早逝した曽祖父母は麻布で帽子店を営んでいたそうで、その息子である祖父もまた生前帽子を愛用していたのを、いまでも憶えています。
ところが、その曾孫・孫の立場にしてもいざ自店に置くとなると、なかなか保管場所をとるものゆえ(狭小店舗ですので…)、どうしても後回しにせざるを得ません。
そんなわけで入荷のご案内は年に一度あるかないかくらい。
しかし、その原因であるスペースをなんとか確保したくなるくらいの新星が現れたなら、話は別でしょう。
当店初登場となるHOED(エイチオーイーディー)は、今年の春に活動をスタートしたばかりの帽子専業ブランドです。
ブランド名の綴りは、オランダ語でそのものずばり”帽子”を意味します。
職人でもあるデザイナー自身の手によって一点ずつ作られるその帽子は、どれも何の変哲もないようでいて、素材選びや形状のバランスに寡黙な信念が感じられます。
デザインコンセプトによってブランドを3つに分けて展開し、当店でこのたび取り扱うのは男性向けの”high standard”ラインである”HOMME”レーベル。
とはいってもブランドネームのラベルすらつけない(そしてデザイナー氏ご自身の素性を公開しない)ほど奥ゆかしいブランドですので、その違いは帽子そのものをご覧になるしか判別できませんが。
オランダ語+フランス語で組み合わされる銘が暗に示す通り、どこか特定の国やそれに基づく明確なファッションスタイルではなく、無国籍で中庸な雰囲気を纏った作風です。
さて、肝心の帽子について話をせねばなりませんね。
何せブランドが立ち上がったばかりで、手作業ゆえ量産もできないため、まずは一型、ベースボールキャップ”6 PANEL CAP”のみの登場となりました。
クラウンの部分が浅く、ブリムが長い形状です。
この絶妙なバランス感もあって、「野球帽」とは呼べないほどスポーティーさを削ぎ落した雰囲気に仕上がっています。
なお、ブリムには曲げられる芯材が入っているため、お好みのカーブを入れることが可能です。
オーガニックコットンを用いて織り上げた柔らかな生地は仄かに起毛し、素材感としては通年というよりは秋~春先まで使いやすいと思われます。
ベースボールキャップにしては比較的珍しく、キュプラの裏地が設けられています。
キュプラは肌触りがなめらかなだけでなく、吸排湿性にも優れているため、たしかに理に適ったチョイスと言えます。
柄合わせも綺麗ですね。
フリーサイズですが、後面のアジャスタで若干の調整は可能です(目安として、頭囲58~60cmくらい)。
このベルト部分には牛革が採用されており、使い込むほどに手に馴染み、風合いも増していきます。
飾り気のない帽子ですから、なかなか画像や文章であれこれと説明してもきっと伝わりにくいはず。
是非とも一度実際に被っていただき、その魅力を直にお確かめください。
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