空のキャンバス ~ HAVERSACK ATTIRE/ レーヨンプリントシャツ

なぜか、あまり当店をご存じない方からは、何となく第一印象として「シンプル」「ベーシック」「スタンダード」といった感を受けられる傾向がありますが、一度でも足を運ばれた方であれば、まったくそんなことはないとご理解いただけることでしょう。

とはいえそのギャップに驚かれる方は少なくないようで、とくに色柄物の多さ、濃度は「なぜ!?」というご反応をいただくこともしばしば。

このシャツも、店頭でそのように衝撃を与えつつも、一度袖を通された方からは「ウム!なるほど!」とご納得いただいております。

20世紀の抽象絵画を想起させる手描きのドローイング、としか表現のしようのない柄。
これが、驚くほど上質な肉厚のレーヨンの生地にプリントされています。

派手なようで意外と色数は少なく、また素材のクオリティがひじょうに高いため、テカテカした下品な安っぽさは微塵もありません。
身に纏うと意外なほど落ち着いていて、寧ろ気品すら感じさせます。

もちろん語りどころは生地だけにあらず。

両胸のポケットはステッチが表に出ないよう縫い付けられており、生地の持つふわりとした弾力感をより引き出しました。

直線的にカットされた裾の両脇にはブルゾンよろしくアジャスタが設けられ、お好みで絞り具合を調整できます。

この裾のあしらいによって、シャツとしてはもちろん、真夏の羽織ものとしても違和感なくお使いいただけます。

毎度のことながら、一見人を突き放すようで実はちゃんと着る側のことを考えてくれている、ハバーサックの奥ゆかしい優しさには胸が熱くなります。

まずは、騙されたと思って一度袖を通してみてください。
そこで初めて伝わる何かがあるはずです。

オンラインストアはこちら→ ネイビー/ ブラウン


四六時中も好きと言って ~ EEL Products/ 真夏のチャコールヘンリー

いやあ、蒸し暑いですね。

6月もいよいよ最後の週末、あと数日で7月です。

猛烈な湿気とともに、空気の匂いも緑濃い、夏のそれへと変わりつつあるのを感じます。

となると、装いもただ涼しさや快適さを求めるフェーズから、次の段階へと移行すべき頃合いでしょう。

EEL Productsの定番チャコールヘンリーの夏バージョン、その名も真夏のチャコールヘンリー。

ごく薄手のインド綿の生地が目にも肌にも心地好い、シャツとカットソーの間をとった軽快至極なプルオーバーです。

カットソーの、と申しますのは、布帛でありながらもカットソーの工場にてカットソー用ミシンを用いて仕立てられているから。
これにより、硬さのない、肩の力の抜けた印象が一層引き出されています。

着こなし云々を述べる必要はないでしょう。
ただ、着てください。

さあ、夏だからこそ楽しめる、夏のためだけの服を。

オンラインストアはこちらです→ ブルー/ オレンジ


It’s got to be perfect ~ Olde Homesteader/ THE PERFECT DETERGENT FOR UNDERWEAR

ファンが増える一方のOlde Homesteader(OH)の肌着。
おなじみLIVRERの茂木さんも初期からの愛用者の一人です。

腕利きのクリーニング職人でもある茂木さんの頭には、OHのトランクスを日々穿き、良質の肌着の愉悦を知るなかで、どんなにいい肌着でも避けられない共通の問題がずっと引っかかっていました。

それが、肌に一番近い部分で用いるがゆえの、皮脂の付着。

いくらLIVRERの洗剤が超高性能であっても、生地や糸に深く染みついた皮脂や諸々の汚れの蓄積を通常の洗濯だけで落としきるのは困難です。
況やわれわれ洗濯のプロでもなんでもない一般人の日常に於いてをや。

そこで一人の愛用者として、洗濯のプロとして、そして洗剤のディレクターとして、OHの福原さんにこうした肌着にまつわる問題点を伝えたところ、例によって程度を知らぬ男たち、であるならばと試行錯誤を経て完成したのが、こちらです。

