終りのない傾き ~ tilt The authentics/ チルトガジェットプルオーバーシャツ

tilt The authenticsの服は「オーセンティックなものを傾ける」というブランド名の通り、デザインの匙加減が実に絶妙です。

況や、ディテールを表すとともにブランド名を冠したこのシャツに於いてをや。

ごくシンプルな比翼フロントのプルオーバーバンドカラーシャツ、しかし細部を見やればそこには丹念な仕事が施されています。

上品なムラ感とほどよく肩の力の抜けた風合いを備えた生地は、コットンリネンの強撚スラブ糸を織り上げたもの。
目に涼しく着て涼しく、来たる太陽の季節を予感させてくれますね。

袖はカフを省略した軽快な仕様です。

背面ヨークのプリーツは左右二本ずつ設けられ、運動性の確保と同時にドレッシーな印象を生み出しました。

裾は前面カーブ背面ストレート、コントラストがまた美しい。
長めに取られた背面へ流れるように斜めにあてられ、一種のガジェット的なニュアンスを内包した(tilt gadget)三角ガセットにも唸らされます。

意外とジャケット(KESTINのSTAC BLAZERなど)との相性も好く、装い次第では今の時期から、そして盛夏まで活躍してくれそうです。

今季のtiltの勢いは目を見張るものがあり、先日ご紹介したカバーオールは瞬く間に完売、そしてこのシャツもすでに残り僅かな状況となりました。

気になる方はどうぞお早めに!

オンラインストアはこちら→ ホワイト/ オレンジブラウン


今年ももちろん!ORDER BORDER!

ついに三月に突入。

三月といえば、そう、お馴染みG.F.G.S.さんのORDER BORDERです。

ORDER BORDERはその名の通りボーダーシャツのオーダー。
お客様ひとりひとりお好みの柄配置、配色、袖丈、サイズを選択していただき、それにあわせて生地を編むところから製作するというパターンオーダーシステムで、当店では春の風物詩として、毎年多くのお客様方にたいへんご好評いただいています。

今年は春の新色のみならず、新型NAVAL(肩の部分が白く抜かれた柄)や暑い時期にも着られるモデル、子供用の新サイズ140cmなども登場し、毎度のことながら新規の方もリピーターの方も存分にお楽しみいただける陣容となっています。

また、今回のイベントでは、新たに素敵な仲間が加わりました。

デザイン文具や製本の業界では知らぬものなし、美篶堂(みすずどう)。

1983年に製本職人上島松男氏により創業、長野県伊那市の自社工場にて(余談ですが、「美篶」は上島氏が少年期を過ごした伊那の一地名です。佳い名前ですね)特装本など高度な技術を要するものを手仕事にて作り続ける職人集団です。

その洗練された美的感覚、卓越した技術を活かした美しいノートやブロックメモ等オリジナル商品の評価もきわめて高く、今回はこちらをORDER BORDERイベント期間中ずらりと取り揃えることとなりました。

たとえば定番”みすずノート”をベースに、最初と最後のページに谷川俊太郎の詩の一篇を活版印刷した”コトノハノート”。

計算された色の重ねにより、ぞっとするほど美麗なグラデーションで今回のイベントにぴったりなマルチボーダーを描くブロックメモ。

これ、手作業で一枚一枚重ねて作られてるんですよ…

上記二種は事前のご紹介として現在店頭にご用意していますので、是非ご来店の際はご覧ください。
イベントではもっともっと多くの種類をご用意しております。

なお、美篶堂さんは、以前より当店斜向かいのコミュニティカフェ”いのちの木”さんで本づくり教室を開催されていました。

そのご縁で、当店のみならず今回仲町台で同期間に開催されるミモザフェストにもご参加され、若き工場長小泉翔さんが下記のスケジュールにてイベントを行いますので、ご興味あればあわせてこちらもどうぞ!

3/16 13:00-14:00 仲町台地区センターロビーにて
「本って、どうやってつくるの?」
誰でもできる本づくりを職人が実演します。

3/16 13:30-17:30 いのちの木さんにて
・本づくり体験(ブロックメモを使ったノートづくり/参加費1000円)
・工場長個人のオリジナルブランドKOIZUMIKE商品販売、展示
・美篶堂伊那製本所材料販売会


ザ・プレジデンツ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ ~ EEL Products/ ワシントンB.D.

