ここではない、どこかの国のお話。
秋から春にかけて開かれる、移動式のティーガーデンがありました。
ティーガーデンというのも聞いたことがあるようであまりなじみのない名前ですが、18世紀にロンドン及びその近郊流行した、一種の遊園地のようなものです。
庭園内にはたくさんの花が植えられていて、さらに遊歩道や生垣を利用した迷路が設けられたり、池や泉や彫像が配されていました。
その池では、ボートで舟遊びもできたとか。
木陰の休憩所として、オリエンタルな雰囲気のあずまやが設置されていて、庭園の中央に設けられた音楽堂での演奏を愉しみながら、軽食をとったりお茶を飲んだりするわけです。
ティーガーデンは男性、女性、子供、すべての人に開放された憩いの場所。
当たり前のようですが、わざわざそんなことを付記するのは、それ以前に交流の場として主流だったコーヒーハウスが男性専用だったから。
ですので、かつて女性が紅茶を愉しむには、自宅以外の選択肢がありませんでした(なお、男性はコーヒーハウスでもお茶を飲めたとか)。
そんな多くの人が集まる気持ちよい庭園ですから、温暖な4月~9月にかけてのみ開かれていたと聞きます。
これをふまえますと、冒頭の移動式ティーガーデンの開催時期は通常と逆転していますね。
その不思議なティーガーデンは、霧の収集家と呼ばれる女性が、癒しを求める人たちに向けて、霧の立ち込める時期に限定して開いています。
彼女がそこで着用しているのが、このSankayo classic shirtです。
Sankayo、すなわちサンカヨウ(山荷葉)は白くて小さな花を咲かせますが、雨に濡れるとその花びらがガラス細工のように透き通る、とても素敵な植物です。
涼しい山地~亜高山に自生し、濃霧のなかや、朝露に濡れた状況でその現象が見られると云います。
と、霧にまつわる名がつけられたこのシャツは、霧の収集家たる彼女にとって正装であり作業着でもあります。
しっかりとしたハリとコシがある中厚手の生地は、オーガニックコットンを用いて織られたもの。
生機をバイオウォッシュした以外に加工は施されておらず、素材の風合いがそのまま活かされました。
糸節やネップ、異原糸などがちらほらと混入していますが、それは決してネガティブではなく、むしろ風合いをより一層魅力的にしてくれています。
シャツ自体に目をやると、ペンなどを挿すのに具合のよい胸ポケット、広めのアームホールから生まれるボリューミーな袖など、
どこか可愛らしさを含ませながらしっかりと作業着としても考えられてデザインされているのがお判りになることでしょう。
袖口の刺繍といったドレッシーな意匠が加えられ、一筋縄ではいきません。
作業着的なのに上品、キュートで骨太、そんな相反しそうな要素が、複雑に、そして美しく絡み合ったシャツです。
オンラインストアはこちらです