ついにここまでやってしまいました。
肌着用の洗剤、繊細なランジェリーならともかく、剛健なトランクスや肉厚のボクサーブリーフを主とするOHがこれを出す意味とは。
それを探りながらじっくりと見ていきましょう。

先述の通り、LIVRERと共同開発してはいますが、

ただ既存のものを混ぜたとかではなく、オリジナルの成分構成となっています。

ところで、汚れが気になる、この点だけにフォーカスすれば、すでにLIVRERの液体洗剤の中で最強の洗浄力を誇るSportがありますよね。

われらが素晴らしき横浜F.マリノスの選手たちが用いた試合後のユニフォームにも使われるその洗浄力は、当然肌着の汚れにも発揮されるわけです。

しかし、つねに豪胆ながらときに驚くほど繊細な一面を見せる福原さん曰く、Sportは洗浄力が強いがゆえに肌着には適していないとのこと。
すなわち、生地本来のやわらかな風合い、自然な油分まで落としてしまい、洗濯後の下着が肌に触れたときに、摩擦を感じてしまう(大袈裟な気もしますが、「痛い」と表現していました)、これがSportを肌着用として提案できない理由となります。

そのため、皮脂汚れをしっかり落とし、なおかつ肌着の風合いを損ねない、そんなわがままな代物を一から開発せざるを得ませんでした。

こうして完成したこの洗剤は、高い洗浄力にくわえ、生地のやわらかさを損ねず、色落ちを抑制し、さらに水の硬度に左右されず海外でも使えるという、恐るべき魔物となったわけです。

究極の洗剤を謳うだけあり、ウィスキーか往時の薬品の瓶を彷彿させるボトルも、所有する喜びを刺激します。

当然のことながら、OH製品に限らず肌着全般、いや実際は肌着に限らずふつうに洗濯できるものであれば何にでも使えますので、イヤイヤ肌着だけにそんなの勿体ないよとお考えの方も、どうぞご安心を。

オンラインストアはこちらです


サボさん まいったな ~ ISHMM/ SABOT

夏が近づくにつれサンダルらしいサンダルがどんどん魅力的に映ってきますが、踵だけ覆わない靴タイプのサンダル、すなわちサボもいいものです。

とはいえ当店では今まで取り扱ったことがないジャンルのひとつでして、その理由が、あたたかみのあるほっこりとした表情。
それがだめとかではなく、単にほかの商品と並べたときに違和感があったんですね。

ところが、ISHMMがやってくれました。
牧歌的という言葉とは程遠い、独特の冷たさに惹きつけられる、不思議なサボの登場です。

すっと流れるような爪先のライン、張り出した素上げのレザーソール、この緊張感はどうしたことでしょう。

それでいて、凛としたルックスからは意外なほど、履き心地や歩きやすさには気が配られています。

まずこの足入れが実に絶妙で、足に沿って丁寧にフィットし、歩行時にカパカパと浮きません。

ライニングと中敷きには、耐久性に富み吸排湿性にすぐれた豚革を採用。

中敷きの下にはパッドが入れられ、接地時の衝撃をやさしく吸収します。

横から見ればレザーソールのみのようですが、ソール、ヒールともに接地面にはラバーが用いられています。

滑りにくく、また適度なクッションが効いて、快適に歩行を支えてくれることでしょう。

と、ご紹介したブラックのみならず、その他の素材のバリエーションも豊富でしたので、是非引き続きご覧ください。

まずはグリーン。

やわらかくしなやかなブラックとは異なり、下品にならない程度に野性的な魅力を放つプエブロレザーを採用しました。

タンニン鞣しを施された油分の多い革の表面を敢えて荒らし、かさついたような風合いを出しています。
これにより外部からの刺激を反映しやすくなり、革本来のもつ油分と相まって、履き込むと深い艶が出るのが特徴です。

こちらもライニング、中敷きは豚革。

これに加えて、ベンガル地方の手刺し子カンタ(Kantha)を使用したものも見逃せません。

古来より伝わる伝統工芸品などや廃棄されていたものに新しい価値を付与する活動を行うrételaとのコラボレーションによって生まれた限定モデルです。

カンタは、かつて外出や表現することを制限されていた当地の女性たちが、使い古しの薄く柔らかくなった布を重ねて、布やサリーなどから抜き取った糸で
刺繍を始めたことに由来すると云われています。

