お盆も過ぎると、すっかり夏が終わったような気分になりますね。けだるい残暑も秋に向かう繋ぎのように感じます。
梅雨明け前に入荷したこの商品もようやくこの場で披露できる時期になったのではないでしょうか。
イングランドのワークウェアメーカーYarmoの新ライン”CC41″シリーズのダスターコートをご紹介します。
ダスターコートというのもあまり聞きなれない呼称ですが、元来は埃避けを目的としたコートで、たとえばダッフルコートのような定まった形状があるものではありません。
トレンチコートもダスターコートの一種として扱われるようです。
このコートは肉厚かつ柔らかな左綾織ツイルを一枚仕立てにしたもので、とても広く取られた肩幅、身幅と短い袖が最大の特徴となっています。
すなわち着ると肩線がほぼ水平に落ち、二の腕の途中から袖が始まるような構造です。
そしてこのたっぷりとられた身幅により着用時美しいドレープを湛えたAラインが生まれます。
この独特な形状が一件シンプルなワークコートであるこの服に現代的なニュアンスを与えて、何とも魅力的な一着に仕上がりました。
さて、そんなコートをリリースした”CC41″、そもそもこれは何なのかというのも気になるところ。
ちょっと長くなります。
第二次世界大戦のさなか、物資が不足していたのは何も日本だけの話ではありませんでした。
アメリカでリーバイスがヒップポケットのステッチを無駄な仕様と咎められ終戦までペンキでステッチ状のペイントを行った(そのパロディがエビスジーンズのペンキステッチです)というのは、ヴィンテージジーンズブーム世代の男性であればきっとご存知でしょう。
英国でもそれは同様で、1941年に原材料も含めCivilian Clothing=民間衣料の仕様を定め、服の裏地やパンツの裾の折り返しなどのさまざまなディテールを過剰なものとして規制する法令が設けられました。
基準から外れた民間流通品には変動制で高い税をかけ、逆に基準に沿って認定工場で生産されたものについては”CC41″印付与の上免税とし、国民服としての普及を図ったのです。
そしてそれは衣料品に限らず、靴や家具などさまざまな生活必需品にも及んだことから
この”2つのチーズ”と称されるマークはもっと幅広くControlled Commodity=規制下の日用品として意味づけられるようになりました(デザイナーはCivilian Clothingを念頭にロゴを作成したといわれています)。
政府主導でしたが企画にはプロのデザイナーを複数名起用し
ファッションの要素を削ぎ落しすぎなかったことも功を奏して、結果的にこの”CC41″は消費者にとっては安く、簡素であってもしっかりとした品質を備えた商品の目印として認識され、現在の古着市場でもそのオリジナリティゆえマニアに高い支持を受けています。
そんなCC41をこの度自社の商標としてYarmoが取得し、シンプルな構造で安価な、しかしレギュラーラインとは異なる独自の魅力を持ったラインのブランドとして今季から始動しました。
本来のCC41規格は1950年代に廃止され、現在は英国政府は何も関与していませんが、このコンセプトを踏襲しつつもよりポジティブな発想の現代の服のブランド、新生CC41として新たな歴史を刻むことになったということです。
この生地ひとつとっても、新品の状態よりも着込んで洗ってを繰り返せば風合いが増していくのは目に見えています。
オリジナルのCC41がそうであったように次の世代へのヴィンテージウェアとして繋がっていく、そんなポテンシャルを感じざるを得ません。
秋本番に向け、是非ご検討ください。
オンラインストアはこちらです→ チェスナット/ ネイビー
(追記)
8/26 STYLER MAGにて特集記事として取り上げていただきました!
→http://stylermag.link/2016/08/26/euphonica-koreii/