種蒔く人 ~ ASEEDONCLOUD/ Peasant Coat

くもにのったたねを咲かせた双子は、いったい雲の上の花畑でどんな服を着ているのでしょうか。

その答えの一つがこのPeasant Coatです。

太陽が近いため陽射しが強い温暖な環境ですから、直射日光を避けつつ涼しい素材が望ましく、ゆえにこのコートは軽やかなリネンの生地で仕立てられました。

この柄は一般的にグレンチェックと呼ばれていますが、これはスコットランド北部インヴァネス州ネス湖のほとりアーカート周辺のGlen(峡谷)で織られていたことに由来、言うまでもなく雲は谷でないわけでして、すなわちこの柄はクラウドチェックと名付けられています。

襟や袖には生地の柄を邪魔しない程度にパイピングが施され、全体の印象がきりりと引き締められました。

先ほどインヴァネスの名が出ましたが、このコート自体もいわゆるインヴァネスコートの仕様が取り入れられており、たとえば肩にかかる大ぶりのケープは、もともと雨天時にバグパイプを守るためのもの。

このコートでは、バグパイプでなく種などを入れられる胸ポケットを保護しています。

このように雲上の気候の変動を考慮した設計は両脇のポケットにも及んでいます。
風が強いときなど、コートのボタンをすべて留めた状態でも中に着たジャケットやパンツのポケットを使うことが可能な貫通式となっています。

クラシカルで幻想的、アシードンクラウドらしさが存分に発揮された素敵な一着です。

店頭でもご覧になる方の多いコートゆえ、気になる方はお早めに。

オンラインストアはこちらです


とても伝えたがるけど 心に勝てない ~ written by/ Work Jacket

writtenafterwardsにはセカンドラインが存在します。
それが、written by(リトゥンバイ)。

当店で取り扱っているものはまだしも、ほとんどの型が日常生活に適さないメインラインにくらべ、こちらではやや現実的な服の展開を行っています。

…とはいっても、そこはリトゥン。
ただのリアルクローズで終わらせる気はないようです。

実際、その明確な線引きについてデザイナーの山縣さんに伺ってもなんとなく曖昧な雰囲気が滲み出るばかりで、こっちはこっち、とはっきり区分けしてはいない様子。
現に、昨年秋に上野公園で行われたファッションショーでも、ごく自然に両ライン混ぜ込んで用いられていました。

そんなwritten byの当店での初披露となるのは、1型2素材3色。

どことなく愛嬌漂う、ボリュームを持たせたダブルブレストのジャケットです。
“Work Jacket”と名付けられてはいますが、それほどワーク色は強くありません。

まずはこちら2色。

なんと体育館マットの生地で仕立てられています。

体育館マットは意外とカラーバリエーションがあるそうで、この赤(朱色に近い色目です)も、生地をそのまま使用したとのこと。

独特の剛性感があり、また当然のことながら強度にはたいへん優れた素材です。

春や秋の羽織ものとして、きっと大いに活躍してくれることでしょう。

お次はコットンケナフの超重量級デニム。

ケナフ、この一年草は生長が早く、またその際大量の二酸化炭素を吸収するため地球温暖化防止の一手としても着目されているのですが、一般的には木材パルプに代わる紙の材料として知られていますね。

布の材料としての歴史も古いようで、古代エジプトでミイラの着衣にも用いられていたことがあるとか。

そうはいっても、衣料用途でこれほど厚くすることはないのではないでしょうか。

鎧でもあるまいし、信じられないほど厚く、硬く、重い。
その猛々しさは、織っている最中に何度も機械が止まってしまうほど。

さらに、独特の匂いやざらついた肌触りは、綱引き用のロープを思い出させます。

はっきり言って、着心地はきわめて悪く、どこをとっても合理的な要素は一切ありません。
もちろん防縮加工なんて一切施されていませんから、洗うと激しく縮みます。

こんなふうに。

ここまでされたなら、とことん付き合います。
洗い加工済みのものも同時入荷です。
手計測ですが、着丈でなんと6cmも縮んでいました。

歪み、ねじれ、さらに手に負えない状態となっています。

しかし、この凄まじく圧倒されるほどの迫力に溢れた存在感は、まさに唯一無二。
相対的価値観に基づく正しさを蹴散らします。

良いか悪いか以上に、好きか嫌いか、そこで判断してください。

もし魂に触れる何かを感じたのであれば、必ずや絶対的な一着となってくれるはずです。

オンラインストアはこちらです→
Work Jacket(体育館マット) ベージュ/ レッド
Denim Work Jacket ナチュラル/ ナチュラル(ウォッシュ)


『OZ magazine』にて当店をご紹介いただきました

本日3/12発売の『OZ magazine』にて、著名雑貨コーディネイターオモムロニ。さん行きつけの店の一つとして当店をご紹介いただきました。

有難うございます!