今でも農村の女性たちの手で、ゆっくりとつくられるのだとか。

この素朴な物語を持つ素材と、鋭角的なサボが組み合わさることで、さらなる高みへと昇華しました。

こちらは贅沢にも中敷きにまでカンタを用いています(ライニングは豚革です)。

ソールの部分はカンタを裁ちっぱなしにしているため、履き込むことで次第に断面がほつれ、より情感を強めていきます。

どの素材も少量入荷です。
ブラックは女性向けのサイズ、グリーンとカンタは男性向けのサイズをご用意しました。

今季の靴、サンダルの最終入荷を飾るに相応しい逸品ですよ。

オンラインストアはこちらです→ ブラック/ グリーン/ カンタ


Sunshine Kiz ~ KIMURA/ shirt like knit polo

またもや一瞬で完売してしまったKIMURAの新作、narrowing piping cardigan

その系譜に属する、もうひとつの新作をご紹介しましょう。

ニットカーディガンでなく、ニットポロを土台に再構築された、プルオーバーシャツです。

こちらもパイピング使いにKIMURAならではの技巧が冴えわたります。

胸元は一本のラインを折り返して構成され、パイピングの中にボタンホールが開けられました。

そしてこのパイピングはそのまま襟まで伸びてぐるりと首を囲み、

一周しています。

これによりパイピングの接ぎ目が襟に隠されているわけです。

パイピングの接ぎ目をどこまでも厭うKIMURA、裾もぐるりと一周したうえで、

接合部を三角ガセットで隠しました。

パイピングカーディガン同様、裏面をミシンでがっちりと、表面は極力縫い目が目立たぬよう手で縫われています。

この特殊なデザインと合わさった凄み溢れる生地は、イタリアのモンティ社製。

おそらくはオーダーメイドの高級ドレスシャツに用いる生地で、繊細なドビー柄が光の反射でときおり見えなくなるほどに艶めき、われわれを魅了します。
当然のように、肌触りもきめ細やかで、そっと撫でれば体が自然に反応してしまうことでしょう。

どこをつきつめて見ても、一分の隙のない、そして独自性の塊のような服です。
夏のとっておきの一枚として、どうぞご検討ください。

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ハート・オブ・ゴールド ~ TULIP EN MENSEN/ HARVEST SHIRT

じわじわと、しかし確実に当店に於ける認知度を高めているTULIP EN MENSEN。

新潟の地の利を活かした素材使いを得意とする同ブランドを代表するのが、だいぶお馴染みとなってきた亀田縞のシリーズです。

その新作となる男性用の半袖シャツが、横浜の夏に臨み届いています。

今までご紹介してきたロングシャツやワンピースは、野良着(しかもきわめて過酷な寒冷湿地帯で使われていました)をルーツとしているがゆえの素朴な剛健さをデザインによって洗練させたものでしたが、今回は生地自体を薄く、やわらかく織り上げ、素材そのものから蒸し暑い夏でも快適に楽しめるようになりました。

