有名ですね。
そのなかの三角洲地帯であるカマルグでは、ガーディアン(les gardians;現地のカウボーイはこう称されています)たちが、半野生のカマルグ馬に跨って農家兼牧場マナード(Manade)で闘牛用の雄牛を育てています。

映画好きの方ならラモリスの『白い馬』を思い出す方もなかにはいらっしゃるのでは。
まさにこれがカマルグ馬です。
https://youtu.be/OFvMTbx24dI

さて、そんなカマルグにて1938年に創業したMistral(ミストラル)は、18~19世紀のアーカイブの古い柄を引き継ぎながら、ガーディアン向けの様々な商品を作り続けているブランドです。

正式名称としてはこのMistralの前(あるいは後)に”Les Indiennes de Nîmes”がつくようなのですが、長すぎるのと、本国のサイトを見ても正しい順序・・・もっといえばこの”Les Indiennes de Nîmes”が社名なのかブランド名なのか何なのか自体ちょっと曖昧で、どう併記すべきなのかわかりかねるため、本稿では以後Mistralと呼びます。

なお、ミストラルは南仏のプロヴァンサル語で「見事な」を意味します。
またフランス南東部に吹く地方風もこう称しまして、アルプス山脈からローヌ河谷やデュランス川流域を通って加速し、カマルグ周辺の地中海に強く吹き降ろす、冷たく乾燥した北風のようです。

話をブランド名のMistralに戻しますと、本来はトータルブランドにつき、シャツやパンツといった服だけでなく、帽子にベルト、さらにはナイフなどまで展開しているのですが、当店ではバンダナのみを取り扱います。

初めは少々硬さがあるものの、使いこみ何度も洗っていくうちに、ふんわりした肉感とコシを残した程よい柔らかさが出てきて、使い心地が向上する生地です。

POIS GIPSYと名付けられた柄は、ロマ(ジプシー)から伝わったもの。

よく見ると、少し不規則な水玉で構成されています。

カマルグの主都であるサント・マリー・ド・ラ・メールでは、5月と10月、2人のマリア(小ヤコブとヨセとの母マリア、マリア・サロメ)に因む祝日に盛大な祭りが行われるそうです。
彼女たちの従者であったサラがロマの守護聖人であり、この町の教会から聖女サラの像を海まで運ぶことから、ロマが大勢集まる祭りとしても知られています。

また遙に望み居たる女たちあり、その中にはマグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ、及びサロメなども居たり。
彼らはイエスのガリラヤに居給ひしとき、從ひ事へし者どもなり。此の他イエスと共にエルサレムに上りし多くの女もありき。(マルコ傳福音書 15:40-41)

モノトーンのペイズリー柄であるCOROMANDELはインド南東部ベンガルに広がる海岸の名前にちなんで名づけられました。

インドから最初に輸入された生地の伝統を受け継いだプロヴァンス柄の一つです。

伝統と言えばこのCASHMEREもクラシックスタイル。

カシミール地方のパシュミナ(カシミア)のショールやストールなどで使われていた柄を基にしています。
ちなみに、「ペイズリー」というのはスコットランドの町の名でして、19世紀にインド製品の模倣品がここで量産されるようになったことから、柄自体がそう呼ばれるようになりました。

QALAMKARIもまた、インド由来。

その名はペルシャ語で「ペン(QALAM)」「職人技(KARI)」を意味し、インド最古の捺染とされています。
文章による整った体裁の書物がなかった時代から口頭伝承されてきた神話や歴史、物語などを、絵によって表したものです。
この柄はどんなストーリーを描いているのか、気になりますね。

AUBEPINEは、その名の通りセイヨウサンザシの花でしょうか。

直接的な記述はないものの、イエスが磔刑のさいに被らされた荊冠は、セイヨウサンザシではないかと云われています。
そこで飛び散った血がこの植物を清めたとされ、後世では厄除けとして扱われたり、傷や腫物、心疾患や消化器系の病などを癒す薬草としても用いられました。
副作用などに問題があり素人判断での使用は難しそうですが、現在でもさまざまな薬効が期待され研究が行われているそうです。

と、そんなくどくどしい蘊蓄は抜きにして、ただ直感でお選びいただいても構いませんし、むしろそのほうが健康的でしょう。

60×60cmのサイズは頭や首にあしらうもよし、大判のハンカチとして使うもよしと、どうにでも活用できます。

気温の浮き沈みはあれど、これから夏に向かい汗ばむことも多くなりますから、時期的にもお薦めですよ。

オンラインストアはこちらです→
POIS GIPSY ノワール/ インディゴ/ ルージュ
COROMANDEL ブラン
CASHMERE ノワール/ ルージュ
QALAMKARI グリ
AUBEPINE ブリュ


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