いわゆるメゾンブランドから大手スポーツシューズメーカーまで広く仕掛けられた退廃的な「プレミアム」スニーカーブームも、ようやく少しずつ落ち着いてきたように見えます。
足し算ばかりの安直安易な発想に基づく一切の合理性のない表層だけのデザイン、そうでなくとも往年の名作のリスペクトなき焼き直し。
生産数やコラボ相手などの付加価値で値段を吊り上げた、泡沫的資産価値。
それは悪名高い90年代のハイテクスニーカーブームを上回る軽薄さで、実に醜悪な流行でした。
これが時代についていけない中年のボヤキなのか否かは、後年審判が下されることでしょう。
いったいスニーカーの大きな魅力は、あくまで実用靴として設計されていることです。
ただ履きやすいとか合わせやすいとかだけでなく、何に用いるためにその靴が存在するのか、実現に至るにあたり求められる機能とは何か。
これらの結果としてのデザインであり、ゆえに最先端の道具としての役割を果たしてもなお、時代を超える普遍性が残るのではないでしょうか(とはいえ、raison d’êtreが転売によって発生する利益や刹那的な充足感であっても、ひとつの尊重すべき価値観であることは認めます。けれど、それではあまりに一過性の享楽に過ぎるように思えます)。
実用靴としての進化の積み重ねは何かを捨て何かを得ることでもありますから、逆説的に旧いディテールの魅力を認識させることにも繋がります。
いわゆる定番は一朝一夕に生まれるものでなく、こうして弛まぬ超克の反復と時間の篩にかけられ残った結果ですから、ローテクだからスタンダードといった単純な話でもないわけです。
ゆえに、各大手メーカーにおかれましては、熾烈なテクノロジー競争に身を置き、大いに鎬を削っていただきたい。
最近だと駅伝で話題になったナイキのドーピング厚底靴、ああいうのはまさに技術革新の最たるもので、ワクワクしますよね。
2020箱根駅伝 “厚底”に履き替えた青山学院大が優勝奪還/ナイキ着用率はナント84.3%に急増!(Yahoo!ニュース)
今ローテクと呼ばれるかつての名品も、もとは当時の最先端テクノロジーの結晶でした。
この靴だって現役時代はなかなかのものだったのではないでしょうか。
3年目を迎えだいぶ当店でもお馴染みとなってきたZDAのバレーボールシューズ、Trainerの2918。
この秋はスウェードバージョンが登場となりました。
横への伸びを防ぐ2本のライン、内部の湿気を逃がすべく各所に設けられたベンチレーションホール、紐と連動し爪先からサイドを抑え込むアッパー構造。
どれも純然たるスポーツシューズだからこそのデザインです。
今もなお謎の多い”S-KAISER”ソール。
しかしその耐久性とグリップ性能は本物です。
なお、今回はより室内に特化し、床に痕の残りづらいガムソールが用いられています。
2018年春夏モデルのハンドボールシューズ2900FSLに使われていたものと同一ですね。
何度見ても緊張感も躍動感もない、Trainerくんのイラスト。
この意図されぬユーモアもZDAの欠かさざる魅力です。
もちろん性能だけに着目すれば現代の最新モデルには勝てません。
しかし発表からおそらく30年以上は経った今でもなお通用するそのデザインと適切にニーズを満たした機能性は、これからもきっと陳腐化することなく在り続けることでしょう。
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