ちょっと気の早いことを申し上げますと、あとひと月もすれば桜も咲くころ。

桜といえば、米国初代大統領ジョージ・ワシントンの逸話をご存知でしょうか。

父親の大切にしていた桜の木を自分の手斧で切ってしまったワシントン少年、それを正直に申告したことで「その行為は銀を咲かせ金を実らせる千本の桜より値打ちがある」と褒められました、めでたしめでたし…

フム、正直であることは実に素晴らしいことです。

でもこれ、後世の創作だとか。

正直さを礼賛する寓話自体が嘘だったということで、なんとも狐につままれたような気持ちになります。

ところで、かつてEEL Productsのラインナップにはかの偉大なる第16代大統領の名を冠したボタンダウンシャツ、”リンカーン”が存在していました。

ラグジュアリーストリートファッションが隆盛を誇るこの時代へのアンチテーゼのように、その後継モデルがこの春登場しています。

その名も”ワシントンB.D.”。

エイブラハム・リンカーンの後継であれば当然アンドリュー・ジョンソンの流れになると思いきや、急に初代まで遡りました。裏付けはとっていませんが、タイミングから見て、春→桜→ワシントンかと推測されます。

そういえば、同じ韻を踏んだワシントンD.C.は桜祭り(National Cherry Blossom Festival)も有名ですね。

さてそんなワシントンB.D.、コンパクトなフィッティングだったリンカーンに較べ若干ゆとりが生まれ、よりオーソドックスなアメリカンスタイルへ回帰しました。

台襟も低すぎず、襟は綺麗なロールを描き、

スポーティーなホームベース型胸ポケットが、何となくアイビーリーグ生協を彷彿させます。

生地には光沢のある上質なオックスフォードを、ボタンは品の佳い艶と自然な透明感が持ち味の貝製を採用することで、ただの安易なアメリカントラッドのコピーに収まらず、きちんと次のステージへと進んでいます。

デザイン自体はお馴染みのものですから、どう着た方がいいといった提案は余計なお世話でしょう。

清潔なサックスブルーに優しいピンク、どちらもきっと春の装いの友となってくれるはずです。

オンラインストアはこちらです→ サックス/ ピンク


苔のむすまで ~ tilt The authentics/ ハイカウントラバークロスカバーオール

気がつけば二月もそろそろ終わりつつあり、陽の光も強さを増して春の訪れを教えてくれています。

促されるかのように週末は春物をお求めのお客様が多数来店されまして、いやはや有難い限り。

そんななか一際目立った反応をいただいたのが、このカバーオールジャケットです。

昨年の夏の終わりに鮮烈なデビューを果たし、今回が初の春夏シーズンとなるtilt The authentics(チルト・ザ・オーセンティックス)。
ますます実力に磨きがかかり、この春もわれわれを楽しませてくれます。

さてカーバーオールといえばワークウェアの筆頭株であり、どうしても土臭さといいますか、肉体的なぬくもりを感じさせがちで、それが大きな魅力ではあるものの、ときに扱いづらさの一因となることも。

しかしこのジャケットに関しては、清涼な凛とした印象を崩さず、それでいてカバーオールならではの佳さはしっかりと残されています。

大きな要因としては、まずこの透徹な苔色の生地。

綿、ナイロン、ポリエステルを混紡し、高密度に織ることで、マッキントッシュのゴム引き生地を思わせるハリ、コシを生み出しました。

軽く製品洗いが施されていますので、余計な硬さは取り除かれ、最初からほどよくこなれた風合いとなっています。

洗濯強度が高く(ネット使用推奨ではありますが)、また乾くのも早いため、扱いが楽なのがうれしいですね。

一見シンプルなデザインながら、構造も練られています。

袖付けはスプリットラグラン。

肩に沿った縫い目から前側がセットインスリーブ、

背面側がラグランスリーブという合わせ技に、ニヤリとさせられます。

ぐぐっと前振りにとられた袖自体も立体的なつくりで、とても動きやすく、また単体で吊るした時よりも着用時に綺麗に見えるよう設計されています。

胸ポケットは内ポケットとしてのみ設けられています。

裾のベントはアメリカントラッドのブレザーなどによく用いられる(VAN世代の紳士諸氏に於かれましてはよくご存知かと思われます)フックベント。
カバーオールではあまり見ない仕様です。

