5月のKIMURAオーダー会でご注文いただいたお客様へ

たいへんお待たせしております。

5月のKIMURAオーダー会でご注文いただいたシャツの第一便が到着致しました。

今回届きましたのは
・narrowing cardigan
・KI161-SH04
・KI161-SH04
・due stand collar
・due stand collar
・yoke
・pearl button/fly front/alternation
・baseball front button
・cleric/due shawl collar
・fly front/round hem
・fly front/round hem
です。

まこと恐れ入りますが、生地の都合上、
・crew neck cardigan shirt
につきましては、8月末~9月初旬となってしまう見込みです。
どうぞもうしばしお待ちくださいませ。

宅配便指定のお客様につきましては、本日ご自宅へ出荷させていただきます。

店頭受取ご希望のお客様は、もういつでもお渡しできますので、是非ご都合の宜しいときにお越しください。
お待ちしております!


雲のかなたに ~ ASEEDONCLOUD/ Mogamibana Socks

この秋冬をもって20シーズン目に突入するASEEDONCLOUD。

そんな節目ということで、今季のテーマ”雲上花(モガミバナ)”は原点を見つめ直し、デザイナー玉井さんが我孫子幼稚園時代に描きブランド名の由来となった絵本『くもにのったたね(A SEED ON CLOUD)』その後となっています。

『くもにのったたね』をおさらいしますと、たねのぼうやが色々な動物たちに助けられながら旅をして、

紆余曲折を経て辿り着いた雲の上から見た美しい場所、そこに降り立つたくさんの花が咲き乱れていて、ぼうやも冒険で得た経験を糧に綺麗な花を咲かせる…という、幼稚園児離れした作品です。

その続編”雲上花”は、空から降ってきた種が美しい花を咲かせたことが人口に膾炙したところから始まります。

花の評判によって欲望が喚起されたのか、いつしか雲の上で花(雲上花)を人為的に咲かせようとする職人が次々と現れるようになりました。
当然それは簡単なことではなく、挑戦者は次々と失敗していきます。

こうして皆が諦めていったそんななか、一人の少年ひと組の双子(設定変更されました)がみごと咲かせることに成功しました。
彼らはたねのぼうやと同じく世界中を旅してまわり、さまざまな人と会い、知恵を授かり積み重ねた経験を糧に花を育てたわけです。

旅先で出会ったそうした人々への感謝の気持ちを忘れなかった二人は、毎年雲上花が咲くとお礼として彼らの家へ花を落としているとか…

そんな物語の余韻に浸りつつ、定番の靴下の新色を見ていきましょう。

今季の配色は、

ブルー

ベージュ

オフホワイト

ブラック。

(最上段の色が色名となります)

7~9色の糸を用いて軍足の工場で作られており、見た目以上ののびやかでやさしい穿き心地に驚かされます。

当店ではなぜか男性に圧倒的な人気を誇るシリーズですが、もちろん女性用のサイズもご用意しています。

シーズンを重ねるごとにリピーターを増やし、あっという間にサイズや色が欠けてしまう靴下です。

梅雨が明け裸足の季節本番ではありますが、どうぞお早めに。

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露にうもれた花びらが開く音さえ 聞こえてくる ~ TULIP EN MENSEN/ TWIST SHIRT

まだ明けたよと発表はないものの、およそ一か月にわたり雨の降らない日がなかった本気すぎる梅雨もようやく終わりが見えてきました。

梅雨冷えで長袖、もっといえば上着も必需品でしたが、数日前からは半袖一枚でも肌寒さを感じなくなりましたね。
まだまだ店内、夏物はずらりと揃っていますので是非今からでもお買い求めください。

と言いながら何ですが、早くも秋冬の新作の入荷は始まっておりまして、もちろん本格的なアイテムはまだですが、今置いても異様な雰囲気にならない程度のものは店頭に並んでいます。

ということで、次のシーズン商品のご紹介第一弾。
そして、当店では初登場となる期待の新ブランドのお披露目でもあります。

TULIP EN MENEN(チューリップ・エン・メンセン)は、新潟県新潟市に拠点を置くインディーズブランドです。
オランダ語で「チューリップと人びと」を意味したブランド名は、新潟の特産品チューリップを掲げ、さまざまな「人びと」との「縁(EN)」を繋ぐ意志を表します。