なお、ここで登場した商品は現在(2020/3/12時点)も購入可能です。

オンラインストアはこちら→
SOAK IN WATER/ Narrow Standard Vacchetta
Olde Homesteader/ クルーネック ショートスリーブ インターロック
・BRAASI INDUSTRY/ GEORGINA

Olde Homesteaderのネイビーのアンダーシャツに関しては、ロングスリーブバージョンが入荷してまいりました。
こちらサイズは38、40、42と3サイズ揃っていますので、是非併せてご検討ください。


そよ風さん こんにちは ~ tilt The authentics/ Zephyr Cloth Band Collar Shirt

朝晩は冬の如く冷え込みますが、それでも昼は暖かくなる日がだんだんと増えてきました。

人の世がどうであれ、いよいよ春本番は間近に迫っています。

春一番はさて置き、春は清々しいそよ風の季節。

英語でそよ風を意味するZephyrはギリシア神話に登場する西風の神ゼピュロスに由来しますが、

(この赤丸で囲われた神様がゼピュロス)

そのZephyrの名を冠したゼファークロスと呼ばれる薄手の生地は、柔らかく爽やかな春の風を体感できる清涼な素材です。

このゼファークロスで仕立てられたシャツの心地好さたるや、どんなものか言うまでもないでしょう。
況や、それが生地への偏執的な探求心を高ぶらせ続けているtilt The authenticsの選定となれば。

上品なムラ感が光の透過によって浮かび上がるさまは垂涎もの。

立体的でありながらも直線を意識したtiltならではの裁断が、まろやかな生地に一匙の辛みを加え、全体をきりりと引き締めています。

春はスプリングコート、ジャケットやカーディガンに重ねて、また真夏でも袖をまくって着られますので、一年の半分に亘り活躍してくれる一枚です。

そのまろやかなとろみある肌触り、光を浴びたときの美しさは、とても画像や文章で説明しきれるものではありません。
どうぞ店頭にて直接お確かめください。

オンラインストアはこちらです


お父さんの背中で ~ TULIP EN MENSEN/ TWIST SHIRT(LONG)

TULIP EN MENSEN初披露にあたってご紹介したのが、亀田縞のノーカラーシャツでした。

その直後あっという間に巣立ってしまったため、実際ご覧になった方はかなり少なく、幻のシャツとして今もなお語り継がれているのですが、素材使いと着丈をあらため、この春また帰ってきてくれています。

少し前に拙ブログに登場したワンピース同様、今回は亀田縞の縞を取り除いた生地で仕立てられています。

形状としての最大の特徴はこの前立て。

スナップボタンが左前、右前と交互に設定され、すべてを留めることで前立てがねじれたように引き攣れる、たいへんユニークな仕様です。

また、スナップを全部外した際に片方が雄、片方が雌と分かれることなく、左右対称に近い印象となります。

実用面でのメリットといった合理性ありきでなく、デザイナー横山さんの美意識のあらわれです。

また、この穏やかな生成の素材感を引き立てるべく、前立ての裏と

袖裏に

春らしい色調のグログランテープがあしらわれました。

シャツではありますが、ノーカラーの羽織ものとしてさっと纏うのがお薦めです。

サイズはともにユニセックスのL、女性も男性も着用可能となっています。

もともと外套として存在するスプリングコートやブルゾンだけでなく、こうした変形シャツをアウター然と大いに楽しめるのもまた、春ならではですね。

オンラインストアはこちら→ エクリュ×イエロー/ エクリュ×グリーン


たとえこの世の果てまででも ~ SEIL MARSHCALL/ Mini Reporter Bag

昨年晩夏に入荷した黒を半年ほど実際に使ってみて、その使い勝手の良さにあらためて惚れ直しました。

(画像は店主私物)

