いちばん素敵な 恋の魔法をはじめよう ~ Padmore & Barnes

温暖になるにつれ、気楽な靴が履きたくなっています。
スニーカーだけでなく、革靴でも、力の抜けた、のんきなものを。

その気分の高まりにあわせ、春の提案として、当店では初登場となるブランドをご用意しました。

40代くらいの方には懐かしいのではないでしょうか、Padmore&Barnes(パドモア・アンド・バーンズ、以下P&B)。

P&Bは1934年にアイルランドのキルケニーで創業した靴工場です。
1964年には英国C.&J. Clark社の傘下となり、”Clarks”名義の数々の名品を生産しました。

世界的に販路の拡大を図るClark社の望む生産規模を持ち合わせていなかったこともあり、1987年には資本関係を解消、MBOによって再度の独立を果たしています。

店主の記憶によると90年代後半…1997年ごろまではアイルランド製のClarksは普通に販売されていましたので、その後しばらくはClarksの工場として仕事を請け負ってはいたようです(ただ、これについては資料が見つからず、推測の域は出ていません)。

しかし、大手直属の下請け工場として過ごす時間が長すぎたためか、経営はうまくいかず、2003年に廃業してしまいました。

ところが2012年、Frank Bryan氏により創業の地キルケニーにて復活。
生産国こそポルトガルに変われど、当時の木型をそのまま使用し、あのころの面影と変わらぬ靴を今に至るまで作り続けています。

木型の話をもう少し掘り下げますと、1960年代からClarksブランドの靴の生産に使用していた木型は、現在Clark社ではなくP&Bが所持しています。

ゆえに、往時の雰囲気で同型の靴を手に入れるとなると、P&Bは有力な選択肢として成立するわけです。

さてそんなP&Bからは今回2型が届いておりまして、まずご紹介するのはこちら。



もはや一般名詞「ワラビーブーツ」としても通用するほどの名品”Wallabees”のP&B名義モデル、”ORIGINAL”。

“ORIGINAL”の名然り、中敷表記の”Originals”、”Designed in Ireland”といっても、べつにP&Bが考案したわけではないのですが、もっといえば実はこの靴、Clarksが最初に手掛けたのでもありません。

真のオリジナルは、ドイツSioux社の”Grashopper”です。

代々アメリカに住んでいたドイツ系移民の末裔であるSiouxの創業者Peter Sapper氏は、アメリカの優れた靴であるモカシンをドイツの市場向けに作るビジネスを思い立ちドイツに帰還、ブランドにもモカシンを彷彿させるネイティブアメリカンのスー族(Sioux)の名を冠し、Grashopperを発表しました。

このGrashopperに目をつけたClark社は、Siouxとライセンス契約を締結。
その数年前に買収したP&BにてGrashopperを生産し、販売数に応じたロイヤリティをSiouxに支払うこととなりました。

そして英国を越え海外展開を計画、アメリカ進出の準備をしていると、すでに”Grashopper”の商標が登録されていることが判明します。
そこで、袋のような靴→有袋類のイメージから、WallabyをもじったWallabeesと名づけました。

余談ですが、なぜかSiouxとの契約では当初Clark社の名は出せなかったようで、P&Bが生産した”Moccasin”なる謎ブランドの靴として販売されたとみられる写真が残っています。

あらためて靴を見てみますと、ここしばらくのトレンドから完全に隔絶されたデザインが、いまとても新鮮な輝きを放ちます。

前述の通りWallabeesの名の由来となった、足を覆うように包み込む、肉感豊かな袋状の構造。

木型はやや細めで、現行のClarksにくらべすっきりした輪郭を描きます。
斜めに流れるスクエアトウも特徴的ですね。

天然ゴムを使用したクレープソール。
屈曲性に優れ、また自然なクッション感もあり、春の軽快さを引き立てます。

この素材はどうしても汚れが付着しやすく、すぐ黒ずんでしまうため、最初から濃色のものも出てはいるのですが、汚れるのもクレープソールの経年変化のひとつとらえれば、自然な風合いの淡色こそ儚い美しさを感じるものです。
ゆえに、敢えて白色のものを選びました。

さて、もうひと型の”WILLOW”もご紹介せねば。



靴全体をぐるりと囲むハンドステッチが印象的なこのモデルはClarksでは”Weaver”という名でリリースされているもので、Wallabeesを下敷きとしてClarksとP&Bで共同開発されました。

ORIGINALにくらべ肉薄の履き口から、

円みを帯びたシルエットがふんわりと拡がります。

見た目通りに、圧迫感のない、開放的な履き心地です。

こちらも白色のクレープソール。

店主もさっそくこのWILLOWを履いていますが(お客様分とは別で自分用に一足追加して発注しました)、実に快適で、足取りも心も軽くなります。
薄いベージュが少し煤けてきて、それがまたとてもいい具合です。

どちらの靴も独特の魅力に満ち溢れ、格好つけすぎない大人の普段履きとして、ひとつの最適解ではないでしょうか。

まずは初回ということで少量のみの入荷です、気になる方はお早めにどうぞ。

オンランストアはこちらです→
ORIGINAL MID テラスウェード
WILLOW MID ライトベージュスウェード


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