ニットをはじめ衣料品の産地である新潟の地の利を活かし、産地の活性化をその大義名分に溺れることなく結果としてなし得るよう、あくまで現代に於ける普段着であることを念頭にものづくりを行っています。

今夏ご紹介のノーカラーシャツもまた新潟ならでは。

米どころとして知られる新潟市の亀田郷(ハッピーターンはじめ多くの名作を放ち続ける亀田製菓でもおなじみですね)の伝統的な生地、亀田縞で仕立てられています。

亀田縞は、もともと江戸時代後期、和綿栽培の北限でもあった亀田郷の農家の冬の内職で自給用として織られていた生地で、泥や水に強く、ひじょうに耐久性に優れています。

何代にもわたる先人の努力の積み重ねによって今では豊かな田園地帯となりましたが、信濃川、阿賀野川、小阿賀野川、日本海に囲まれ、土地の大部分が海抜より低い湿地帯である亀田は、元来決して稲作に向いていた土地ではありませんでした。
芦沼とも呼ばれたほぼ湖同然の深く冷たい田圃に、農民たちは腰、場合によっては胸まで浸かりながら農作業を行っていたそうです。

おまけに水害や塩害も多く、ある資料によると、「土地卑湿、連年水害の要あり、民ほとんど生を楽しまずして、六万石となすも、いわゆる荒田荒畑その半ばをすぎ、実歳入二万石に満たざる」ような土地だったとか。

その苛烈な環境ゆえ、丈夫な布が必要とされたのは想像に難くありません。

徐々に問屋を通して農家の収入源となっていった亀田縞は、明治から大正にかけてその美しい縞模様が広く知られるようになり、亀田が織物の町として認識されるほど隆盛を誇ったようですが、需要の減少や物資統制の影響などもあり、1952年には完全に生産が途絶えてしまいました。

時は流れて2003年、亀田郷資料館に保存されていた亀田縞の布と見本帳が見つかったことから、わずか2軒の機屋さんによって亀田縞復活の取り組みが始まります。
そして、およそ4年の試行錯誤を経て再び世に出ることに。

ちなみに、TULIP EN MENSENの若きデザイナー横山英也氏は、新生亀田縞の柄デザインそのものも手掛けています。

そんな必然が合わさったシャツ、もちろん着目すべきは生地だけではありません。
じっくりと見ていきましょう。

実はデザイン上最大の特徴はこの前立てです。

男性用なのか、女性用なのか、その疑念に答えるように、左前/右前/左前…と、重なりがスナップボタンを境に交互に入れ替わります。

これにより前立てにねじれが生じ、不思議な立体感が生まれました。

スナップですので開けたときの視覚的なバランスが左右対称になり、そうした部分にもデザイナーの意図を感じます。

袖口もスナップで絞ることが可能です。

細部に至る仕事はタグにも及び、ロゴの刺繍は敢えて糸を切らず、繋がったままにしています。

先述した「縁」がここに表現されているわけです。

ユニセックスモデルで、Mサイズのみご用意しました。
女性用M~男性用Sくらいの大きさです。

秋物とはいえ、素材感、デザインともに夏の羽織ものとしても活躍することでしょう。

是非一度店頭にてご覧ください。

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YouTuberになりました

いや、タイトルは大袈裟です、すみません。

このたびFACYのYouTubeチャンネルにて、僭越ながらちょっとした指南めいたことをやらせていただきました。

自分自身が喋ってる映像を見るのは実に不愉快なものですが、FACY編集部の方が綺麗にまとめてくださいました。

どうぞご笑覧ください。

(2019/8/2追記:FACYにて音声反訳バージョンも公開されました

番組中ご紹介した商品はこちら→
IThe/ No.21KMS
HAVERSACK ATTIRE/ ブロックチェックオープンカラーシャツ
MASTER&Co.×Euphonica/ コットンリネンウェザークロスパンツ
YOAK/ STANLEY1.0


