老愁ハ葉ノ如ク掃エドモ尽キズ 蔌蔌タル声中又秋ヲ送ル ~ quitan/ WELDER’S JACKET & WORK PANTS

言うまでもなく、我々の住むこの地球上には、多種多様な文化や風習が存在します。

民族の違い、ことばの違い、宗教や道徳観の違い、社会構造の違い、そうしたあらゆる違いは必ずしも反目するわけではありません。

しかしまさにいまイスラエルで起きていることですが、本来はお互いを尊重しながら共存し得たはずなのに、不幸な要因が重なることでいつしか争いが生まれ、争いは両者の憎悪を育み、やがてこじれにこじれた惨劇に至ることもあります。

あらゆる差異に対しては第一に敬意を持って迎え認めるべきであり、片方を「正しくない」として自文化の「正しさ」で上塗りするのは不幸なことです。

20世紀に拡大したグローバリズムは、世界の距離を縮めた一方で、そうした個々の文化を平滑に均しすぎてしまいました。
これも一種の「上塗り」と言えます。

ある文化が別の文化から影響を受け、採り入れて消化し、新たな文化へと発展させていく、その豊かな流れは、差異あってこそです(よく云われるところの「文化の盗用」というのも結局は欧米的な偏った発想のように思われますが、この自然なプロセスのなかに極端な力の不均衡が存在したり、また引用元へのリスペクトが欠落していた場合は、ときにそう呼ばれるような現象に陥るのでしょう)。

しかしそうしてだんだんと「上塗り」が重ねられていくたびに、差異から生まれる刺激的なきらめきは失われていきます。

そんななか、ひとつひとつの異なる文化を「点」として線で結び、その豊かさを再検証し「いきいきとした文化との交歓の記録」として服を生み出していく、それがquitan(キタン)です。

当店ではこの秋からお取り扱いをはじめるこのquitanは、2021年にスタートした新しいブランドながら、「綺譚」の名の通り美しいことばで物語を紡ぐような服作りにはすでに老練な風格が漂います。

すでに今季オーダー分すべてまとめて納品されてはいますが、ご紹介は段階的に進めていきますね。

というわけでまずはデニムのジャケットとパンツをご覧ください。



ともに使われているライトオンスのデニムは、1940年代の米海軍のデニムトラウザーズの生地を解析して織り上げたもの。

緯糸には白でなくグレーの糸を使用しているため、メリハリの利いたブルーではなく、褪せていくような独特の調子で色落ちしていきます。

また、このデニムは生産の過程の環境負荷にも配慮されており、世界最高水準の安全な繊維製品の証であるエコテックス(OEKOTEX)スタンダード100の認証を取得しています。

裏地のない一枚仕立てのスタンドカラージャケットは、かつて英国の溶接工が用いていた分厚いリネン製の上着を再構築してデザインされました。

脇腹に近い位置に設けられた胸ポケットが全体の印象として重心を下げ、ちょっと愛嬌のある雰囲気を生み出しています。

左右の脇にぽつんとついた白い閂ステッチは、ハンドポケットの内布を留めるための仕様です。

お次はパンツを。

こちらは欧州の旧いワークパンツを下敷きにしており、股上がしっかりと深い形状をしています。

サスペンダーボタンや

背面に切り込まれたV字の開き、尾錠など、

もともと実用的な意味があったにもかかわらず合理化とともに削られていった仕様が再現されました。

どちらにも言えるのは、いわゆるヴィンテージレプリカと似て非なる設計思想です。

サイズバランスなどは往時の服の特徴を採り入れながらもきちんと現代の服にアレンジされており、昔のワークウェア特有の重さ、硬さのない着心地となっています。
古着マニアっぽさやコスプレっぽさがないとても言いましょうか。

外から文化を受け入れながら、完全に迎合するのではなく、その佳さを認め、自文化のフィルターを通して拡大させていく。
そんなquitanの服をこれからも引き続きご紹介してまいります。
どうぞご期待ください。

オンラインストアはこちらです→ WELDER’S JACKET/ WORK PANTS


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