両脇のポケットにはダーツが設けられ、奥行きをもたせました。

ボタンは水牛の角の削り出しを用いており、カバーオールの持つ粗野な印象をより削ぎ落としています。

これらすべての要素が融けるように合わさり、素晴らしい一枚へと昇華致しました。

春に限らず長い時期、さまざまな装いに対応すること間違いありません。
耐久性にも秀でていますので、どんどん着込んでどんどん洗って体に馴染ませてあげてください。

若き新星が腕を揮って生まれた見事な一枚、是非今のうちにお手元へ。

オンラインストアはこちらです


墨染に咲かぬ桜もこの春は 心あればや露けかるらむ ~ EEL Products/ サクラコート dorosome & sumisome

深草の野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染に咲け

古今和歌集に収められているこの歌は、平安時代の歌人である上野岑雄(かむつけのみねを)が友人であった関白・藤原基経の死を悼み詠んだと云われています。

伝説では、歌に呼応して深草山(現在の京都市伏見区)の桜が喪に服すように薄墨色の花を咲かせたとか。

勝手な想像ですが、今回ご紹介する二品、とくに後者は、この物語に触発されて生まれたのではないでしょうか。

EEL Productsの名品サクラコートをベースに、いつもの馬布をどっしりした肉厚なヘリンボーン生地に置き換え、仕立てたのち製品ごと泥染めを施した”dorosome”、

そして、同素材で仕立て、やはり同じく製品を墨で染めあげた”sumisome”。

ともに枯れたような味わいで、もののあはれが具現化されたようです。

生地は染めの加工によってぐっと目が詰まり、着倒した古着のような侘びしさも漂わせています。

目に眩しい明るさだけが春ではありません。
かの清少納言も夜が明けて白んだ空を横切る紫色の雲のさまを賛美したように、静かで、けれど仄暖かな趣もまた佳し、それを教えてくれるコートです。

オンラインストアはこちらです→ dorosome/ sumisome


Ich komme schon durch manches Land, avec que la marmotte ~ Aiguille

昨年登場しご好評いただいた英国製バッグブランドAiguille。

約一年ぶりのご紹介ということで、まずはこの読みづらすぎる名前の発音からおさらいを。
https://www.youtube.com/watch?v=68seWyeV2Cs&vl=ja

1987年にAdrian Moore氏によって設立、当初は自宅の屋根裏部屋で製造していましたが、

幾度かの移転を経て、現在の店舗を併設した工房に落ち着きました。

(画像はAiguille公式サイトより)

この店舗兼工房を構えるStaveley Mill Yardは湖水地方中心近くに位置する複合商業施設で、さまざまな地元産業、商店などが一緒に営業しているようです。

こちらの紹介動画の0:35あたりからAiguilleも登場していますよ。

さて、そんな小規模なメーカーであるこちらの魅力は、シンプルさ、頑強さ、そして最先端のテクノロジーを駆使する他の大手ブランドがとうに失ってしまった、素朴な雰囲気です。

今回は昨年特にご好評いただいた二型が入ってきておりまして、どちらもAiguilleらしさを存分にお楽しみいただけます。

まずは小ぶりのデイパック”MARMOT”。

継続色ブラック、グレー、パープルに加え、ネイビー、オリーブ、ウッドランドカモが新たに加わり、一層賑やかになりました。

見たままの簡素な構造で、それほど厚みのないナイロン生地を用いていることもあり、とても軽量です。

これもまた簡素ながら、きちんとウェストハーネスが付属しているのは、登山家が立ち上げたアウトドアギアブランドならでは。

ときおり生地に製造時につけた目印や謎の跡が残ったままなのは、ご愛嬌ということで。

英国製とは思えないほど背面が短いため、小柄な男性や女性にもお薦めです。

もう一型はウェストバッグ”CONTOUR”。

こちらはコンパクトなサイズにして複数のポケットにキーフックを内蔵、機能性を重視したデザインとなっています。

両モデルとも、プラスティックのバックルには強度に定評のある米国ナショナル・モールディング社製品を採用。

実はAiguille、こうしたパーツの品質に一切の妥協がありません。
業界をリードするような最新技術や目を見張るハイテク設備はなくとも、本質的な部分でとても生真面目で、だからこそいつまでも価値を持ち続ける、そんなブランドです。

オンラインストアはこちらです→
MARMOT ブラック/ グレー/ パープル/ ネイビー/ オリーブ/ ウッドランドカモ
CONTOUR ブラック/ グレー/ パープル/ ネイビー/ オリーブ/ ウッドランドカモ


白い巨塔 ~ blanc/ west-point(wide)

2015年春の登場から5年目を迎え、人気が衰えるどころかどんどん高まる評価、そしてリピーター様の続出によって、毎度入荷のたびに完売してしまうblancのワイドパンツ。

