ポルトガルは欧州屈指の衣類の生産地として知られています。
当店でも彼の地で作られた服や靴はしばしば仕入れていますし、お馴染みだよという方も少なくないのではないでしょうか。
LA PAZ(ラ パス)は、北部の港湾都市ポルトにて、André Bastos Teixeirasi氏とJosé Miguel de Abreu氏(二人は幼馴染同士だそうです)が2011年に立ち上げた紳士服ブランドです。
ちなみに、ブランド名はポルトガル語の「平和」を意味します。
トレンドや新しさを重視するのではなく、伝統的な、オーセンティックな服をベースにデザインされたその服は、言うまでもないことですが当地の職人の手によって生産されています。
高い品質はもちろん、大西洋に面する街ならではの風土が反映されたその色彩は、日本ではなかなか生み出せません。
今回ご紹介するシャツは、そんなLA PAZの魅力がぎゅっと詰まった佳品です。
その名も”Alegre”。
「陽気な」「元気な」といったニュアンスを持ちます。
柄は二種類ご用意しました。
まずはカクテル。
これは…マーティニ(マティーニ)でしょうかね。
マーティニといえば、先日のブログでも登場したヘミングウェイ(夏が近づくとどうしても想起せずにいられません)の作品『河を渡って木立の中へ(Across the River and into the Trees)』のなかで、主人公が「モンゴメリー将軍。15対1」とドライ・マーティニをオーダーする場面があります。
‘Two very dry Martinis,’ the Colonel said. ‘Montgomerys. Fifteen to one.’ (Chapter Ⅸ)
これはジン15:ベルモット1の超辛口なドライ・マーティニのことで(通常、4:1を上回ればドライと呼ばれます)、アフリカ戦線の連合軍総司令官バーナード・モンゴメリー将軍が、敵国ドイツ軍との戦力比が15対1以上にならないと決して攻撃を開始しなかったことと掛けているとか。
これに倣って実際にバーでそんな言い回しをしたところで、だれも感心しないと思いますが、このシャツを着るうえで知っておいても損はない豆知識です。
もう一方のパームは、椰子、それも実ではなく、おそらくは芽です(いや、実は正直自身がありません…詳しい方はご教示ください…)。
トロピカルなモティーフを取り入れながらも「南」を必要以上に強くイメージさせない、このバランス感覚にはしてやられました。
シャツ自体に目を向ければ、いたってオーソドックス。
肩や腕周りなどは、タイトではないものの、だぼっとせず肩に落ち着きます。
全体的には比較的小振りのつくりで、今回LサイズとXLサイズのみを仕入れましたが、これで最近の一般的なMとLに相当する程度の大きさです。
どこまでも基本に忠実で、構造上の遊びはプルオーバーシャツを思わせる前立て程度に抑えられています。
こうした生真面目なデザインに、しっかりしたボディの生地や真珠貝のボタンが相まって、リゾート色の強いプリントでも浮かれすぎることなく、大人の日常生活のための服として溶け込んでくれます。
プリントの色彩が穏やかなのも効いていますね。
なかなか実際に行楽地に遊びに出向くというのも難しい世情ですが、だからこそせめて服だけでもハッピーな夏の悦びを味わいたいものです。
オンラインストアはこちらです→ カクテル/ パーム