ホワイト・ラブ ~ Ithe/ No.28-HTO

先日ちらとお知らせしたItheの新作Tシャツ、結局この後数日のうちに完売してしまいました。

そのためTシャツを見たいとご来店いただいた何人ものお客様をがっかりさせてしまうことになったのですが、このたびごくごく少量ながら各サイズともに補充することができました。

せっかくなので一度きちんとご紹介することにしましょう。

Itheにしては珍しく、ゼロベースで設計されたTシャツです。

女性もの、たとえばワンピースなどに用いるようなコットンの編地で仕立てられました。

密度が高く体のラインが出にくいだけでなく、白Tにつきものの透けも軽減されています。

この企画には当店もわずかながら参加しておりまして、首周りは当方の指定で本体と共生地のバインダーネックです。

一般的に採用されているリブにくらべスポーティーさが抑えられ、より街着としての性格が強まっています。

袖、裾の始末にはItheらしさが見られ、80年代のヘインズをサンプリングした天地引き。

一本針オーバーロックミシンで折り返した生地の端を縫う方法で、表面のステッチが目立ちにくく、しかも強度に優れているのが特徴です。
いいことづくめのようですが、縫い手に技量が要求されることから大量生産に向かず、今ではあまり見かけなくなりました。

着心地を損ねる襟裏のブランドタグは省かれ、品表示タグも肌に触れぬよう、裾を出したときにボトムスにかかる位置に縫い付けられています。

優しい…。

一枚一枚パック詰めされて販売致します。

生産数から考えて、おそらく今季最後の補充となります。

初回入荷時に買い逃された方は、是非ともお早めに!

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繊研新聞の『新名店100選』に選出されました

全国から今注目すべき中小の洋服店を選りすぐり、解説やインタビューを載せた繊研新聞の連載コーナー『新名店100選』。

このたび、有難くもそのひとつとして当店が選出されました。

たいした実績があるわけでも、有名でもなんでもないのに、光栄なことです。

客観的に分析されたチャートも面白い。

なかなか自分ではわからないところです。

言いたいことはだいたいこの記事できれいにまとめられていますが、店主の話がトッ散らかりすぎてきちんと意図が伝えられなかった部分もありまして、

それがここ、

「顧客のコミュニティーには属さないようにしている」のではなく、「顧客を囲んで閉鎖的なコミュニティー化しないようにしている」が本意です。
コミュニティー化するとどうしても一種の義務感のようなものがお互いに生まれてしまい、それは健全な関係を続けるにあたり望ましくないと思っています。

あとはこのへんですかね。

服屋に限らず、この町に面白いお店がどんどんできてくれれば何よりです。

業界紙ゆえあまり一般職の皆様の目には触れる機会がないと思いますので、現物は店頭に一部置いておきます。

ご興味あればどうぞお読みください。


NO VOTE, NO VOICE

週末(7月21日)、いよいよ参院選が行われます。

とはいえ、どうせ選挙なんてやっても何も変わらない、どうせ勝敗はわかってる、めんどくさい、いろんなご意見もあることでしょうし、多数派におもねることなく自分の意志を表明する人なんて身勝手で気持ちが悪いなと感じる方はきっと少なくないであろうことも理解しています。

でもせっかくの権利、行使しない手はありません。

当店では特に選挙割引などは行わず、もちろん、どこの候補者に入れるべきだ、どの党に入れるべきだなんてことは書きませんが、政治への参加もある種装いのひとつと敢えて捉え、この時期だからこそ改めて読んでみたい、読み返したい本を3冊ばかりご紹介することにします。

1.ギュスターヴ・ル・ボン『群衆心理』/ 講談社学術文庫

19世紀末にフランスの社会心理学者ル・ボンは当時台頭しつつあった「群衆」に着目、その性質、心理について解析を試みました。
個人個人がある状況下に於いて心理的に「群衆」とでも呼ぶべき集団となったとき、それを構成する個人の性質を問わず「群衆」としての集団的精神が生まれ、構成要素である個人へ還元される、それによりどんな作用が生じるか、そうした考察がここには書き連ねられています。
かのアドルフ・ヒトラーもこの本を愛読、民衆の扇動に大いに役立てたそうです。

