見えないモノを見ようとして 望遠鏡を覗き込んだ ~ tilt The authentics/ Heavy Double Cloth Semi Raglan Harrington Jacket

10月も中旬に突入、当店ではただいま秋冬物の入荷ラッシュ真っ盛りです。

店内の密度がすさまじい勢いでどんどんギュウギュウと濃くなっていって、撮影もご紹介もまったく追い付きません。

同時に、撮影を前に巣立ち始めている服もございまして、オンライン上でだれにも気づかれることなく店頭から姿を消してしまった服もちらほらと。

このブルゾンもそのように無くなってしまう前に披露せねばと焦りつつ、カタカタとThinkpadのキーボードを叩いています。


トラディショナルなドッグイヤーカラーのハリントンジャケットを、tilt The authentincsのフィルターを通して再構築し、まったく別物へ昇華した一枚です。

生地からパターン、仕立てまで、見れば見るほどtiltらしさが浮かび上がってきます。

まず用いられている生地からご覧いただきますと、超高密度の平織生地を接結糸で両面合わせたヘビーダブルクロス。

ごく単純化した表現をするならば、2着分を1枚にまとめてしまったような生地です。
そのため、裏地のない一枚仕立てであっても、型は崩れず、またしっかりとした防風性を発揮してくれます。

フロントはYKKエクセラのダブルジップ、

両脇には大きなフラップつきポケットが設けられ、見た目の美しさだけでなく、使い勝手の良さもじゅうぶんに考えられています。

袖付けもまたユニークで、一般的なラグランスリーブと思いきや、肩の途中から線が始まる独特なセミラグラン仕様となっています。

そして裏面、これが店主の老眼ではもう何をしているのかよくわからないというのが正直なところでして…

割り伏せ縫いされた生地の端をご覧あれ。
生地の耳でもなければ通常のパイピングでもなく、薄く細く、何か特別な処理を施すことでほつれないようになっています。
いったい何をしたのか、これはデザイナーの中津さんに確認し忘れてしまいましたので、後日聞いておきます…。

ともあれこの部分だけでも、仕立て技術の高さが窺い知れますね。

もちろんこうした「点」をじろじろと見なくとも、一度袖を通せばいかに丁寧に作られた服なのかは感覚的にご理解いただけます。

あからさまにマニアックなデザインでないだけでなく、適度なゆとりをもちながらもすっきりとしたサイズ感、短すぎない着丈のため、さまざまなテイストの服に合わせやすく、いまから春にかけて何かと重宝するはずです。

実用面がしっかり考えられたリアリティと、細部のパターンワークや縫製に見られる偏執的な作り込み、それがごく自然に両立してしまうのが、まさにtiltの面目躍如と言えましょう。

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