サイルマーシャルのMini Reporter Bag、新展開色で再び登場です。

オールブラックも佳いものですが、奥行きのある茶色い革とのコンビカラーも、重すぎず軽すぎず小憎い。

敢えて色止め加工を抑え、本来の自然な表情をそのまま残した革は、使い込むほどに柔らかくこなれ、しっとりとした艶が滲み出てきます。

厚みがあるのに硬くない、良質なコットンのショルダーストラップ。
コキ(調節金具)で体型や用途に合わせて自由自在に長さを変えられます。

内部はおおまかに2気室に区切られ、それぞれに小さなポケットが設けられています。

コンパクトな見た目に反し、A4サイズのファイルや缶ビールも難なく収容してしまうのだから驚きです。

なお、実は今回の2色はプチ別注的な仕様となっています。

本来ブラック以外の色はブランドのネームタグがフラップに縫いつけられているのですが、当店オーダー分に関しては隠れるような位置に変更していただきました。

これにより、バッグ自体の構造に基づくデザインを一層楽しめるようになっています。

HAVERSACK、ASEEDONCLOUDやKIMURAといった匂いのある服から、Itheやniuhansのようなニュートラルな服まで、守備範囲もとても広く、日常の相棒としてたいへん重宝する鞄です。

春は何かと節目になる季節、せっかくですから鞄もひとつ新しい生活に加えてみては如何でしょうか。

オンラインストアはこちら→ オリーブ/ グレー/ ブラック


さわって 変わって ~ niuhans/ Heavyweight Canvas Linen Atelier Jacket

その素朴な印象はまず触れた瞬間に揺らぎ、袖を通せば完全に覆ります。

どれをとっても目立った意匠がないためつい見過ごしてしまいそうになりますが、一度着てしまうと中毒のように強烈な魅了の魔法にかけられてしまうのが、niuhansの服です。

この肉厚なリネンキャンバスで仕立てられたカバーオールタイプのワークジャケットもまた然り。

画像だけだと粗野な質感を想像されるかも知れません。

いえいえ一度撫でてみてください。

潤いがあり、抵抗なくなめらかに滑るその肌触りに、きっと驚かれることでしょう。

この生地はフランスの生地メーカー、Safilin(サフィラン)社の手によるもの。

フランドル地方に位置しリス川が流れるアルマンティエールは水に恵まれ(もともとは百合の群生する沼地だったとか)、中世よりリネンの産地として知られていたほど紡績が盛んな地です。
サフィランは今を遡ること240年の1778年、このアルマンティエールの町でサーモン家によって設立されました。
歴史を辿ると、草創期にはルイ16世の庇護を受け、またナポレオンからも軍需用リネンの注文を請け負っていたようです。
現在は同じくリネンの産地として名高いポーランドを生産拠点とし、常に新しいリネンの開発に挑戦し続けています。

長く培った技術、感覚は世界最高峰と謳われ、多くのリネン愛好家を虜にしています。

なんて冗長な説明はなくとも、そのしっとりとした適度な重み、やわらかな生地の動きが生み出す絶妙な着心地が、それ以上に語ってくれるはずです。

もちろんこのジャケットの魅力は生地のみにあらず。

表層的には骨太なワーク調のデザインでありながら、

身に纏ってはじめて現れる、柔和で気品に満ちた穏やかなその佇まい。
思わず声が漏れてしまうほどです。

これだからniuhansは油断なりません。

いろいろな方にお試しいただきたく、サイズも2から最大サイズである4までご用意しました。
とはいえすでに一部欠品が出ていますので、気になる方はどうぞお早めに。

オンラインストアはこちら→ ブラック/ エクリュ


今年のORDER BORDERについて

コロナ騒動はいよいよ全国全世界的なパンデミックの様相を呈し、パニックを起こした政府の丸投げな要請もあって各地で多くの施設は休業、そうでなくても次々とイベントが中止または延期となっています。

当店の春の風物詩ORDER BORDERも、どうするか悩みました。
世の風向きを考慮した模範的な答えとして、自粛すべきなのかも知れません。

が、やります。

交通機関や多くの企業が平常通りの営業を続け、且つここまで広範囲に事態が拡大している以上、片田舎仲町台の零細商店でのイベントを控えたところで状況は同じです。

ということで

3/20(金祝)~29(日)

の期間、第6回目となるORDER BORDERを開催致します。

今回は新色として、企業や農家で発生する食品廃棄物から染料を抽出し、無駄をなくしていくプロジェクト”FOOD TEXTILE“との共同企画シリーズがズラリ。

またシーズン限定展開のダブルラインボーダービッグTシリーズも登場。

さらにさらに、こちらはオーダーでなく現品販売商品ですが、ペットボトル再生繊維を使用した色鮮やかな”RE-PLAY”も加わります。

まだ終わりません。

G.F.G.S.率いる小柳さんも作曲、演奏メンバーとして直接関わっているG.F.G.S.オリジナルCD”NIIGATA WEST COAST MUSIC”を店頭販売致します。