「とりわけ、この群衆に現れる性質は、微弱な推理力と、批判精神の欠如と、昂奮しやすいことと、物事を軽々しく信ずる単純さとである。またこの群衆が行う断定のうちには、指導者の影響と、さきに列挙した諸要因、すなわち、断言、反覆、威厳、感染の作用も見出だされる。この群衆を籠絡するにはどうするか、その方法を考えてみよう。最も成功する方法から、その心理が、明瞭に推定されるであろう」(第4章『選挙上の群衆』より)

2.オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』/ ちくま学芸文庫

ドイツではナチスが多くの国民からの支持を集め台頭しつつあり、ソ連ではスターリンが「貧民階級の味方」として独裁体制へ邁進していった1930年に刊行、社会の新たな実質的支配者である大衆の力について解析を試みた一冊です。
経済が発展し、自由、平等が尊ばれ、またそれが実現しつつあり、どんどん社会が成熟していった近代、それまで存在しえなかった新しい形の「大衆」が生まれました。
それは単純な経済的地位、社会的階級ではなく、他者との同一性に対するスタンスに拠るものです。
そうした精神的大衆が社会の実質的な支配者である現実と弊害への警鐘を鳴らしたこの書は、世に出て約90年が経ち社会的背景が大きく変わった現在にあってもその普遍的価値を失わず、寧ろ「今」の問題として我々に問いを突き付けてきます。

「大衆とは、善い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めようとせず、自分は『すべての人』と同じであると感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、他の人々と同一であると感ずることに喜びを見出しているすべての人のことである」(第1章『充満の事実』より)

3.スタンレー・ミルグラム『服従の心理』/ 河出文庫

ハンナ・アレントはその著書『イェルサレムのアイヒマン』で、多くの虐殺に深く関与したゲシュタポのユダヤ人移送局長官アドルフ・アイヒマンを、サディスティックな悪漢ではなく、寧ろ真摯に職務に取り組む凡庸な一官僚に過ぎないと評しました。
そうした悪の凡庸性を実証すべくアメリカの社会学者ミルグラムが行った実験のレポートです。

実験は簡単にまとめると以下の手順で行われます。
・実験者A、被験者B、被験者(ただしサクラ)Cで実施。
・Aは「教育に於ける体罰の有用性」についてBとCに実験を依頼、Bは先生役、Cは学習者役。
・BはAに従い、シンプルな連想問題をCに出し、間違えるたびに手元のスイッチを押し、罰としてCに電撃を与える(実際は演技)。
・電流は解答を間違えるたびに段階的に強くなり、Cは次第に苦しみ、悲鳴を上げ、実験の中止を求め、壁を叩いて逃げ出そうとし、最終的には無反応となる。
・耐えかねてBが実験を止めようとしたときは、Aが責任はA側が全部負うこと、Cは合意していること、これは学問的な目的のために行われていることを説く。
こうしてBがどこまでテストを続けるか、がこの実験の真の目的です。

この実験は、Bはほとんどの場合に於いて、躊躇し、葛藤を抱きながらも寧ろ能動的な姿勢でどんどん電撃をCに食らわせ続けるという衝撃的な結果が出ました。
ここに、我々がいかに属した組織の下す命令や権威に従順で、与えられた役割はその内容の善悪を問わず忠実に遂行しようとしてしまうのかがあらわれています。
正直やや癖が強く読みづらい訳文ではありますが、それでも必読と言えるほど素晴しい内容だと思います。

「エージェント状態への移行の結果として最も大きいのは、その人は自分を導く権威に対しては責任を感じるのに、権威が命じる行動の中身については責任を感じないということだ。道徳が消えるわけではないがその焦点がまったく変わってくる。従属的な立場の人間が感じる恥や誇りは、権威が命じた行動をどれだけきちんとこなしたかで決まるようになるのだ」(第11章『服従のプロセス 分析を実験に適用する』より)

どれも古典的名著と云われるものばかりで、文庫で容易に入手可能です。

内容もそれほど難解ではありませんし、選挙云々は別として単純にエンターテインメントとしても楽しめるはず。

まだまだ天気の悪い日が続きそうですから、家でゆっくりと読書するのも一興なのではないでしょうか?


