個人的に、毎年この日が近づくと胸の奥がチクチクと小さな針で突かれたような心持になります。
今回の話は時折各所でしていますので、既知の方は読み飛ばしていただいても構いません。
もう四半世紀前のこと、取るに足らない、ささやかな甘酸っぱい思い出です。
時は1991年、店主少年はまだ幼さ残る中学一年生。
11月くらいからでしょうか、同級生のAくんが毎日のように話して聞かせてくれました。
クリスマスの日に彼の家で友達を大勢招いて行われるパーティーの素敵なプランを。
だれそれが来るんだよ、プレゼント交換もするんだ、目をキラキラさせて逐一伝えられる彼の計画を聞いて、私もその日が待ち遠しくなったものです。
さて、その年のクリスマスに両親から貰ったプレゼントは靴でした。
当時『SLAM DUNK』で桜木花道がバッシュを買う回があった影響で、わが校にも空前のナイキブーム、バッシュブームが巻き起こっていました。
ただまだそのころはナイキの靴など地元で手に入るものではなく、「NIKE AIR」と机に彫った同級生が「お前これ読めるか?」と聞いてくるようなのどかな時代です。
私もはっきりとナイキを認識できるまで至っておらず、絵を見せてこんなのが欲しいんだけど、と親に強請って買ってもらったのがSOALERとタンに書いてあるミッドカットの靴、ナイキではないのは判っていたものの、そこはあまり気にせず何となく格好いいと思って、早速クリスマス会に履いていくことにしました。
プレゼント交換には、そのころ流行っていたビッグサイズのお菓子、具体的にはおっとっとを準備し、胸を弾ませてAくんの家へ。
到着した頃にはすでにAくん宅の前には何人もの同級生が遊んでいました。
「やあみんな、おはよう!」
そのときAくんが驚いた顔で発した言葉は忘れられません。
「あれ、どうしたのこんなところに。珍しいね」
愚鈍な店主少年、そこで初めて気づいたのです。
クリスマス会の詳細については教えてもらっていたものの、別に自分が招かれていたわけではないことに。
「いやあ、たまたま通りかかっただけだよ」
私はつとめて冷静を装いそう答え、おっとっとを自転車の籠に載せたまま一路帰宅の途に就きました。
年が明けてSOALERを履いて登校し、同級生たちからは何だよそのダサい靴と夥しい罵声を浴びせられ、人はこれほどまでに持ち物で評価されるものなのか、そして無知とはなんと恐ろしいことなのかを思い知ることになります。
それが私が本格的に靴やファッションに興味を持った瞬間であり、いわばEuphonica誕生のきっかけです。
皆様もよい祝日をお過ごしください。
メリークリスマス!