すでに高い人気を得ているブランドだったり、著名な業界人が注目を公言しているブランドを仕入れるのは、服屋のバイヤーにとって別に難しい話ではありません。
むしろ簡単とも言えます。
おまけにビジネス的に高い打率が見込まれますから、仕事としてはまこと効率がいいやり方です。
しかしながら、仕入れる側にとっても、それを売る側にとっても、そして買う側にとっても、新鮮な提案性のない場というのは退屈に過ぎます。
少なくとも当店はそう考えますし、そのためブランドの知名度の高さは仕入れの判断基準としてときにマイナスに働きさえします。
ただ、まだ世間に周知される前に取扱いはじめたブランドを支持する人がどんどん増えていくのは、とてもうれしいもの。
不遜な言い方をすれば、幼な子の成長を間近で見られるよろこびがそこにはあります。
今回初登場となるPETTY(ペティ)の服からも、きっとその大いなる坂を上っていくであろう未来像が見えました。
PETTYは、川崎市出身の若きデザイナー板倉北斗氏の手掛ける新進ブランドです。
ブランド名はどうやら板倉氏の昔の綽名に由来するそうですが、「恥ずかしい話なので詳細はヒミツ」とのこと。余計に気になりますね。
機屋さんに足繁く通い、ときには泊まり込みで職人さんの手伝いをしたり、動いていない機械を自分で整備したりしながら実地で得た知識・経験・人脈を活かし、2019年に本格的な活動を開始。
爾来ユーザーへの直販を丁寧に行ってきました。
そんななか光栄にも当店にお声がけいただき、このたびブランド初の正式な卸先として取り扱いを開始することになった次第です。
服作りのベースはヴィンテージやアンティークからの着想ではあるものの、その表面的な再現は目指していません。
「文化的な思想・手法によって作るリアルクローズ」を標榜し、あくまで現代の、そしてコスプレにならない適度な距離感を保った服を作りだしています。
このジャケットも、1930年代のハンティングウェアやモーターサイクルジャケットを彷彿させながらも、過去に存在しなかったであろうデザインです。
背中の腰部分に帯状のパーツを縫い込み、フィット感と防風性を高めています。
肉厚で彫りの深いコーデュロイは、繊維の細い綿の糸を用いて、高密度に織られました。
水でじっくり丁寧に揉みこまれているのもあって、迫力のある質感でありながら、意外なほど柔らかい生地です。
しっかりとした剛性感と防風性が付与されました。
ジャケットに袖を通してみると、どっしりとした心地好い重みがあり、守られているかのような安心感に包まれます。
現代の感覚では、ジャケットというよりもコートに近いくらいの力強さです。
デザイン、素材、着心地と、どこをとっても仄かに一癖あって、決してトレンディとは言い難い。
けれど不思議と古さは感じさせず、なおかつ今後何年何十年と着倒していきたくなるような服。
その絶妙なバランス感覚がPETTYらしさと言えるかも知れません。
今後が楽しみな俊英の美しい萌芽、まずは店頭にてご覧あれ。
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