巌となりて ~ sazaré

ミニマルとシンプル、似ているようで異なる概念です。

それは優劣でなく、ただの違いであり、店主個人としては、ミニマルにはシンプルにない禁欲的な冷たさ、裏返せばシンプルにはミニマルにない温かさが内包されているように感じます。

長らく当店で腕時計の代名詞的存在として君臨していたINSTRMNTは、まさにミニマルデザインそのものでした。

時計としての構造そのものを除く一切の要素を削ぎ落したストイックなデザインは多くのお客様の支持をいただき、それは他の時計ブランドが隣に並ぶことすら許されぬほど。

しかしその絶対王者の地位を脅かす新星が、ついに現れました。

それが2018年冬に世に出たばかりの気鋭ブランド、sazaré(さざれ)です。

INSTRMNTがミニマルならば、sazaréはシンプル。

アナログ時計の構造上、虚飾を排せば必然としてここに着地するのでしょう、ブランド名のない文字盤、小さなデイト表示はほぼ同様のデザインですが、触ってみるとその違いは歴然としています。

やわらかな円みを帯びたガラスはごくわずかに膨らんだ文字盤をふわっと包み、同じくまろやかな手触りに削り出されたケースとその境目が触ってもわからないほど自然に繋がっていて…。

裏面、そして竜頭にもほんのささやかな膨らみが設けられています。

この曲線構造が、ともすれば硬質的になりかねないこのデザインにかすかなぬくもりを与えました。

ケースは4種類、ミラー仕上げのシルバーと黒、

そして艶消し加工されたシルバーと黒です。

ケースと文字盤の色はこれらの組み合わせのみとなります。

ブランド名、スペック、そしてシリアルナンバーの刻印されたケースの裏盤は、通常傷が目立たないようヘアライン加工が施されているものですが、ミラー仕上げのモデルでは、この時計とともに過ごす時間を傷とともに楽しんでいただくべく、敢えて鏡の如く磨きこまれています(艶消し加工のモデルは本体に準じます)。

ベルトは柔らかな羊革を採用。
ばね棒外しがなくても脱着可能な仕様となっています。

オプションとして、それぞれのケースの色、仕上げに合わせた替えベルトも用意しています。
黒はもちろん、ブラウン、ベージュ(ともに牛革)などにも付け替え可能となっています。
今回はミラー仕上げのシルバー×ブラウンレザーのベルトのみ入荷しましたが、そのほかの組み合わせも今後ご要望に応じて増やしていくつもりです。

なお、画像のブラウンのものは店主私物でして、新品の替えベルトにはここにあるような皴は入っていませんのでご安心を。

さて、とても立ち上がったばかりのブランドと思えぬ研ぎ澄まされた美しさ、そしてプロダクトとしての完成度ですが、ブランドを発足してから製品が世に出るまでに、実に2年半もの月日を要したとか。

それほどまで妥協を許さぬ作りこみ、たとえばこのケースは、型に流し込むのではなく、金属の塊に熱を加えてはプレス加工、それを何度も繰り返して作られています。

こうすることで金属の構成組織の規則性を切断することなく成型でき、高い粘度を備え剛性に優れた部品となります。

この技術を持つ工場は日本ではほぼ壊滅状態で、ようやく巡り合えた福島の工場も多くの工員で賑わっていた全盛期の面影はなく、今や数名の職人さんを残すのみだそうです。

抜かれた丸い金属片が集積すればほら、まるでさざれ石のようですね。

先述のなめらかな曲線も、複合的であるがゆえ補助の型を用いることができず、完全に職人さんの感覚のみで研磨して生み出しています。
その作業を想像すると、気が狂いそうです。

そんな稀少な職人技(安易かつ陳腐に陥りがちな言葉ゆえ滅多にこのブログでは用いない表現ですが、敢えて使いましょう)を詰め込みながらも、47000円+税という拍子抜けするような価格を実現しました(替えベルトは7000円+税)。

サイズはINSTRMNTより若干小ぶりの38mm径で、男女問わずお使いいただけます。

なお、ブランド側の意向により通信販売は不可、店頭にて直接ご覧のうえでの販売となります。
そのため遠方のお客様には歯痒い思いをさせてしまいますが、何卒ご容赦ください。