4年の時を経て、writtenafterwardsが仲町台に帰ってきました。
その間はこちらから距離を置いたとか何かトラブルがあったとかではなく、通常の卸が休止していただけでして、ブランドの活動のみならず衣類そのものについて幾度にもわたって思索を繰り返していた時期だったようです。
ときには、蚕の糞や桑の葉などが混ざった堆肥に染色で使用した藍のカスを混ぜてオリジナルの土壌を作り、和紙で作った衣服をその土の上に置いて、どのように還り、どのような土壌と植物が生成されていくのかを実験、商品は販売せず、なんて衝撃的なシーズン(?)も。
その後、一般販売される(とはいっても販路はかなり限られていましたが)服がwritten byネームに統一され、ようやく卸販売が再開されたのは今年の春夏シーズン。
急な話だったためこちらも仕入れるタイミングを逸してしまったのですが、一呼吸を置いて、ようやく再開の運びとなった次第です。
コロナ禍やら戦争やら虐殺やら悪政やら、国内外問わず辟易とした日々が続く昨今。
それでも日常の生活は続きます。
ただ、「日常」もまた平和なようで、せわしなく、細やかな喜びがあって、ときにホロ苦い切なさも訪れたりするもの。
そんな情景を”bittersweet sympathy”と題し、今季のコレクションテーマとしました。
而して本日ご紹介させていただくのはこちら。
厚手のシャツ生地で仕立てられた上着です。
まず目を惹く花柄は、紙を編むという独自のスタイルでさまざまな作品を展開する2人組のユニットRivotorto Piecesが手掛けています。
一枚ずつ手で染めた和紙を素材に、花弁の形にカットして張り合わせることで、自然な立体感が生まれます。
押し花でつくった栞のようにも見えますね。
この和紙の花束を、陰影も再現してスーピマコットンの超高密度タイプライターにプリントしました。
日常のなかのうれしいギフトから着想し、「いま、ここ」の刹那と永遠を色彩の祝福に込めた表現です。
服自体を見ていきますと、やや着丈を長めにとったサファリジャケット調のデザインで、
そして両脇ポケットの隣にハンドポケットが設けられている、実用的なつくりとなっています。
袖はピボットスリーブ。
狩猟用の服に見られる、可動域の広い形状です。
腰と裾には共生地のドローストリングが通されており、これを引くことでシルエットに変化をつけたり、冷気の侵入を防ぐことができます。
こうして抒情的なテキスタイルにギア寄りの構造が合わさり、他に類を見ない一着が生まれました。
余談ですが、実はこのシャツジャケット、当初はコレクションとして用意されておらず、展示会でひっそりと白い生地のサンプルがかかっていたのを店主が見つけたのが誕生のきっかけです。
販売用に用意されていたというより、デザイナーの山縣さんがご自分で着ようかなと思いながら組み立てていたもののようでしたが、ダメ元で「この型をこの(別の服に使われていた)花の生地で作ってみてもらえます?」と打診してみたところ、まさかのOK。
そんな経緯もあって、個人的にもとても思い入れの深い一枚となりました。
決して万人向けの服ではないかも知れませんが、そういう服だからこそ持ち得る強さというものがあります。
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