Stella splendens in monte ut solis radium
miraculis serrato exaudi populum.Concurrunt universi gaudentes populi
divites et egeni grandes et parvuli
ipsum ingrediuntur ut cernunt oculi
et inde revertuntur gracijis repleti.Principes et magnates extirpe regia
saeculi potestates obtenta venia
peccaminum proclamant tundentes pectora
poplite flexo clamant hic: Ave Maria.Llibre Vermell de Montserrat “Stella splendens” (fol. 22r)
バルセロナ郊外のモンセラート修道院に伝承されている、14世紀の宗教文書の写本『モンセラートの朱い本』。
同書にはモンセラート修道院へ参ずる巡礼者たちが「誠実かつ敬虔」に歌い踊られるための10曲の歌謡が含まれていることで知られていますが、冒頭はその2曲目、ヴィルレー《輝ける星よ》の歌い出しです。
今季のquitanがテーマとした文化行動は、「巡礼」。
そこから聯想して、この一節が引用されたそうです。
ラテン語はひじょうに難しく、店主の乏しい学力ではとても翻訳ができないため、quitanによる意訳を載せますと
険き山から 輝く星よ
陽の光のように 人々のことばを聴き給う
どんな人も満たされ 集まるだろう
富める者も 乏しき者も
老いた者も 幼き者も
わたしたちの目で 彼らの到着を見届けて
もう一度 声をあげましょう
アヴェ・マリアと
このような内容となります。
カトリックに於ける信徒には、教皇から司教、一般信徒に至るまで何層もの明確なヒエラルキーが存在してはいますが、そこには実際の社会階層が(少なくとも建前上は)反映されません。
先の歌にもあるように、一般信徒という点では貧富も年齢も関係く、ひとつの信仰を軸に、行動や習俗が共有されます。
今回のコレクションテーマである「巡礼」に立ち戻りますと、キリスト教圏に限らず、巡礼は古今東西を問わず行われてきました。
表面的には文化的な差異に見えるようなことでも、本質的には通底していたりするもの。
階層を超えた交流や異文化間の交流は、その根の部分での共有があるからこそ可能なのでしょう。
このシャツにもまた、「共有」の物語が込められています。
年齢も男女も、体型もほぼ問わず包み込む、たっぷりとしたワイドなサイズバランスのシャツで、身に纏うと生地のゆとりが体のラインに沿って流れるよう設計されています。
一方背面は着物のような袖付けとなっており、この仕立てもまた老若男女の垣根を超えるものです。
しっかりとしたコシと厚みのあるコットンシルクの生地に、プリントやジャカードではなくもっとプリミティブな方法で染色がされています。
植物を無地の生地に散らし、そのまま巻き込んで縛ったまま蒸しあげることで、色素が布に転写される、バンドルダイと呼ばれる技法です。
どんな柄が生まれるかは、やってみないと読めません。
この染色工程は、東京の福祉施設で働く人たちとquitanチームの共同で行われました。
作業のみならず、その偶発性も「共有」しながらつくられた生地というわけです。
正直なところ、単にシャツとして考えるとかなり高額な品となりますが、これはもう作品と呼べるものであり、その類稀なる魅力を心から「共有」できるだれかのもとに届くであろうことを、心から信じています。
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