秋の長雨とはほんとうによく云ったもので、2週間ほど靉靆とした空模様が続いています。
次から次へと秋冬の商品が届いているというのに、こんなに薄暗い日ばかりだと環境が整わず、オンラインストアにしてもブログにしても撮影ができやしません。
明日からはようやくお天道様が戻ってきてくれるそうですが、本日も一瞬の晴れ間の恩恵を受け、ここにようやくZDAの新作を皆様に披露することが叶いました。
ランニングシューズの”Marathon”、室内球技用シューズの”Trainer”に続くさらなる刺客、軽登山用ラインの”Climber”。
ただでさえ謎に満ちたZDAのなかで、このClimberは特に不明点が多い…というより、不明点しかないようなシリーズです。
この靴ひとつにしたって、過去の製品を調べるうえで頼りになるЮрай Шушка(Yuray Shushka)氏の資料を探してみても、該当しそうなものは見当たらず、もはやZDAネームで製造されたモデルかどうかも疑わしい。
ZDAは実際に当時の工場に残っていた型を使い現地で再生産してはいますが、ついでに他のブランドで作っていたであろうモデルまでしれっと自社製品として復刻してしまうという、信じられないほど緩いスタンスですので…
それはさておき、靴単体として見れば、たしかな魅力に満ちています。
上記の理由でモデルの背景等はまったく判りませんが、デザインから察するにアプローチシューズではないかと思われます。
アプローチシューズ、登山を好む方以外にはあまり馴染みのない呼称かも知れません。
ロッククライミングを実行するにあたり岩壁まで向かう(=アプローチする)道中に履く靴です。
あくまで目的は岩壁への到達ゆえ、そこまで重厚な登山靴は必要とせず、さりとてアスファルトを前提としたスニーカーで歩けるほど生ぬるい道でなし。
そうしたシチュエーションには、ほどよく軽快で、しかしゴツゴツした山道に負けない頑強な靴が最適です。
たとえばこの靴を見れば、スウェードとスムースレザーを重ね耐久性を高めたアッパー、
足のブレを防ぐためつま先までフィット感を調節できる外羽構造、
硬くざらついた岩との摩擦によるアッパーの損傷を防ぐ補強のランドラバー。
まさに岩稜帯での活動を想定した仕様です。
一方で、ソールはそこまでスパルタン路線ではありません。
軽く、そしてクッション性に優れたミッドソールに、滑り止めもそこそこに、しなやかに屈曲するアウトソールが採用されています。
アプローチシューズによっては、簡単な登攀にも対応できるよう、アウトソールの爪先あたりに粘り気があってフラットな部分(クライミングゾーン)が設けられていますが、この靴にはありませんので、なるべく履いたまま岩に登らないでください。
履き心地は見た目からは想像できないほど良好で、ゆえにハードな環境での使用にはあまり対応できないと思われます。
通常の歩行に適した柔らかいソールは重い荷物を支えきれないだけでなく、爪先だけで踏ん張ることができず、転倒や滑落の原因となりかねないため、山の悪路には適しませんので。
また、特に防水機能なども付与されていないようです。
ですので、アウトドアでの使用は、ちょっとしたハイキングやバーベキュー程度にとどめた方がよいでしょう。
一方で、市街地でと考えると、前述の通り履き心地に優れ、歩きやすいというのは大きなメリットです。
ぱっと見インパクトの強い配色も、いざ装いに合わせてみれば驚くほどかろやかに溶け込みます。
この絶妙な曖昧さ、まったくいつだってZDAは期待を裏切りません。
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