コロナ第一波が猛威を振るう緊急事態宣言下、かつシャツにして3万円という決して安いとは言えない価格にして、大反響を賜り、予想を遥かに上回る速度で完売してしまったKIMURAの5needles。
その独創性、目を疑うほどの作り込み、そして着用時の圧倒的な美しさは、KIMURAがあらたなステージへ進んだことを確信させるものでした。
先日繊研新聞でもご紹介いただいたように、
デザイナーである木村さん公認で『あつまれ どうぶつの森』でも配布していますので、ご興味あれば是非ダウンロードしてみてください。
さて、そんな5needlesですが、この夏さらなる狂気の彼岸に到達。
そこはもうだれも見たことのない境地です。
その名も5needels/split raglan sleeve。
ではさっそく深淵を覗いてみましょう。
5needlesシリーズの最大の特徴である3mm幅に打ち込まれた5列のステッチには、何度見ても畏怖の念を抱きます。
140双というやわらかく繊細な柔肌の如き生地、そこに緻密な運針を以て残酷なほど打ち込まれた細い縫い糸。
ふだん物腰の穏やかな木村さんの、秘めたる暴力性が迸るかのようです。
商品名の通り、シャツでは珍しくスプリットラグランスリーブの構造となっています。
前面がセットイン(通常のシャツと同じく胴と袖を接合する方式)、背面は変形ラグランです。
その背面ですが、例の5本針がたいへんなことに。
当然このステッチは直線ではなく、ゆるやかなカーブを描くわけです。
サイズによりますが約140cmに及ぶこの長い道のりを、5回も縫わなくてはなりません。
先述の通り生地もたいへんデリケートですから、一瞬のミスも許されず、縫製時には極度の緊張状態を強いられます。
しかし、木村さんのマゾヒスティックな熱情はこれでも満足しませんでした。
一般的なシャツ作りの工程では、このように袖と胴を同時に縫い上げます。
ところがこのシャツ、袖の縫い目と胴の縫い目がずれていますね。
つまり、袖と胴を同時に縫合することができません。
おまけに、袖と胴の接合も通常のシャツとは異なりスプリットラグランです。
すなわち、各部位の縫製がひじょうに難しいだけでなく、その手順もきわめて複雑という、手に負えない構造というわけです。
しかし、この苦行も、すべてはより高みへ昇らんとする飽くなき探求心ゆえ。
すべてを乗り越え辿り着いたその先には、禍々しいほどの美が待っていました。
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