開放的なイタリアンカラーに繋がる胸元からちらりと覗くグログランテープは前立て裏にすっと流れ、

裾脇のスリットからも同様にそのきらめきを露にします。

そのテープと呼応するかのような、やや大ぶりの糸巻きボタン。

繊細な仕事が行き届いた、TULIP EN MENSENらしいシャツとなりました。

Lサイズのみご用意しましたので、比較的大柄な男性にもお薦めです。

ところで表で出ると、ねっとりとした、生ぬるい風が吹いています。
梅雨もこれから盛りに入るころ。
そこを抜ければ、もう夏です。

オンラインストアはこちら→ ネイビー×グリーン/ グレー×イエロー


繊研新聞に掲載されました

6/11付の繊研新聞にて、なんと店主が『あつまれ どうぶつの森』に興じている旨が記事として掲載されまして、本日その現物が届きました。

恐れ多くも、一面です…

あつ森で配布しているKIMURAのシャツについても、画像付きで触れられています。

さらに信じられないことに、六面にも店主個人が登場。

フキダシの台詞、何様のつもりなんでしょうか、えらそうですね。

恐悦至極です、有難うございます。

あつ森に関しては以前ブログでも触れたとおり、KIMURAを島の生活で楽しめるよう配布しているわけですが、

これらのシャツの実物は現在完売状態であるものの、まだ生地が残っていますので、気になる方には受注生産対応可能です。

なかでも気温の高い今の時期には薄手の5 needlesがお薦め。

ホワイトに

ライトブルー、

そしてブルー。
この色だけは、生地のストックがこれで一旦なくなるため先着一名様限定となります。

今のタイミングであれば、だいたい納期は一ヶ月程度となる見込みです。

色やサイズについてなど、ご相談はお気軽にどうぞ。

島の生活でも現実の生活でも、素晴らしきKIMURAのシャツが共にあらんことを。


海よ 俺の海よ ~ Royal Navy/ PCS Trousers

もともと軍パン愛用者の店主、トレンドや時流などおかまいなしに穿き続けていましたが、ここにきてお客様からも最近何だか穿きたいんだよねとのお声を頂戴するようになり、同志の増加にうれしい思いです。

そんななか、ちょうどいい感じの子が出てまいりましたよ。

英国海軍にかつて支給されていたPCSシリーズのパンツ。
PCSはPersonal Clothing Systemの略で、気候や環境によって重ねたり脱いだりして個々調節するという、現在でも採用されているシステムですが、このモデルは少し前の世代の型です。

いわゆるデッドストックとは若干事情が異なりまして、英国軍や警察に制服を納入する業界大手Cooneen Defense社が、当時の素材を再現し、実際に手掛けていたカンボジアの工場(もしイギリスとカンボジアが戦争することになったらどうするのかと心配になりますね)にて同じスペックで民間用に再生産した、リプロダクト品となります。

そのためか、現在タグのNSN(NATO Stock Number)による識別はできませんが、アヤシイ代物ではございませんので、ご安心ください。

さて、肝心のパンツ自体に目を向けると、さすが国家が莫大な予算を投入して開発させただけあって、実によくできています。

使用されている生地は、さらりとした乾いた質感が軽快な穿き心地を生み出す、ポリエステル混のコットン。
というだけでなく、難燃性を備えています。本気です。

ボタンはすべて糸による縫い付けではなく、テープを用いたパラシュート式で留められています。
激しい動きが求められる環境につき、ボタンが引っかかってはじけ飛んでしまうのは防がねばなりません。

斜めに設置された独特なポジショニングのカーゴポケットのフラップにも、同様にパラシュートボタンが採用されました。

ウェストはボタンで段階的にサイズ調整可能です。

裾にはドローコードが通されています。

本来の使い方としては、ハイカットブーツを履くときはぎゅっと絞ってブーツに裾を入れ、アンクルブーツのときは緩めて下ろしたままにすると使い分けるようですが、コスプレを愉しむのでなければ、日本での都市生活に於いてそこは無視して構いません。
サンダル履きのときは上げてみるなど、お好きなようにご活用ください。