その小柳さんも新潟から駆け付け、20日、21日に在店していただけることになりました。

今後コロナ騒動がより悪化した際は小柳さん来訪中止やイベント自体中止となるかも知れませんが、現段階では実行前提で準備を進めています。

陰鬱で閉塞的な気分が続くのもまた病に立ち向かう力を削いでしまうもの。
せっかくの春、服屋としてできることは少しでも明るい気分を提供することです。


ストレイト・ストーリー ~ EEL Products/ OVER SHIRTS

EEL Productsの服は現在デザインチームによってディレクションされており(初代デザイナーの高橋さんは現在EELのレディースラインであるironariを手掛けています)、実は商品によってはそれを起案した方の特色を見ることができます。

たとえば昨年秋に登場したフラットシャツを企画したのはパタンナー氏でした。
意匠でなく構造からデザインを起こすところが、まさにパタンナーならではの発想といえます。

そして今回ご紹介するOVER SHIRTSもまた、氏のアイディアが具現化したシャツです。


名前の通り肩幅、身幅がやや広めに設定されたオーバーサイズ寄りのサイズ感であること以外、一見するに珍奇な様子は見られません。

清涼感溢れるストライプが実に春らしい、爽やかな印象です。

しかし背面をよく見てみると…

中央のプリーツがヨークを突き抜けてしまっています。

この一本道と生地のストライプ柄が相まって、縦のラインを強調するようになりました。

これをふまえて正面の比翼仕立てを見やれば、たしかにボタンが隠されていることでストライプが途切れず、やはりここでも縦線を最重要視していることが窺えます。

気づかない人は気づかない、でも一度意識してしまうと気になって仕方がなくなる、そんなEELらしいユーモアが仕込まれた魅惑の一枚です。

オンラインストアはこちら→ グレーストライプ/ グリーンストライプ


ふしぎ遊戯 ~ ZDA/ Marathon 2300FSL & 2400FSL

LUNGE、YOAK、そしてZDAと、当店でのスニーカー三本柱が確立して久しくなりました。

それぞれ得意分野がまったく異なりますが、ことZDAに関しては他2ブランドにくらべトリッキーな魅力が光ります。

実際店頭でもZDAをご購入される方の多くがその絶妙なマイナーっぷり、とらえどころのない佇まいを高く評価される傾向にあり、そうした背景もあってこの春はソチラ方面に全振りしたバイイングを行っています。

2型どちらも新型ではなく既存品番の新色ですが、マンネリ感など感じさせない仕上がりです。

まずは昨年春に登場、店頭のみならずツイッターでも多くの反響を頂戴した2300FSL。

前回に続き、もはや悪ふざけの域とも受け取れる配色。

この狂気のカラーリングに加え、サイドの貫通していない(つまり通気孔としての役目をはたしていない)鳩目などの謎仕様、

そして意外なほどソフトな履き心地から成るバランスが、圧倒的なオリジナリティを放射します。

お次はZDAといえばの代表品番2400FSL。
といっても久しぶりの入荷ですね。

黄色いです。とても。

それでも素材の品質の高さもあって安っぽくなっていないのが大したものではありませんか。

この軽快な色を邪魔せず引き立てるのが、蜂蜜色のマラソンソール。

ゴツゴツしたラギッドさが特徴のソールも、色が明るくなるとだいぶ印象が変わります。

ともに靴としての本質的なクオリティは高く、ただの(文字通り)イロモノでは終わりません。

世の中が暗さと苛立ちを増す一方のご時世だからこそ、せめて春らしい靴で日々の気持ちを上げていきたいもの。
それも装いの大切な役割です。

そうした真っ当な愉楽は、いつでも忘れずにいたいですね。

オンラインストアはこちらです→ 2300FSL/ 2400FSL

追補
なんとこの靴を生産しているスロバキアのパルティザンスケに旅行に行ったことのあるお客様がいらっしゃいました。
その貴重なレポートがこちら。

<opuesto / Tate’s Official Blog>
Partizánske 〜Go NOVESTA

1/3 https://opuesto.hatenablog.com/entry/2019/04/23/182454
2/3 https://opuesto.hatenablog.com/entry/2019/04/24/142418
3/3 https://opuesto.hatenablog.com/entry/2019/04/26/123015

ZDAでなくNOVESTAの靴がきっかけだったようですが、さすがに現地を直に体験された方の文章は臨場感が違います。