予定より若干遅れましたが、今季も無事やって参りました。

光沢のあるウェストポイントで仕立てられ、細部まで考え抜かれた逸品です。

この世紀の名品に、新たな仲間が加わりました。

以前登場した限定モデルのデニム同様、「それって商品名と違うのでは…」と疑念を抱きつつもその確かな魅力に唸らされてしまう、エクリュカラーのチノクロスを採用しています。

経糸に14番手単糸、緯糸に16番手単糸を用いて左綾で織りあげ、奥行きのある綾目とこまかなネップが豊かな表情を見せてくれます。

しっかりと厚みがありながら自然な弾力性を備え、穿き心地に優れているのも特長です。

外からは見えない部分まで丁寧にデザインされており、

ロールアップしたときに外からロックステッチが見えない袋縫いのサイドシームは、このパンツの最大の特徴と断じても過言ではありません。

全色とも入荷前から予約が入っていますゆえ、今回もまたじきにみな巣立って行ってしまうのではと思われます。

気温にあまり左右されず楽しめるパンツですので、是非今のうちに。

オンラインストアはこちらです→ エクリュ/ ベージュ/ ネイビー


虹の彼方に ~ Handwerker ASEEDONCLOUD/ HW over coat

今季はスプリングコートが豊作で、素敵な商品が続々と届いています。

昨年ご好評いただいたHandwerkerのコートも、春らしく軽やかな装いで再登場となりました。

以前ご紹介したHW editor’s jacketと同じ生地で仕立てられており、一見無地のライトグレー、ネイビーに見えますが、よく見ると細かい千鳥格子。

最高級のアメリカ綿であるスーピマコットンを用いて高密度に織り上げ、シリコン撥水コーティングを施した、軽快な生地です。

作業の際にジャケットの上から羽織れるよう設計されているなど、あくまでもワークコートを基調としたデザインは、見た目の印象だけでなく実際に機能的。

襟裏にはハンガーループが設けられ、脱いだ後は見出し画像の如く吊り下げることができます。

HW editor’s jacketとは対照的に、裏地、内ポケットを省いたシンプルな構造で、ラグランスリーブの袖付け部分には綺麗にパイピング処理が施されています。

そして両サイドに設けられた容量たっぷりの大型ポケットが内ポケットの不在を感じさせません。
且つその右側に於いてはポケットの中にさらに小さなポケットが仕込まれ、内容物を仕分けできるようになっているのも小憎いですね。

裾のスリットは、コートを羽織ったままここから中に穿いたパンツのポケットに手が入れられるよう、動線を計算して設計されています。

3月頃からは下にジャケットや中綿ものなどを入れて、そして暖かくなれば薄手のものの上にヒョイっと纏うだけ、と、春を通して楽しめる一枚です。

店頭でもご覧になる方が多く、実際にすでに動き始めてきています。

グレーは女性や小柄な男性向けのSサイズもご用意しましたので、気になる方は是非店頭にてお試しください。

オンラインストアはこちらです→ グレー/ ネイビー


飢狼伝説 ~ EEL Products/ 画廊シャツ

いつぞやのブログでも触れていますが、店主は高校生の時分に美大を志望していた時期がありまして、しかし実力も根気もまったく足りていなかったため早々に挫折、結局は普通の四大に進学致しました。

そんな次第で美大生あるいは美大卒、もっと言えば芸術家全般に対してコンプレックスに近しい屈折した羨望と尊敬の念を抱き続けております。

この感情を搔き乱すかの如くEEL Productsから届いたのが”画廊シャツ”です。

テレピン油の匂いに満ちたアトリエに籠る気難しい絵描き、あるいは彼を理解する画廊のオーナー?
このシャツから湧きだす聯想空想妄想は止まりません。

素材は細かい千鳥格子柄のコットン生地。

やや厚みがあってコシが強く、そしてなめらかな質感に驚かされます。

ロングシャツは腰から下の運動性をどう確保するかがひとつの問題ですが、このシャツは両脇に深いスリットを入れることでそれを解決しました。

こうして眺めてみると、その名が示すアートに限らず、退廃的な文士の風情もどこか感じられる気もします。

…いや、こんな陳腐なイメージの羅列など不要でしょう。

かのヨーゼフ・ボイスは言いました。
「人はだれもが芸術家である(Jeder Mensch ist ein Künstler)」と。

オンラインストアはこちらです