以上の如く機能的かつ抑制の利いたデザインであるうえ、シルエットも太すぎず細すぎず、軍モノと思えないほど中庸な、とても使いやすい一本です。

店頭でもご覧になる方は多く、サイズ欠けは時間の問題かと思われます。
気になる方は、どうぞお早めに。

オンラインストアはこちらです


キング・オブ・プリズム  ~ CURLY/ PRIZMATIC SS TEE

各ブランドから素晴らしい逸品が続々と届き、当店史上最高にTシャツが大豊作なこの春夏。

店頭に高品質な綿のTシャツがずらりと揃う中、カットソーといえばのCURLYから送り込まれた綿100%「でない」新作に、専業ブランドの強さを改めて思い知りました。

まず、さらさらと清涼な、しかし艶やかでエロティックな肌触りに驚かされます。

これは、綿に絹の生糸を加えたから。
Tシャツではなかなか出ない発想です。

もちろん、家庭での洗濯も可能ですから、その点はご安心ください。

この生地のしなやかな快さをさらに活かすべく、構造にも工夫が施されています。

袖口、裾は敢えて裁ちっぱなしのまま、端に至るまで生地の軽やかさを損なわないようにしています。

余談ですが、CURLYというブランド名自体が、このカットソー素材のくるりとカールした裁断箇所に由来しています。

袖付けはフリーダムスリーブ。

腕を上げた状態を基本ポジションとして脇から袖に流れる構造で、運動性に優れています。

敢えて表に覗かせた、裏からの縫い目。
このTシャツがただ単に良質な素材を使ってシンプルにまとめただけの一枚でないことを、控えめに語ります。

女性向けサイズ(0)からいつものメンズサイズまでご用意しました。
幅広く多くの方にお楽しみいただければ幸いです。

オンラインストアはこちら→ イエロー/ グレー/ モカ


花より男子 ~ Olde Homesteader/ DRAWERS SHORT

今でこそアンダーシャツや靴下など、多くの素晴らしいラインンアップを揃えるまで成長したOlde Homesteaderも、最初はトランクスだけのブランドでした。
実際当時でさえはっきりとそう感じましたが、今振り返ってみても狂気の沙汰です。

そう、彼と初めて会った大雨の日から、3年の月日が過ぎました。
初対面なのに爛々とした目で熱くトランクスの可能性やトランクスの未来について語るさまは、今でも強烈な印象が刻まれています。

それほどトランクスへの執着は強いようで、この時代に於いてもなおボクサーブリーフを作らない稀有な肌着ブランドとして、独特過ぎるポジションを築いてきました。

そんなOlde Homesteaderが作り上げたボクサーブリーフとなれば、それだけで只事でないのはお解りいただけるはずです。

まず、通常腰に通されているはずのゴムがなく、両脇に紐が設けられ、ゴムとは異なるフィット感を味わうことができます。

なお、この紐は使い込んでいくに従い先端が若干ほつれてきますが、それはほつれ防止の処理を施すことで先端が硬くなり、穿き心地を損なってしまうから。
次第にほつれは収まるため、それによって紐が短くなることを計算したうえで、必要な分より若干長めに設定されています。

前の開きは10時の方向を向いた構造。

例なるものをやさしく撫でるように包み込む立体的な収納部、

お尻の間が蒸れにくいよう、空気の流れを確保した背面。

腰のタグも肌に触れないよう、敢えて表側に縫い付けられました。

裏面の仕上がりも当然のように美しく、裏返してもわからないほどです。

生地にはTシャツに採用されていたヘビーウェイトリブをベースにしながらも、さらなる改良が施され、のびやかなだけでなく、ふわふわ、とろとろの肌触り。

どこまでもどこまでも穿き心地のみを追求したその徹底っぷり。

新しいのに、どこか懐かしい。
この見慣れない構成は一体どこにルーツがあるのか、せっかくなので欧米の男性用下着の変遷をざっくりと追いながら見ていきましょう。

よく知られるところでは、もともとロンパース状だったものが、20世紀に入り分かれるようになった、これはたしかに事実ではありますが、不十分です。

紀元前まで遡れば、ガリア人が着用していたトラウザース”Braccae”が古代ローマへ伝わり(チュニックをトーガの下に着ていたローマ人からすると、ズボン型の服は女々しくさえ見えたようですが、乗馬に便利なことからこっそり穿くようになったとか)、

それが中世ヨーロッパの代表的男性用肌着であるBraies(ブレー)へと変質していきました。

このブレーはどんどん短くなっていき、14世紀ごろには今の感覚から見ても下着だなとわかる程度になっています。

ボッカッチオ『デカメロン』は14世紀に書かれましたが、こちらの絵は15世紀のもので、当時の肌着の雰囲気が窺い知れます。
8日目第5話『裁判官のズボン』から。

一方、長靴下のようなタイプの肌着としてブレーと並び主に富裕層に用いられたchausses(ショース)は15世紀になると腰まで伸び、現在のタイツのような形状となりました。
服装が軽快になり、上着の着丈が短くなったのがその要因のようです。

このショース、排泄のため前が縫われておらず、股間を守るため別途コッドピースを装着していました。
このコッドピースもいつしか男性としての魅力を強調する装飾具へと意味合いを変えていきます。

やがてブレーは廃れましたが、ショースはそのまま残り、貴族の男性たちは脚線美を競いました。

たとえばフランスでそれに合わせて穿かれていたのがキュロット。

彼らは、直線的な丈の長いパンツを穿いた貧民たちを「キュロットを穿かない者(Sans-culotte)」として蔑みました。
そう、それがフランス革命の中心となった社会階級層(手工業者、職人、小店主、賃金労働者など)、サン・キュロットです。
この蔑称はいつしか誇りをもって自称する名として用いられるようになります。

18世紀に起きた産業革命(肌着の歴史的にも、綿製品の大量生産が可能になったのはこのころからです)を経て、19世紀になると世界のパワーバランスがさらに変わり、アメリカの力がどんどん強大に。

1868年にニューヨーク州ユーティカで女性用肌着として生まれたユニオンスーツは、やがて老若男女問わずアメリカでは肌着のスタンダードとなっていきます。

一方英国では、今もニットウェアメーカーとして名高いジョン・スメドレーが裕福な中間階級層に向けて、綿やウールを用いた高品質の肌着および靴下の生産を開始。
ヴィクトリア朝のころですね。

同社は19世紀にぴったりとしたメリヤス素材の2ピース型肌着の製造を開始、いわゆるロングジョンですが、これは女性ものに由来するデザインを男性にアピールするにあたり、マッチョなニュアンスを内包する”Long”に男性像を想起しやすいポピュラーな人名である”John”をかけあわせたと伝えられています(諸説あり)。

時をほぼ同じくして、同型の肌着もまた別の会社からロングジョンとして販売されていました。
こちらは当時大人気を誇ったプロボクサーであるジョン・ローレンス・サリヴァンのリング上での装いから名付けられたとか。

20世紀に入ると、アメリカでもロングジョン型がユニオンスーツに取って代わり、上下セパレートが再び肌着の標準となります。

第一次世界大戦に従軍し、支給されたショートパンツを下着として穿くことに慣れた帰還兵たちの存在もまた、下着の潮流に影響を与えました。
このショートパンツが、トランクスの原型と云われています(ウェストにゴムが入った現在の形のもととなったは、1925年にエバーラスト社が発表したボクサー用のショートパンツです)。

1935年にアメリカのクーパーズ社が乗馬用の肌着に着想し、本体に伸縮性のある素材を用いてウェストにゴムを入れた”Jockey”を発売。
この世界初のブリーフが、世界を席巻致しました。

第二次大戦が勃発し、物資が不足すると、肌着のゴムは一旦廃止され、紐やボタンが使用されるようになります。
今回ご紹介のDRAWERS SHORTは、このころの米軍用モデルを原型とし、再構築されたものと思われます(ようやく話が繋がりました!)。

戦後も若者の肌着といえばブリーフでしたが、ユーザーの高齢化とともにブリーフのイメージも子供か老人の穿くものへと変質していきます。
そうしたイメージを払拭するかのように、米国のデザイナー、カルバン・クラインが1980年代に股上などバランスを見直し、巧みな広告戦略で男性用の下着の概念を揺さぶりはじめました。

そのカルバン・クラインが往時の下着に着想し、ボクサーショーツ(トランクス)の裾丈とブリーフのフィット感を合わせモダナイズした”Boxer Brief”を1992年に発売。

この再発明がまたもや世界のトレンドを大きく動かし、今に至るわけです。

こうして見ると、男性用の肌着は螺旋を描くかの如く、再発見、再発明を繰り返しながら進化していったことが窺えます。
15世紀の裁判官の下着、世界大戦時の軍用肌着、カルバン・クライン、そこに至った流れはバラバラなのに、不思議な共通性がありますよね。

ヴィンテージトランクスと出会い、旧き良き時代の肌着の素晴らしさを現代に問いかけ続けるOlde Homesteaderもまた、この大いなる環のなかで、次なる時代への架け橋として後世から高く評価されることでしょう。

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